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『賢いゆっくり』 20KB 日常模様 群れ 野良ゆ ゲス 現代 駄作凡作を積み重ねていつの間にか20作 気ままあき 「みんなゆっくりおはよう!きょうのおしごとさんをせつめいするからゆっくりきいてねっ!」 ここは住宅地の中にあるごくごく普通の児童公園。 こう公園には20~30匹程度の野良ゆっくりの群れがあった。 今その公園の片隅で群れの長と思われる若いまりさと、 長を取り囲むようにして話を聞いている群れの野良ゆたちがいる。 毎日毎朝行われている群れの朝礼である。 この群れは様々な理由で公園に流れ着いてきたゆっくり達で構成されている。 先祖代々の野良だったり、元飼いゆっくりだったり、郊外から来た野性ゆっくりだったりと色々だ。 そんな多種多様なゆっくり達で構成されているこの群れだが、全ゆんに共通していることが一つある。 それは人間に迷惑をかけようというゆっくりはただの一匹もいないということだ。 まず賢明といっていい群れであり人間の強さ、賢さ、団結力……その恐ろしさをみんなよく理解していた。 よってこの群れにはゲスなど一切いない。 人間に対してゲス行為をしようというゆっくりは群れの掟により即制裁である。 この群れの野良ゆっくり達は半年ほど前にさまざまな苦労の末、近所に住む人間たちと「協定」を結ぶ事に成功した。 その協定の内容に従って人間たちに課せられた「お仕事」を毎日する事で群れはこの公園に住む事が許されているのだ。 お仕事は公園のゴミ拾い、花壇の水撒き、空き缶集めや雑草取りなど様々である。 「ちぇんたちはごみひろいさんをしてね!はんいはぶらんこさんやすべりだいさんのまわりだよ!」 「ゆっくりりかいしたよー!」 「ありすたちはかだんさんにおみずをあげてね!ただしいちどにあげすぎないように、なんかいかにわけてあげてね!」 「とかいはにおはなさんにおみずさんをあげるわ!」 「のこりのみんなは、しばふのざっそうとりさんだよ!こんしゅうちゅうにはぜんぶおわらせようね!」 「「「「「ゆっくりりかいしたよっ!」」」」」 長であるまだ若いまりさが群れのゆっくりに号令をかける。 指示を受け取った群れのゆっくり達はそれぞれの持ち場へと散っていった。 と、そこへ年老いたぱちゅりーが長まりさの元へやってきた。 「むきゅきゅ。がんばっているようねまりさ」 「あ、おさ!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね……それともうぱちゅはおさじゃないわ。おさのざはまりさにゆずったはずよ?」 「わかってるよ!でもまりさにとってぱちゅりーはいまだにそんけいするむれのおさだよ!」 「むきゅっありがとうまりさ」 実はこのぱちぇりー、この群れの先代の長である。 人間との協定をなんとか結び、群れの運営が軌道に乗りかけてきた三ヶ月前に長を辞任したのだ。 老齢で身体がきかなくなってきた。こんな老いぼれが群れのみんなを率いる事などできないというのが理由だ。 そして後釜の次期長として新進気鋭の若いまりさを抜擢した。 まりさはまだ若いが分別があり真面目で行動力に優れ、若いゆっくりの中心的存在で人気があるのが理由だ。 まりさは最初は断わっていたが群れのみんなにお願いされ、やがて推戴されて長に就任した。 就任したての当時はあぶなっかしい場面も度々あったが今では長としてよく群れをまとめている。 ぱちぇりーは密かに自分の目は確かだったとまりさの頑張りを嬉しく思っていた。 「さて……おさ?きょうぱちぇりーはどんなおしごとをすればいいのかしら?ゆっくりしじさんをちょうだい」 「ゆっ!お……ぱちぇりーはむれのおちびちゃんたちのきょうっいくっをたのむよ!いろいろなきまりをおしえて りっぱなむれのいちいんにそだててね!」 「ゆっくりりかいしたわおさ。それじゃさっそくおちびちゃんたちをむかえるじゅんびをしないと。またあとでねおさ」 「ゆっくりがんばってね!お…ぱちぇりー!」 先代ぱちぇりーも自分が担当する群れの学校へと向かった。 長まりさもおちびちゃん時代はぱちぇりーの学校に通っていろいろな事を教わったものだ。 教師としても長としても。まりさにとって先代ぱちぇりーは恩師ともいえるべき存在であった。 こうして公園の群れの一日が始まる。 成体の野良ゆっくり達はそれぞれ割り当てられた仕事をし、 おうちの留守を預かるゆっくりは家の掃除をしたりおちびちゃんの世話をしたり。 ある程度の大きさに育ったおちびちゃんは先代ぱちぇりーの学校で生きていく為の様々なことを学ぶ。 そうだここでは誰も彼もがのんべんだらりとだらだらゆっくりしようとはせず、なにかしら働いている。 山中で見かける野性ゆっくりの群れのような一つの社会形式をこの群れは形成しているのだ。 「おーす。頑張ってるか長ー」 「ゆっ!にんげんのおにーさん!ゆっくりしていってね!」 そして仕事もだいぶ進んだ午後1時頃。 半袖のシャツを来た若い男が棒アイスを舐めながら雑草とりをしている長まりさの所へ来た。 この男は公園の近所のアパートで一人暮らしをしている大学生である。 この群れとの協定の内容に従い近所の持ち回りで順番に、こうして群れの様子を見にくるのだ。 「おー。だいぶ芝生がきれいになってきたじゃないか?ちゃんと仕事してるようで安心したよ」 「ゆんっ!まりさたちはにんげんさんとのきょうていをきちんとまもってるよ!」 「ああたいしたもんだ。実際お前らほど聞き分けのいい賢いゆっくりを俺は他に知らんよ」 「ゆっ…」 「あーあ、お前らみたいにすべてのゆっくりが賢くなればいいのになー」 愚痴りながらアイスを食べている男を見て長まりさはわずかに顔をしかめた。 この男も過去におうち宣言だの物乞いだのと野良ゆっくりの被害にあっているのだろう。 野良ゆっくりそのものにはいい感情はもってないがこの群れのゆっくり達だけは一応認めているようだ。 そして男はまりさのそんな小さな変化には気付ず、手にもった袋を長まりさに見せて言った。 「あ、そうそう……これ近所のみんなから。いつも頑張ってるお前らにご褒美だとさ」 「……ゆっ?ゆわ~~っ!こ、これはもしかしてゆっくりふーどさん!?」 「全部やるよ。たまには群れのみんなに腹いっぱい食べさせてやれ」 「ありがとうにんげんさん!これでみんなゆっくりできるよっ!」 「まあいいってことよ」 厚くお礼を言うと長まりさは男から「ゆっくりフード・それなりー味」を受け取った。 協定を遵守して人間と良好な関係を維持していれば、たまにはこんなご褒美もある。 生きるためにゆっくりできないお仕事をし続ける日々もこれで少しは報われようというものだ。 長まりさがそんな事を考えていると、すこし離れた場所からゆっくりの怒鳴り声が聞こえてきた。 「おいっ!きこえているのぜこのくそどれい!?まりさはそのあまあまをよこしてねっていってるんだぜっ!」 「ぷぷぷっ!かわいそうにくそにんげんはことばがわからないほどていっのうっなんだね!ばかなの?しぬの?」 「くちょにんぎぇんはさいっきょうっのまりちゃちゅまにあみゃみゃをよこちぇー!」 「れいみゅ、きゃわいくっちぇぎょめんにぇえ~~♪」 声のする方向へ男と長まりさが顔を向けると…… いかにもゲスな野良ゆっくりの一家がベンチに座っておにぎりを食べている男にそれをよこせと恐喝をしていた。 ベンチの男は黙って食事しているが内心は相当キてるのだろう、青筋がピキィ!と浮き出していた。 その様子を見ていた大学生の男は呆れ顔。一方の長まりさは顔面蒼白になっていた。 「……なあ長。アレもお前の群れのゆっくりなのか?」 「し、しらないよ!あんなおやこ、まりさのむれにはあんなのいないよっ!し、しんじてね!? しんじてねにんげんさんっっ!!」 「ああわかってるよ。一応聞いてみただけだ……あの野良親子はあまりにも汚すぎるからな。 お前の群れにあそこまで汚い野良ゆはいない。大方そこへんの路地裏から抜け出してきた 群れに属していない野良親子だろうよ」 男の理解あるセリフに思わず安堵の溜息をつく長まりさ。 確かにあのゲス風の野良親子は公園の群れの一員ではない。 だが人間にとってはそんな区別などつくはずがないではないか。 関係のない野良ゆの行動でとばっちりを受けて群れが一勢駆除なんてことになったらたまったものではない。 だがゲス野良親子はそんな長まりさの思惑など知ったことじゃないとばかりに ベンチの男に対するゲス行為はますますエスカレートしていく…… 「いいかげんにあまあまをよこすんだぜ!おんこうなまりさでもがまんのげんっかいっなのぜ!」 「いいからもうせいっさいっしてね!れいむのまりさならこんなよわよわなくそにんげんなんていちげきだよ!」 「やっちゃうのじぇ!おとうしゃんならしゅんっさつっなのぜ!」 「くしょにんげんをきょろちたらあみゃあみゃをれいみゅにちょうらいにぇえ!ぜんびゅでいいよ!」 「この野郎……」 いよいよ剣呑な雰囲気になってきた。 ゲス野良親子の手前勝手な言い草に、男がいい加減イラだってきたのだ。 やがてフラリとベンチから立ち上がり…… 「まりさのさいっきょうのたっくるをくらって、ゆっくりしねぇぇぇぇっ!!」 「やかましい。てめーらが死ね」 「ぎゃんばれおちょうしゃ……ゆびゅっ!?」 「…………ゆっ?」 男は一歩踏み出し子まりちゃを一撃の下に踏み殺した。 親まりさに親れいむ、子れいみゅは何が起きたかすぐに理解できず固まっている。 きっかり30秒後……状況を把握した親れいむがとりあえず叫ぼうとしたが。 「ゆ、ゆんやああああっ!?どぼじでれいむのおちびじゃ…ぐべえっ!」 「うっせ。死ね糞どもが」 「ど、どぼじでごんなひどいごとずるのぉぉぉぉぉっ!?ばりざたちだっていぎているんだよぉぉぉおっ!?」 「やかましい!」 「ゆぎゃっ!?」 「ゆぇぇぇぇんっ!おちょうしゃぁぁぁぁんっ!おかあしゃぁぁぁぁんっ!!」 この後は男による一方的な暴力の嵐がやむ事なく延々と吹き荒れた。 まりさとれいむは蹴られ殴られ、顔中ボコボコにされながら命乞いをするが男は当然のごとく頑として聞き入れない。 そりゃそうだろう。殺意をもって相手を殺しにきた殺人未遂犯が返り討ちにあったとたん、 命は大切だとか詭弁を吐いて報復を逃れようとしているのだ。 こんなふざけた連中をどうしてを許せよう。 「ゆびぃ!も、もっと……ゆっくじ……」 「ば、ばりざぁぁぁっ!よ、よぐもれいぶのばりざをごろじだなぁぁぁっ!ゆるざないっ!ぜっだいにおばえを ゆるずもんがぁぁぁ!……ゆげごっ!?」 「お前らの許しなんぞ誰がいるかカス。さて後は……」 「ゆぴぃぃぃっ!ころちゃにゃいでにぇ!きゃわいいれいみゅをころちゃにゃいでにぇええええ!?」 「そうだなあ……まあ許してやってもいいが…」 「ほ、ほんちょ?……ゆふんっ!にゃらくしょにんげんはおわびとしてあみゃあみゃをもっちぇきちぇね! あとびゆっくちもよういちてれいみゅをゆっくちしゃしぇてにぇえ!しょしたらくしょにんげんはちんでにぇ!」 「やっぱ許すのやーめた」 「ゆびぇっ!?」 許してもらえると思ったとたん態度を豹変させたれいみゅを男はこともなげに踏み殺す。 そしてそのまま公園を出て行ってしまった。 その様子を見ていた大学生の男と長まりさはそれぞれ深い溜息をつく。 「まったくあの野郎……ゲスを潰すのはかまわないが最低限、自分で後始末はやれってんだ。 長……悪いんだけどあのゲス野良どもの死体の後始末を頼む。俺がやってもいいんだがその……協定だしな」 「ゆっくりりかいしているよにんげんさん……こうえんないのごみさんはできるかぎりむれでかたずける ……それがきょうていだからね」 「俺も午後の授業があるんでそろそろ行くわ。それじゃな長……がんばれよ」 「にんげんさんもゆっくりおべんきょうさんをがんばってね!」 男は長まりさにひらひら手を振りながら帰っていった。 長まりさはゴミ袋をひとつ持ってくると浮かない顔で潰されたゲス親子の屍の所へと向かった。 さてどう袋に詰めようか……とまりさが思っていると。 群れのゆっくり達が何匹かまりさに近付いてきた。 皆あの騒ぎを公園のあちこちで恐る恐る見ていたのだ。 長まりさの元へ来たのはまりさが信頼を寄せている群れの幹部ゆっくりたちである。 「またばかなゆっくりがにんげんさんにつぶされたんだねー。まったくそういうのはよそでやってほしいよー」 「ほんとね!もしありすたちまでまきぞえになってたらとおもうと餡子がぞーっとするわ! みのほどをしらないこいつらはほんとうにいなかものよ!」 「いまだににんげんさんとのちからのさがわからないなんて、みょんはしんじられないんだみょん!」 「おさ!ゆっくりできないししゅうさんがこうえんじゅうにひろまるまえになんとかしようね!」 「ゆっそうだね!れいむのいうとおりだよ!」 「むれのおちびちゃんに、こんないなかもののにおいはかがせられないわ!」 「ちょくせつさわるとししゅうさんがうつってゆっくりできないみょん!」 「じゃあこのこのえださんでつついてふくろさんにいれればいいんだねー!みんなめんどうだけどがんばろうねー!」 「「「「「ゆっゆっおー!」」」」」 こうして長まりさと四匹の幹部ゆっくりは口に加えた木の枝で潰されたゲス親子の屍を移動させ、 ゴミ袋の中へと全部押し込んだのだった。 ゆっくりが嫌がるゆっくりの死臭に晒されながらの重労働だ。 みな餡子を吐きたい気持ちを抑えて黙々と行う、まさに必死の作業であったろう。 みんなで力を合わせたおかげか30分後まりさ達はゲス親子の死体の片付けをどうにかやり遂げたのであった。 そして夕方…… 仕事を終えた野良ゆっくり達はダンボールのおうちが立ち並ぶ群れの本拠地へと帰ってきた。 長まりさは疲れた身体をひきずって一刻もはやく帰宅しようとする群れのゆっくり達を集め、 今日公園に訪れた大学生の男の話をした。 「きょうみまわりにきたにんげんさんがむれのみんなをほめていたよ! そしてごほうびにゆっくりふーどさんをこんなにくれたよ! みんなにこうへいにわけるから、こんやはおちびちゃんたちにおなかいっぱいたべさせてあげてね!」 「ゆわーい!ゆっくりできるよ!」 「ありがとう!おさはとってもとかいはね!」 「まりさはむれのほこりだみょん!」 「ちがうよっ!むれのみおんなでがんばったから、にんげんさんがごほうびをくれたんだよ!」 「まりちゃ、おおきくなっちゃらおしゃみたいなゆっくちになるんだじぇ!」 「おしゃはとてもゆっくちちてるにぇえ!れいみゅがおよめしゃんになっちぇあげちぇもいいよ!」 「ゆふふ!もうおちびちゃんたちったらおませさんね!」 思わぬサプライズに群れのあちこちから喜びの声が沸きあがった。 みんな珍しく美味しいごはんをお腹いっぱい食べられることにもうご機嫌だ。 長として群れのみんなが幸せーになってくれることほど嬉しいものはないだろう。 幹部ゆっくり達によってゆっくりフードは公平に同じ量づつ群れのみんなに渡されていく。 その光景を飽きることなく見続ける長まりさに寄り添うように。ゆっくりと近付くれいむがいた。 「ゆん……まりさ、きょうもおつかれさまだよ」 「れいむみてよ……みんなすごくゆっくりしているよ」 「ほんとだね!みんながゆっくりしててれいむもうれしいよ!」 このれいむは長まりさの番である。 まりさが長の仕事という激務を日々必死になってこなしている為に子作りする暇が作れず、 夫婦でありながらいまだにおちびちゃんはいないが…… このれいむは不平ひとつ言わずに誰よりもまりさを理解し支えている。 長まりさのよき理解者なのだ。 「……」 「うかないかおをしてるね……?まりさがなにをかんがえているのか、なんとなくれいむにはわかるよ。 ひるまにんげんさんにつぶされたあのおやこのことをかんがえているんでしょ?」 「あれは……あいつらがばかなだけだよ。まりさはきになんかしてないよ」 「ほんとうにそうおもってるの?」 「おもってるよ。ゆっくりのくせににんげんさんにけんかをうるなんて、ただのおおばかものだよ」 「そう……そうだね。れいむもそうおもうよ」 「……」 「……」 そしてその日の夜……午後11時。群れの全ゆんが寝静まる頃…… 長まりさとれいむが住むダンボールハウスではちょっとした異変が起きていた。 「ゆっ……ゆぐぐぐぐっ……ゆっくりぃ……!ゆっくりぃぃぃ……!」 「ゆう。まりさ……またうなされているんだね……」 まりさは眠りながらうなされ苦しんでいた。だがこの事態は今回が初めてではない 長になってから……いや長になる前から時々うなされて苦しんでいた。 なぜまりさは苦しむのだろうか?その理由は……そうゆっくりしていないから……であった。 (にんげんっ!にんげんっ!にんげんっ!まりさ、ほんとうはにんげんさんなんかだいっきらいだよっ!!) 長まりさは実は人間が大嫌いだった。まあ別にゆっくりの人間嫌いは珍しくもないだろう。 ゆっくりはこの世で一番偉くて尊い種族。 世界中の生き物はゆっくりがゆっくりできるように奉仕しなければならない。 まりさ達の本能に刻まれているゆっくりの有り様とはそういうものだ。 なのにこの世界の生き物……特に人間はゆっくりをまるでゆっくりさせてくれない! 人間はゆっくりできない。 なにがどうゆっくりできないかと問われれば具体的にこうだとは答えられないが とにかく人間を見てゆっくりがゆっくりすることはできない。 ゆっくりできない種である人間は蔑み憐れみの対象であり、 使い道のないクズである人間はせめて奴隷として有効に使ってやる。それが人間にとっての幸せというものだ。 それはすべてのゆっくりが当然のごとくもっている考え方であり常識である。 (でも……でもゆっくりはにんげんさんにはかなわないよ…!ちからも……あたまのよさも……なにもかもっ!) ゆっくりにとって、ゆっくりする事のみが至上命題である。 力が強いとか頭がいいとか、そんなものはゆっくりという種にとっては何の意味ももたない。 ゆっくりだ。ゆっくりさえしていればそれでよい。ゆっくりしている者はこの世で一番偉いのだ。 なのにいつもいつも……ゆっくりがゆっくりしようとすると下種な人間が邪魔しにくる。 住みやすそうなお家に引越ししたら恐ろしい人間がやってきて家族皆殺しにされた。 お野菜が勝手に生えてくるゆっくりプレイスを先に見つけたのに、これは全部俺のものだと独り占めをする。 いつもそうだ。力でゆっくりを屈服させようとする野蛮な生き物……それが人間なのだ。 そんなに力が強いのが自慢なのだろうか?まりさにはわからない。 力が強い事がゆっくりする事になんの関係がある? (くやしいよっ!くやしいよっ!なんでゆっくりはにんげんさんのいいなりにならなければいけないのっ!?) ゆっくりできない下等種である人間に上位種であるゆっくりが媚びへつらう! これほどの屈辱が他にあるだろうか? 今日貰ったゆっくりフードだってそうだ。「しあわせー味」でも「まじぱねぇ味」でもなく「それなりー味」である。 人間は群れのゆっくりの舌が肥えすぎないように配慮してわざと味のランクが落ちるものを選んだのだ。 気を利かせたのかもしれない。だがそれはゆっくりにとって屈辱以外の何者でもなかった。 食事の味まで人間ごときにいちいち管理されているなんて! 大学生の男はアイスを食べてゆっくりしていたが、ああいう光景を見るだけで長まりさは不愉快になる。 自分達ゆっくりがこんなにゆっくりできてないのに人間がゆっくりするなんて間違ってる! (ゆう……ほんとうは……ほんとうはまりさ、あのげすおやこがうらやましかったよっ……!) 人間につっかかってあっさり潰されたあのゲス親子。 他ゆんが見たら愚かと言うかもしれない。まさに馬鹿者……大馬鹿者の犬死と言うかもしれない。 だがまりさの見方はまるで違っていた。 人間の男を見下し、あまあまを要求したあの瞬間……あの親子は誰よりもゆっくりしていた。そう見えた。 まさに至高のゆっくりと言っていいほどのゆっくりっぷりだった。 あそこまでゆっくりできれば直後に惨殺されたとしても恐らく悔いなどないのではないか?そう思うほどに…… (まりさも……できることならあのげすおやこのように、おもううままにゆっくりしたいよっ!) ゲスが羨ましい!無能が羨ましい!バカが羨ましい! 自分も頭が悪ければどれほど気を楽にしてゆっくりできたことか! だがしかしぱちゅりー門下の秀才である長まりさは賢かった。 不運な事に賢いゆっくりであった。 賢いからこそ自分がそんな無責任な行動をしたらどんな結果になるかがすぐに予測できた。 長として群れのみんなをゆっくりさせなければならない。 ゆっくりさせるには生きなければならない。 生きる為にはおうちやごはんさんが必要だ。 それらを手に入れる為に群れのゆっくりは屈辱に耐えて人間と協定を結び、 この公園というゆっくりプレイスを手に入れたのではないか! ごはんさんを手に入れる為に人間が定めたお仕事を毎日しているのではないか! そう身勝手は許されない。 長であるまりさはもう自分だけゆっくりできればそれでいいという考えが許される立場ではない。 そんなことはまりさ自身が痛いほどによく理解している。 だが屈辱は屈辱なのだ。人間にお情けをもらっているという現状は身悶えするほどゆっくりできない。 だから……長まりさは時々こうして苦しむのだ。 理想と現実、自由と責任、理性と本能、その狭間に苦しみ続ける。 ゆっくりとしてはいささか賢すぎるゆえに…… 「ゆっ……」 「まりさ?ゆっくりしていってね……?」 「ありがとぉぉ……れいむぅ……」 泣きながら汗だくでうなされていた長まりさが突然目を覚ました。 そのままよれよれとダンボールのおうちを出て行った。 れいむには分かっていた……まりさはこのどうしようもない感情を発散させる為に外へ泣きにいったのだと。 「……」 長まりさはよろよろと公園の公衆便所の裏へと来た。 群れから少し離れた場所にあるここならば少しぐらいの物音をたてたって群れのみんなに聞こえることはない。 何故わざわざこんな所に来たのかというと理由はひとつしかない。 長たる者が泣くところなんてみっともなくて群れのみんなには見せられないからだ。 だが意外なことにこの場所には先客がいた。 ありす、ちぇん、みょん、れいむ……幹部ゆっくりの面々である。先代ぱちぇりーもいた。 「ゆぐっ……ゆぐっ……とかいば……とかいばになりだいぃぃぃっ」 「わきゃらにゃいぃぃ……わきゃらないよー…わきゃらないぃぃ……」 「みょぉぉぉぉん……みょぉぉぉんっ……!」 「ゆっくじ……ゆっくじぃぃぃぃっ……」 「むきゅぅぅぅぅぅっ……むきゅきゅぅぅぅぅぅ……」 泣いていた。みんな泣いていた。 昼間のゲス親子を見てみんな長まりさと同じことを感じたのだろう。 みんな苦しんでいたのだ。群れのみんなに尊敬のまなざしで見られている幹部である彼女たちが苦しんでいる。 いや生き延びる為にみんなして先代ぱちゅりーの元で共に学んだ仲なのだ。 幹部に選ばれるほどに賢い連中である。むしろ当然と言うべきか…… 「ゆぇぇぇぇ……!ゆぇぇぇぇぇぇんっ!!」 まりさも泣いた。声を押し殺して泣いた。 本当は大声で「どぼじで!どぼじでぇぇぇっ!」と泣き喚いて地面に転がりたかった。 だがここは住宅地の中にある児童公園だ。大声で泣くとうるさいと付近の人間が怒鳴り込んでくるだろう。 下手をしたら問答無用で一勢駆除の対象にされるかもしれない。 泣くことすら人間をはばかって自分の思うようにできない。 その情けない現実を思ってまりさはさらに声を押し殺して泣きに泣いた。 「みんなゆっくりおはよう!きょうのおしごとさんをせつめいするからゆっくりきいてねっ!」 そして今日も群れの一日が始まる。 ゆっくりプレイスを維持していくため、群れのみんなをゆっくりさせるために。 今日も長まりさと幹部ゆっくり達は内心の自分を、ゆっくりしたいという願望を押し殺して人間に服従する。 それが野良ゆっくりが街で公園で「賢く」生きる道なのだ。 今まで書いたもの anko3367人間に飼われるというのは… anko3370野良ゆは人間に関わってはいけないという話 anko3379親の罪は anko3401たすけあい anko3410世紀の凶悪立てこもり事件 anko3416選んだのはお前だ anko3440ぷくー!をしてみた anko3479この世はでっかいゴミ捨て場 anko3486胴つきさんはゆっくりできない anko3501胴つきさんはゆっくりできるね! anko3503じゃまもの anko3509ゆっくりいーたー anko3522野性のゆっくりとゆっくりしてみた anko3526気持ち悪い! anko3534ゆっくりしているゆっくり anko3537野性のゆっくりとゆっくりしてみた2 anko3545霊園の野良ゆ対策 anko3570自画自賛 anko3582親と子の契約
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・れいむが死にません。 ・エロくありません。 ・最近れいむいじめがひどかったんで、れいむ愛でモード突入中。 ・仕事の都合もあって製作ペースが戻らないので、まだまだリハビリが必要な感じです。 『飼いゆっくりれいむ』 D.O 我が家は、築100年を軽く超える古風な木造家屋である。 爺さんの若かった頃は農業をしていたとのことなので、蔵もあれば庭もあり、 さらにその周囲は生垣をはさんで小さな林まで広がっている。 外から見れば、歴史の重み、どころか幽霊屋敷の雰囲気漂わせていることだろう。 現在の主である私が手入れを怠っているので、庭はコケと背の高い雑草が生い茂り、生垣も所々穴が開いているからなのだが。 私が子供の頃は、周囲にまだ多くの農家も残っていたが、 十年ほど前に、ゆっくりの大規模な襲撃が起こり、すっかり疲弊してしまったようである。 もう少し山に近い田舎に立ち上がった、のうかりんを使った実験農場計画が始まった頃に多くの農地は売却され、 実験農場が順調な現状を考えると、このあたりも数年後にはのうかりん印の農場になりそうだ。 現在では町、というには空き家が多すぎる、少々寂しい地域となってしまっている。 そんなある日、仕事から帰ってみると、 庭にサッカーボールサイズと、テニスボールサイズの饅頭が一つづつ落ちていた。 日が暮れているので良く見えないが、赤白リボンの奴はたしかれ・・・れ?ゆっくりだ。 「ゆゆっ!おにーさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇっちぇにぇっ!」 「・・・・・・。」 家の電灯に照らされてみれば、薄汚れていて何ともゆっくりしていない奴等である。 少なくとも、見ているこちらとしてはゆっくりできない。 親子なのは間違いなさそうだが、親の方は全身余すところ無く、 マジックで唐草模様が描き込まれているあたり、町からやってきたのは間違いないだろう。 「にんげんさん、れいむはしんぐるまざーなんだよ!」 「へぇ・・・。で?」 「かわいそうなれいむたちを、ゆっくりかっていってね!」 「きゃわいくってごめんにぇっ!」 「・・・はぁ。」 なんだか、やり遂げた表情でこちらを見ている。 刈って、狩って、・・・いや、飼っていってね、か? どうやら、こんなにゆっくりしたおちびちゃんなんだから、人間さんも飼ってくれるに違いない、ということらしい。 とりあえずサンダルの裏を、その自信満々の顔面に押し当てて、塀の方に転がしてやることにした。 「ゆべしっ!」 「ゆぴぃぃいい!」 「・・・ペッ!」 噛んでいたガムが母れいむのリボンにジャストミートする。 「・・・・・・飯作ろ。」 別にゆっくりとやらに大した関心はない。 単に、コソコソ隠れているなら可愛げもあるが、ずうずうしさが気に入らなかっただけである。 これまでも野良猫やらなんやら、しょっちゅう仮の宿に使われていたので、 今更ゆっくりが庭に舞い込んだところで気にしない。 糞をばら撒かれないだけ、犬猫よりはありがたいくらいだ。 庭に住みたきゃ勝手に住めばいい。 こちらには当然世話する義務なんぞ無いのだから。 「ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛・・・・」 「ゆっくりー!」 痛みから回復したれいむ親子の方は、感動に打ち震えていた。 なにせ気がついたら、母れいむのリボンにペタリとついているのは、あの憧れの飼いゆっくりバッジ。 れいむも遠くで見ていたときは気づかなかったが、バッヂがまさか人間さんが口から吐き出されたものだったとは。 まあ、自分達もナワバリ(無意味極まるが)にしーしーでマーキングすることは多いのだから、そういうものなのだろう。 ・・・などと考えながら、リボンにへばりついたガムを、嬉し涙に潤んだ目で眺めていた。 そう、れいむはついに、ゆっくりの中でも最もゆっくりできると言われる、 あの飼いゆっくりにしてもらえたのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 翌朝。 便所から出て縁側を歩いていると、庭の隅に放置していた木箱から、れいむ親子が飛び出してきた。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「ん?まだいたか。」 朝からうるさい奴らだ。やはり猫の方がましだな。 「ゆーん。おにーさん、れいむたちにあさごはんちょーだいね!」 「ちょーらいにぇっ!」 昨日のゆっくり共が、これから仕事に行くという時に、なんだかずうずうしくゆぅゆぅ鳴いている。 「・・・・・・庭の草でも花でも、自分で適当に食え。」 「ゆゆっ!?おはなしゃん、たべちぇいいにょ?やっちゃー!」 「ゆーん、ごはんさんいっぱいだよ~。」 勝手に住むのはかまわんが、ゆっくりフードたら言うものまで買ってやる気など無い。 というか、ペットでもないのにいちいち飯などやらん。 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー。」 「むーちゃ、むーちゃ。ゆ・・ゆぇーん。」 「どうしたの、おちびちゃん。」 「れいみゅ、こんにゃにむーちゃむーちゃちたの、はじめちぇ。」 れいむ達は、飼い主であるおにーさんの愛情を全身で味わっていた。 なにせ、適当に食え、と言って指差した庭には、 柔らかそうなゆっくりした草、 タンポポやシロツメクサの類の雑草寄りの花、 背の低い木には実や柔らかい葉っぱ、 それに、今は何も成っていないが柿やビワの木も生えており、季節が来たら食卓を飾ってくれることだろう。 当然昆虫やミミズも、その気になれば取り放題だ。 ここは、森の中にあったとしたら、数十匹のゆっくりを余裕をもって支えることができる最上級の狩場であった。 それらが全て、この2匹だけのためのごはんだと言うのである。 「おにぃさぁん、ありがとぉぉぉおおおぉぉ。」 そんなある日、夕食の生ゴミを袋に入れて、裏庭のポリバケツに入れようとしたところ、 ゆっくり共が、よだれを滝の様にたらしながらこちらを見ていた。 ・・・・・・そういえば、今都会では『ゆっくりコンポスト』なるものがはやっていると聞く。 正直言って生ゴミを貯めこむのは嫌だし、こいつらでも使ってみるか。 「・・・食え。」 翌朝、袋の中身がきれいさっぱりなくなっていた。 袋に何かが入っていた形跡すら無い。よだれらしきものでベタベタではあるが。 「ゆっくちちたおやさいしゃんだったにぇっ!」 「おにーさんにありがとうってするんだよ。」 「ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 「なるほど。こいつは便利だ。」 それからというもの、あの親子は毎日ポリバケツに放り込むはずだった生ゴミを、おやつだと大喜びで食べている。 生ゴミを放置しすぎて増えていたりぐるとかも減った。 生ゴミがなくなったからか、りぐるも食べているのか・・・ しばらくすると、いちいちこいつ等が『おうち』とやらにしている、庭の隅の木箱まで生ゴミを持っていくのもめんどくさくなってきた。 まずは縁側の下に少し穴を掘り、用済みとなったポリバケツを横倒しにしてはめ込む。 ポリバケツの内側に土をいくらか入れ、周囲の穴との隙間にも土を詰める。正面から見るとパッと見トンネルのような感じだ。 あとはあのゆっくり親子を中に放り込んで、自家製コンポストは完成。 「ゆわーい。きょきょはれいみゅたちのおうちなんだにぇ。」 「ゆっくりー!おにーさん、ありがとう!」 なんかぽいんぽいんと跳ねて喜んでいるが、台所からも食卓からも近いここが、 生ゴミを放り込むのに適していただけだ。 「ん、で、あと何が必要だ?」 「「ゆぅ?」」 なんといっても、使い道ができた以上、もはや野良猫と同等ではない。 金をかけてやるつもりはないが、それなりのメンテナンスはしてやろう。 コンポストとしてある程度長持ちしてくれなければ困るからだ。 「ゆ、ゆぅーん!れいむはみずあびができたらうれしいよ。きたないとゆっくりできないよ。それと・・・」 「それと?」 「おちびちゃんにも、ばっじさんがほしいよ!おちびちゃんもかいゆっくりのばっじさんがほしいよ。」 水浴びか。なるほど、こいつ等が饅頭のくせにカビないのは不思議だったが、やはり不潔にしておくのはよろしくないといったところか。 こっちとしても軒下にサッカーボール大のカビ饅頭があるのは気分が悪い。自分たちで清潔にしてもらおうか。 あとは・・・ん?おちびちゃん・・・にも? ・・・・・・妙に馴れ馴れしいのも合点がいった。まさか飼われているつもりだったとは。 まあ、使い道がある今となっては都合がよくもあったが。 「水は、そうだな。このタライに水を入れといてやる。勝手に使え。」 「ゆっくりー!」 「それと・・・バッジねぇ。ああ、あれでいいか。」 持ってきたのは、私が中学生時代に学生服につけていた、襟章だった。 鈍く銀色に光る襟章、どうせこいつ等がバッジとやらを活用する日は来ないのだから、これで十分だ。 リボンに乱暴にネジ式の襟章を突き刺して固定すると、赤色の中に鈍く光る銀色は、思いのほかしっくりときた。 「ゆわーい!ゆっくちちたばっじしゃんだー!」 「ゆぅぅ、よがっだねぇ、よがっだねぇぇえ、おぢびじゃぁぁああん。」 喜んでもらって何よりである。この調子で雑草むしりと生ゴミ処理を頑張ってもらいたいものだ。 翌日には、縁側下のコンポストの近くに「おといれ」と称してうんうん用の穴も掘っていた。 生活の場に排泄物を置いておくのはやはり嫌なのか。だが、これはこちらとしても都合がよかった。 このうんうんという排泄物については、定期的に土と雑草に混ぜて花壇の肥料にしている。 なかなか良質なようで、しかも採集の手間も要らないしありがたいものだ。 「ゆーん、おにーさん。おといれのおそうじしてくれてありがとう。」 「うんうんがなくなっちぇ、ゆっくちできりゅよ。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− こうしてれいむ親子がコンポストとなった数日後、家の庭に最近ご無沙汰だった来客が来た。 「ねこさんだぁぁあああ!ゆっくりできないぃぃぃ!!」 「ゆぴぃぃ、おきゃあしゃんこわいよぉぉ!」 「ん、ああ、トラか。久しぶり。」 生垣の穴から庭に入ってきたのは、近所で気ままな野良生活を送っている猫だ。 こいつに限らず、我が家を通り道にする猫は多い。 「ゆぁぁぁぁ、おにーさぁぁん。ねこさんこわいよぉぉぉぉ。」 「ゆっくちさせちぇぇぇぇ。」 「・・・嫌なら自分でなんとかしろ。」 「「ゆぅぅぅ、ゆっくりできないよぉ。」」 別にサッカーボールサイズの良くわからん物体にじゃれつく様な、酔狂な猫達でもないが、 町生活でトラウマでもあるのか、度重なる猫の襲撃に、れいむ親子は自分達で何とかすることにしたようだ。 数日後から、徐々にだが、目に見えて生垣の穴がふさがり始めた。 「ゆーえす!ゆーえす!」 「おきゃーしゃん、はっぱしゃんもってきちゃよ。」 「じゃあおちびちゃん、このすきまにはっぱさんをおしこんでね。」 「ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 生垣や塀の隙間に、小石を詰め、小枝を刺し、上から土を盛って、また葉っぱや枝を詰める。 近くで見るとやはり幼稚園児の工作の域を出るものではないが、遠目には生垣に溶け込んで見えなくも無い。 何重にもゴミを積み上げているので、強度のほうはちょっと蹴りを入れたくらいでは吹っ飛ばないくらいになっていた。 「これでねこさんはいってこれないね!」 「ゆっくちー。」 「にゅぁ~ん・・・ぐるるる。」 ・・・・・・。 「「どぼぢでねござんはいっでるのぉぉぉおお!?」」 「・・・塀の上からだろ。」 まあ一応は通りにくくなったので、特に頻繁にここに来る数匹以外は入ってくることも無くなり、 多少は平穏になったようだ。 それにしても、なんだか最近庭がきれいになってきた気がする。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 生垣の穴がれいむによってあらかた埋まった数日後、 久しぶりに友人が家まで遊びに来た。 「ゆゆっ!?おにーさんのおともだち?ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇっちぇにぇ。」 「おー、間知由。お前ゆっくり飼ってたんだな。エラい装飾過剰だけど。」 「いや、飼ってないし、あの唐草模様は来たときからだ。俺の趣味じゃない。」 「ふーん。つってもバッジついてんじゃん。」 「ありゃガムだ。」 「え゛・・・。」 「ああ、みかんの皮は庭のポリバケツに放り込んどいてくれ。」 「え?これってこいつらのおうちだろ?」 「いや。コンポスト。」 「んー。・・・え゛ぇ?」 「ゆわーい、おやつだにぇ!ゆっくちありがちょー。」 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー。」 ついでに、夕食の魚の骨も放り込んでおいた。 「ぽりっ、ぽりぽりぽり・・・ゆっくりー!」 「・・・・・ふーむ。」 「どうした?」 「いや。ゆっくりって、案外飼いやすい生き物なのだろうかと思ってな。」 「ただの饅頭だろ。・・・・・・何だよ、その目は。」 「まったく。世の中にはどんだけ愛情注いでも懐かれない奴もいるってのに。」 「そんなもんかね。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そして、庭が放置しっぱなしの幽霊屋敷状態から、見違えるようにきれいになった頃、 れいむ達の平穏な毎日に、突然不幸が舞い降りてきた。 「Zzzzzz・・・。」 「すーや、すーや。」 今日は日曜日。おにーさんも日当たりの良い縁側で昼寝中。 れいむ親子も庭に生えた木の木陰でゆっくりと惰眠をむさぼっていた。 そのとき庭に、普段と違う空気が漂う。 「うー。」 「ゆぅ?・・・すーや、すーや。」 「あまあまー。」 「ゆ・・・すーや、すーや。・・・・・・れみりゃだぁぁぁああああ!!!」 庭に突然飛来したのは、本来夜行性のれみりゃ(胴無し)。 庭のすぐ奥にある林は、昼でも薄暗く、たまに昼でも活動するれみりゃが現れたりする。 しかも、このあたりは農家だったこともあり、害ゆ対策として、れみりゃを大量飼育していた時期もあったので、 最近森の奥でしか見なくなったれみりゃ種もチラホラいたりするのだ。 「おちびちゃん、ゆっくりにげるよ!」 「ゆあーん。れみりゃはゆっくちしちぇにぇ。」 ぽよん、ぽよん、と大急ぎでおうちに飛び込むれいむ親子。 れみりゃは追ってこなかった。どうやら助かったようである。 しかし、一つだけ気がかりがあった。 「ゆぅぅぅ、おきゃーしゃん、れみりゃはゆっくちできにゃいよぉ。」 「ゆ!おちびちゃん。ここはおにーさんがつくってくれたおうちだから、れみりゃなんてはいってこれないよ!」 「ゆっくちー。でみょ・・・。」 「おちびちゃん?」 「おにーしゃん、すーやすーやしてたよ?れみりゃにゆっくちひどいことされてにゃい?」 「ゆゆっ!?」 「そろーり!そろーり!」 おにーさんの無事を確かめるべくおうちから慎重に這い出るれいむ。 見つかったら命はないだけに、そろーりそろーりにも力が入る。 そして、れいむは驚愕の姿を目撃した。 「うー!うー!」 「Zzzzzz・・・・、じゃま・・・」 ・・・・・・れみりゃがおにーさんにじゃれていた。 「ゆぁぁぁああああ!おにーさんがたべられるぅぅぅううう!!!」 「うー?」 「やめてねっ!おにーさんをたべないでねっ!れみりゃはゆっくりどっかいってね!!」 ゆっくりしたおにーさんを助けるべく、れいむはれみりゃに立ち向かう。 しかし、口にくわえた木の枝をどれほど振り回しても、空を舞うれみりゃ相手には届かなかった。 「ゆぅ、ゆぅぅ、どうしてとどかないのぉぉ。」 「うー!あまあまー。がぶり。」 「ゆひぃぃぃぃ、れいむのあんこさんすわないでぇぇぇぇ・・・。」 「おきゃあしゃぁぁあん、ゆっくち、れみりゃはゆっくちしちぇぇぇぇ!」 「お、肉まん。」ぱさり。 「うー!うー!」 といったところで目が覚めたおにーさん。 玉網を使ってあっさりとれみりゃを捕獲したのであった。 それにしても、生ゴミを処理して肥料を作り、 庭の管理までやってくれた挙句、夕食のおかずをおびき寄せてくれるとは、 つくづく使いでのあるコンポストだ。 つい今さっきまでたっぷり飯を食っていたこの肉まん、中身がが詰まっていてうまそうだな。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 「おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇぇぇぇ。」 ザックザックザック 薄っぺらくなった方のれいむには、中身を詰めなおしてやることにする。 掘り出したのは、「おといれ」とやらになみなみと貯められた餡子。 こいつを、中身の減ったれいむの口からねじ込んでやることにした。 「ゆ゛っ、ゆぼぉっ!おにーざん、やべでぇ、ゆっぐぢでぎなっ!ゆぼっ!」 「おにーしゃん、やめてあげちぇにぇ!おきゃーしゃんがいやがっちぇるよ。」 無視。餡子は餡子だ。多少土が混ざっているが、中に詰めなおしてやれば問題ないだろう。 「ゆ゛っ、ゆっぐぢしていってね。ゆげぇ。」 「やっちゃー!おきゃーしゃん、げんきになっちゃよ。」 「ゆ、ゆぅぅ・・・おにーさん、ありがとぉ・・・。」 「しゅーり、しゅーり、ちあわちぇー!」 ふむ、消耗してはいるが、まだ当分は使えそうだ。 そして、その夜は多すぎて食べきれなかった肉まんの残りを、コンポストに放り込んでやった。 やはり一人暮らしにあのサイズは無茶な話だな。 「ゆわーい。きょうはごちそうだにぇ!」 「ゆーん。きっといっしょにれみりゃをやっつけたから、ごほうびなんだよ。」 「ゆっくち!ゆっくち!」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そんな生活が、しばらく続いたが、 子れいむが成体にまで大きくなった頃、親れいむの方が死んだ。 あとで調べたが、町の野良の寿命は平均一年かどうかと、大分短いらしい。 我が家に来た時には中古のポンコツだったということか。 「お・・・おにーさん。おちびちゃんを、・・・これからもゆっくりさせてあげてね。」 「特になにも変らんよ。」 「おちびちゃん、・・・ゆっくりしていってね・・・・・・」 「おかーしゃん、おきゃあしゃぁぁぁあああん!!!すーりすーりしてね、ぺーろぺーろしてねぇぇえええ!!!」 リボンは子れいむの方が欲しがったのでくれてやり、死体のほうはぐちゃぐちゃにすり潰して肥料にした。 花壇の花も元気に育つことだろう。 「おかーさん。おはなさんになったんだね。」 「まあそうとも言えるな。」 「ゆっくりしていってね。おかーさん。」 まあ、そんなことはどうでも良かったのだが、少し問題が生じてきた。 コンポストの、生ごみ処理能力が落ちてしまったのだ。 「ゆぅぅ~。さびしいよぉ。」 「おちびちゃんがほしいよぉ。」 「すーりすーりしたいよぉ。」 どうも孤独な生活と発情期が重なって、ノイローゼ状態になったらしい。 頭数が減ったうえ、どうにも食欲が無い。庭の雑草もまた伸び始めてきた。 これは、新しいゆっくりを取ってくる必要がありそうだな。 その日、夕食の生ゴミをコンポストに放り込みながら、 れいむにつがいを探してやる、と言った時のれいむの喜びようは大変なものだった。 体が溶ける寸前まで水浴びをして、リボンのしわ一つ一つまで丹念にあんよでつぶして伸ばしていく。 コンポスト内の清掃も丹念に行い、 さらに子供が出来た後のために、花やイモ虫、果物の皮などのごちそうから保存食の干し草まで貯めこむ。 にんっしん中のベッドまで葉っぱと草を使って作り終えて、準備万端でその日を迎えた。 約束の日、私はれいむを連れて街を歩き、れいむ的に「すっごくゆっくりしてる」まりさを手に入れた。 この白黒饅頭、帽子にアイロンをかけた形跡もわずかにあり、恐らくバッジを引きちぎったのであろう傷痕も見られる。 飼われていたというなら、それなりの躾もされているのだろう。好都合だ。 「ゆふん!そんなにまりさをかいたかったら、かわせてやってもいいのぜ。」 「ゆっくり!まりさ、ずっとゆっくりしようね!」 「ゆん!なかなかゆっくりしたれいむだから、とくべつにすっきりしてやってもいいのぜ。」 本人も乗り気のようだから都合よい。つがいにしてやることにして、家に連れていった。 「ゆぅ~ん、まりさ。すーり、すーり。」 「ゆへぇぇ!いいからとっととまむまむをむけるのぜぇ!『ぼよぉぉおん!』」 「『ごろんっ』ゆぅ!?もっとゆっくりしてぇ!」 「しったこっちゃないのぜ!まりさのぺにぺにをおみまいしてやるのぜぇ!!」 ずぼぉっ!ずっぽずっぽずっぽずっぽ・・・ 「ゆぁーん、いだいぃぃぃい!らんぼうすぎるよぉ。もっと、ゆっぐりぃ!」 「ゆっふっ!ゆっゆっゆっゆっゆっゆっすっきりぃぃぃいいい!」 「ずっぎりぃぃ。」 とりあえずれいむの腹が膨れてきたので、予定どおりにいったようだ。 「ひどいよまりさ・・・」 「ゆふぅ。ひとしごとおわっておなかがすいたのぜ。にんげんさん、とっととごはんをもってくるんだぜ!」 「その辺のを適当に食え。」 「ゆゆ!?なにいってるのぜ。ゆっくりふーどさんなんて、どこにもないのぜ。」 「草があるだろ。」 「な・・・なにいってるのぜぇぇ!くささんはごはんじゃないのぜ! ふーどさんがないならけーきさんでもいいのぜ!はやくもってくるのぜ、くそじじぃ!」 「ゆぅ。なにいってるの?おにーさんにあやまってね。くささんはおいしいよ。むーしゃむーしゃ。」 「ゆぎぃぃぃいい!もういいのぜ!はやくおうちにいれるのぜ!べっどですーやすーやするのぜ!」 「そこに家ならあるだろ。」 「な・・・なにいってるのぜぇ!これはごみばこさんなのぜ!くさくてきたないのぜ!」 「ひ、ひどいよまりさ!おにーさんがれいむにくれた、ゆっくりできるおうちだよ! それに、れいむがいっしょうけんめいおそうじしたんだよ!ゆっくりあやまってね!」 「・・・いいよ別に。文句があるなら勝手に出ていけば。」 「ゆふん!まったく、ばかなじじぃとゆっくりしてないごみれいむのほうが、このおうちからでていくのぜ! ゆっくりしたまりささまが、とくべつにこのおうちをつかってやるのぜ!」 「ふーん・・・。れいむ、どうやら一緒に暮らすのは無理そうだが。」 「ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくりできないまりさだよぉ。」 とりあえず、私が家から追い出されるのは嫌なので、ゆっくりしたまりささまとやらは、門から丁重に出て行ってもらった。 あれだけ態度がでかいと、野良をやっていくのも大変だろうに、大したものだ。 しかし、ゆっくりと言っても、コンポスト向きのとそうでないのがいるのかもしれない。 黒帽子がダメなのか、飼われていたのがダメなのか、まあ、どうでもいいことだ。 れいむの腹にいるちび共の中に黒帽子がいたら、それもはっきりするだろう。 つがいこそいなくなったものの、孤独を埋めるという当初の目的は達成されたようである。 それから数匹分の食欲を発揮し始めたれいむは、3週間後、無事れいむ種一匹とまりさ種一匹を出産した。 赤ゆっくりが腹から射出される勢いには驚いたが、庭は柔らかい芝生であったのが幸いしたのか、 せっかくれいむが作っていた草のクッションから1m以上離れて着地したものの、つぶれることはなかった。 「「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!!」」 「ゆっくりしていってね!ゆぅーん、ぺーろぺーろ、おちびちゃんたちかわいいよぉ。」 これで、コンポストの方は今後も安泰そうだ。 母れいむがチビ共にもバッジが欲しいとか言ってきたので、画鋲のカサの部分をセメダインでくっつけておく。金バッジだ。 これで満足して生ゴミを処理してくれるのだから、安上がりなものだ。 ちなみに、ゆっくりしたまりささまに出て行ってもらってから二日後、門の前にみすぼらしく、 帽子もかぶっていないまりさ種が一匹転がっていた。 「やっばりがっでぐだざぃぃ・・・おねがいじばずぅ。」 とか言っていたが、ゆっくりを飼う趣味などないので、無視しておいた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− それからしばらくは、コンポストとしても庭の芝生管理としても特に問題はなかった。 ピンポン玉サイズの子供たちでは、成体一匹分の処理能力を補えるかと、多少不安ではあったが、 どうやら、成長中のチビ共の方が食欲は旺盛らしく、生ゴミは毎日順調に処理され、肥料になっていった。 黒帽子の方も特に文句を言わず、生ゴミをムシャムシャ食らい、庭をぽよんぽよんと跳ねまわっている。 やはりあの態度は、育ちが問題だったようだ。 だが、赤ゆっくり達が産まれてから一月ほどたち、そろそろ冬の近づきを肌で感じ始めた頃、 またしてもコンポストの性能が低下してきた。 朝、コンポストの中をのぞいてみると、まだ昨日の生ゴミが残っている。 さらにその奥では、歯をガチガチと鳴らしながら、目の下にクマをつくったれいむ一家がいた。 「お、おおお、おにーさん、おうちがさむいよぉぉぉ・・。ねむれないよぉぉ・・。」 「しゃむくてゆっくちできにゃいぃぃぃ。」 「ごはんしゃんつめちゃいよ。むーちゃ、むーちゃ、しょれなりー。」 コンポストはれいむ達なりにきっちり入口を塞いでいるが、やはり所詮はポリバケツ。 まだ昼間は温かいが、壁一枚隔てた向こうの、夜の寒気を完全に防ぐことはできないようだ。 この時期でこれでは、冬の間はコンポストの機能が完全に停止しかねない。 家に入れるという選択肢はもちろんないが、 本格的にコンポストの改造を行う必要がありそうだ。 その日の昼、れいむ一家に『たからもの』とか言う小石や押し花や、ガムの付いたリボンらしきゴミをコンポストから出させると、 大規模な改装に取り掛かった。 まずは、ポリバケツを掘り出して、横倒しにすると天井になる、壁の一部を四角く切り抜く。 それに、ちょうつがいと留め金をつけて、外から開けるようにした。 ゆっくりは、冬には巣の入り口を密閉するらしいので、生ゴミの投入口をつけてやったわけだ。 次にバケツの入口、つまりゆっくりの出入り口だが、せいぜい直径30cm程度のゆっくりに対しては大きすぎる。 壊れたすのこを材料にして、ドーナツ状の板をつくり、バケツの口に取り付けてやった。 これでゆっくりの出入り口は、必要最低限の大きさになり、 木の枝などで塞ぐ手間も、寒気の吹き込む隙間もぐっと減るはずだ。 あとは、再び縁側の下にポリバケツを埋めなおし、これまではむき出しだった側面にまで土をこんもりと盛っておく。 外から見ると、生ゴミの投入口と、ゆっくりの出入り口だけ穴のあいた、砂場の砂山のような外観となる。 縁側の下なので、雨風で盛り上げた土が崩れる心配は無い。 地下は冬でも暖かいというので、これで断熱は十分だろう。 数十分の作業中、庭で遊ばせていたれいむ一家を呼び寄せた時の反応は、 以前コンポストを、はじめてつくった時以上のものであった。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆわぁぁぁぁああい!すっごくゆっくりしたおうちだよぉぉおおお!」 「ゆっくち!ゆっくちー!れいみゅたち、こんなゆっくちしたおうちにしゅんでいいにょ!?」 「ゆわーい!なかもあっちゃかいよー!ゆっくちー!」 「ふーい、疲れた。あとはこいつでも中に敷いとけ。」 「ゆぅぅぅぅうう!しゅごーい!ゆっくちちたおふとんしゃんだー!」 「おにぃさん、ありがと、う、ゆぇぇぇええん!」 「おきゃーしゃん、ないちぇるにょ?どっかいちゃいにょ?ゆっくちしちぇにぇ。」 「おちびちゃぁぁあん!れいむはうれしくってないてるんだよぉ。ゆっくりー、ゆっくりー!」 近所の農家から頂いてきた干し藁をひと束くれてやっただけだが。 とりあえず、この反応からして、今後はまたコンポストとして元気にやってくれそうだ。 こちらはやることやったので、あとのメンテはこいつ等がかってにやってくれればいい。 かつて母れいむと一緒に野良生活を送っていた頃、れいむには夢があった。 温かくて、雨の心配も、風の恐怖も感じないですむおうち。 毎日お腹いっぱい食べられるだけのごはん。 しかも、そのごはんを手に入れるために、命の危険など感じずにすむゆっくりプレイス。 外敵の心配もないそのゆっくりプレイスで、 ゆっくりしたおちびちゃん達とすーりすーりしたり、のーびのーびしたり、 おうたをうたったり、水浴びですっきりーしながら、毎日ひたすらゆっくりする。 夜になったら、ゆっくりしたおうちに帰り、ふかふかのおふとんの中で、 家族で肌を寄せ合ってすーやすーやする。 たまにはあまあまが食べられたら言うことはない。 これが、れいむのかつて夢見たすべてであった。 そして、今、この場所には、れいむが望んだもの全てがあった。 全てのゆっくりが追い求め、そして見つけることの出来なかった場所、ゆっくりプレイス。 だが、れいむにとってのそれは、人間さんがコンポスト、と呼ぶこの場所に、確かに存在していたのだった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆっくりー!」 「すーり、すーり、しあわせー。」 「すーり、すーり、・・・ゆっ、ゆっ、ゆっ」 「ゆふぅん、だめだよまりさぁ。ゆふぅ、ゆふぅーん!」 れいむ親子が初めて我が家のコンポストとなって2年。 結局外部から新たなゆっくりを連れてくる必要はなくなった。 こいつらは、家族以外のゆっくりがいないとなると、姉妹同士でつがいを作り続け、今はすでに4世代目である。 今はこれまた姉妹である、れいむとまりさのつがいがコンポストとして活躍している。 それと、最近は花壇の世話もめんどくさくなったので、街でゲッソリしていたゆうか種も一匹拾って庭に住まわせている。 最初はコンポストの連中が花を勝手に食う、食わないでもめた時期もあったが、 群れでもない以上大した量を食われることもなく、しかも花の肥料がコンポスト産だということもあり、 それなりの折り合いをつけることで落ち着いている。 「「すっきりー!」」 などと思っているところで、また増えるつもりのようだ。 れいむの頭ににょきにょきと生えたツタには赤れいむが3に赤まりさが2。 まあ、構わない。どうせ代替わりが激しいゆっくりである。 うっかり病死などしないうちに子供を作ってもらわなければ余計な手間だ。 それに増えすぎるようなら何個か潰して肥料にするだけ。 庭もすっかり華やかになって、もう幽霊屋敷の頃の面影は残っていない。 「おはよーございます。」 「ああ、農場の。おはよう。」 最近ついにこの辺も、のうかりん農場化が進み始めた。 生垣の向こうから挨拶してきたのうかりんも、そこの従業員である。 「とってもゆっくりした庭ですね。きれい。」 「まあ、ゆうかが一匹でやってるんだがね。」 「うふふ。それは失礼しました。でも、それ以上に・・・あなたの飼われているゆっくり達。」 「?」 「とってもゆっくりしてますね。今までたくさん飼いゆっくりを見ましたけど、一番ゆっくりしてますよ。」 「ふーん。そんなもんかね。」 同じゆっくりである、あののうかりんが言っているなら正しいのだろう。 よくわからんが、この2年間で一つだけ確信したことがある。 こいつらには、コンポストという仕事が向いている、ということだ。 リクのあったゴミ処理場ネタは今度また書きます。 それにしても自分のSS製作ペースがそれほど落ちたわけではないのに、 いつの間にか餡小話のそうとう下に追いやられてたり。 SS増加ペース早っ。 とりあえず、シリーズものについてはそろそろなんか書きます。 町れいむ、レイパー、計画中のペットショップシリーズ リクの消化もまだおわってないなぁ。 挿絵 by街中あき 挿絵 by??? 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 プラス本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 翌年 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ) 挿絵:街中あき 挿絵:おっぱい無しあき
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『ゆっくりに生まれて』 17KB いじめ 自業自得 嫉妬 日常模様 子ゆ 現代 失礼します。 anko2611 ゲスゆっくり奮闘記1 anko2622 ゲスゆっくり奮闘記2 anko3414 ゲスゆっくり奮闘記3 anko3417 ゲスゆっくり奮闘記4 anko3456 れいむのゆん生 anko3458 まけいぬとゆっくり 「」ゆっくりの台詞 『』人間の台詞でお願いします 誤字脱字失礼します れいむは、ゆっくりにうまれてしあわせー! だよ! 朝を迎えるたびに、れいむはそう思う 番であるまりさが、精魂込めて作ってくれたダンボールの巣の中でれいむは目を覚ます 小さな小さなダンボールだが、家族で暮らすには十分は広さのある巣の一角に、成体のれいむ、まりさ、そしてその二匹に挟まれるように蜜柑ほどの子ゆっくりのれいむが一匹 「ゆふふ、まりさも、かわいいかわいいおちびちゃんもゆっくりしてるね……」 まだ気持ち良さそうに「すーや、すーや」と寝息を立てている二匹に、れいむは優しく微笑む このれいむは食品加工されるゆっくりであった 冷凍処理されてコンベアーに運ばれて餡子ペーストにされるだけの存在であったが、運搬中に偶然に偶然が重なり街に放り出された その後に、紆余曲折ありまりさと出会い、今では子供も授かった 元々は食品になるだけの運命はこうも変わるものだと感心する れいむはその事実を知らないが、ゆっくり出来なかった、とだけ認識している 「れいむは、しあわせーだよ!」 「ゆぅぅ? ……れいむ、ゆっくりおはよう!」 「ゆ? ごめんね、まりさおこしちゃった?」 れいむの「しあわせー!」の声で、寝息を立てていたまりさは目を覚ましたようだ まりさはお下げで、わざとらしいくらいの寝ぼけまなこを擦ると、身体を上方にぐいっと伸ばす 俗に言う【のーびのーび】だ 寝ている間に固まってしまった餡子を捏ね解しているのだろう 「ゆふぅ……ゆん! れいむあさごはんにしようね!」 「わかったよ、すこしまっててね!」 まりさの言葉に、れいむはまだ眠っている子れいむを起こさないようにゆっくりと底部をうねらせ、巣の隅に置かれたビニール袋に顔を突っ込む その中から硬くなったウィンナー、虫の死骸、パンの切れ端、野菜の皮などを取り出す どれもこれも野良ゆっくりが街で手に入れる中では最高級の食材ばかりだ このまりさの狩の腕の良さが伝わってくる れいむはそれらを口の中に含むと、一つ一つ半分に噛み千切っていく 「ゆぺっ! ゆぅ、ぶれいくふぁすとさんのかんっせいだよ!」 砂糖水の唾液に塗れた、人間からしたら生ゴミ同然、それ以下の物体をどこかで拾ったのか紙の皿に吐き出した その紙皿を引きずって家の中央に向かう 向かうといっても狭いダンボール内、振り返って少し這えばもう到着だ そこにはまりさが笑顔で待っていてくれた 「ゆぅ、れいむのごはんさんは いつもおいしそうだね!」 「まりさが、いっぱいしょくっざいさんをとってきてくれるからだよ!」 お互いにお互いを褒めあい、そして微笑む 平和な団欒がそこにあった 「それじゃあ、ゆっくりたべようね! むーしゃむーしゃ! しあわせぇぇえぇえ!!」 「ゆん! まりさも、ゆっくりたべるよ! が~つが~つ! しあわせぇぇえぇえ!!」 れいむとまりさは、紙皿ごと食べるような勢いで生ゴミみたいなそれを租借していく 口の周りを汚し、身体に食べかすを付着させながら、どんどん食べていく 数分と掛からずに、紙皿の上には食べかすのみ残すこととなった 「ゆげっぷ! ゆふぅ……それじゃあ、いってくるねれいむ!」 「あ、まりさ! まってね!」 「ゆ?」 食べ散らかし、顔中を汚したまりさは狩に出かけようとしたが、それをれいむが呼び止めた れいむはまりさに近づくと、ゆっくり特有の長い舌を、まりさに伸ばしていく 「ぺ~ろぺ~ろ! ゆゆ、おとこまえさんになったね!」 れいむはまりさの顔というか、体中についた食べかすを綺麗に舐め取った 正直、ゴミみたいな饅頭に何がついていようと問題なく感じるが、ゆっくりにとって身嗜みの基準はあるようだった 「ありがとうれいむ! それじゃあいってくるよ!」 「ゆっくりいってらっしゃい! にんげんはゆっくりしてないから きをつけてね!」 「わかってるよ、それじゃ」 まりさはポヨンポヨンと跳ねて、巣を後にした 残されたれいむは小さく息を吐くとさっき自分で言った言葉を思い出す 【にんげんはゆっくりしてない】 「なんで、にんげんはゆっくりできないんだろうね……」 れいむは小さく呟き、本当に哀れむような表情をする そして気を取り直すように目を瞑ると、そろそろ起き出すだろう子れいむの為に、さっきと同じように、さっきより念入りにビニールから取り出した生ゴミを噛み砕き出した …… ………… 「おちびちゃん、あんまりはしゃいでころんじゃだめだよ!」 「ゆぅぅ~ん! わかっちぇるよ! れいむころばにゃいよ!」 昼を少し回ったころ、れいむと子れいむは巣の外に出ていた 巣があったのは公園の草むらの奥、そこから出て子れいむを遊ばせていた まだ赤ちゃん言葉の抜けきらない子れいむに、れいむは少し心配そうに、そしてそれ以上に幸せそうに笑っていた れいむはベンチの下、日差しから遮られたそこでゆったりとしながら、ただ広い公園の地面を駆け回るだけで楽しそうな子れいむを眺めていた 「ゆふぅ、もうすこししたら、ほかのみんなにおちびちゃんをしょうかいしないとね!」 この公園にはれいむの家族以外にも、数家族住んでいた 子れいむが生まれて以来、育児やらであまり出歩けなかったので、挨拶もかねて連れて行こうとれいむは考えていた 「そのまえにおべんきょうもさせなくちゃだね! いいきかいだから おちびちゃんにいろいろおしえてあげなくちゃね!」 れいむは自分の子育て計画の巧みさに頭の中で感動しながら、ゆっくりベンチの下から這い出る 少し離れた場所にいる子れいむに声をかけようと口をあけ 「おちび、ゆぼぶべっぁ?!」 『あぁん? んだ、ゆっくりか、猫かと思って損した』 偶然通りかかった、サラリーマン風の青年に強かに足をぶつけられた ぶつけた青年は軽く舌打すると、つまらなさそうにれいむの前を通り過ぎる 「お、おきゃぁぁぁしゃぁぁあぁああん!!?」 「ゆ、ゆぐ、おちびちゃん、おかあさんは、だいじょうぶ、だよ……」 子れいむの声に、れいむは笑顔を見せる 実質、ほとんど怪我はない、青年はただ歩いていて出てきたれいむが勝手にぶつかっただけなのだ 蹴ろうとした訳でもないので、命に関るようなダメージは負っていない それでも、ゆっくりと人間の力の差は計り知れないほどあるので、とてつもなく痛いことには変わりない れいむは息を整えると、これも良い機会だと子れいむに人間について教えることに決めた 「おかーしゃん、ほんちょにだいじょぶにゃの?」 「ゆふふ、おちびちゃんはやさしいね でも、おかあさんはだいじょうぶだよ、ゆっくりしてるから!」 れいむは、自身の揉み上げで子れいむの頭を撫でる 「おちびちゃん、よくきいてね さっきのゆっくりしてないのがにんげん、っていうんだよ!」 「にん、ぎぇん?」 「そう、にんげん ほらあっちをみてね」 「ゆ?」 れいむは揉み上げで、公園の出口、その外を行きかう人間たちを指し示す 「ゆぅ、ゆっくちしてにゃいね……」 忙しなく行きかう人間に、子れいむは泣きそうな顔で感想を言う 「ゆん、ゆっくりしてない、ううん、ゆっくりできないんだよ」 れいむは子れいむの言葉に頷くと、思い出すように目を閉じた 「ゆっくりできにゃい? なんで? ゆっくりしないとしあわせー! じゃないよ?」 「ふつうはそうだよね、でも、にんげんはゆっくりとちがって ゆっくりできない、かとうせいぶつ、なんだよ」 「かちょー、せいぶちゅ?」 「そう、かとうせいぶつ にんげんはね、まいにちまいにちあんなふうに かりもしないでゆっくりしないでウロウロしてるんだよ」 「にゃんで? にゃんでそんなゆっくりできないことしゅるにょ?」 「にんげんはゆっくりにうまれなかったからだよ、うまれてたら、れいむたちみたいにゆっくりできたのに……」 れいむは、行きかう人々に哀れみの視線を向ける 子れいむもそれに習うように、哀れみの視線を向ける 「かわいちょう、だにぇ」 「かわいそうだよ しかも にんげんはねおいしいたべものさんをひとりじめしてるんだよ!」 「ゆぅぅうう!? しょれほんちょにゃの!?」 れいむの言葉に、子れいむはまだ未熟な揉み上げを振り上げて驚く その驚きを理解できるというように、れいむは目を閉じ頷く 「ゆっくりかんがえてねおちびちゃん、まりさは、おとうさんはかりのたつじん、せかいいちのかりうどだよ」 「しっちぇるよ! おちょーしょんいじょうの かりうどはいないっちぇ!」 子れいむは誇らしそうに胸を張る、それにれいむは優しく微笑む 「それなのに、どうしてあまあまがとれないか、わかる?」 「ゆゆ? ゆぅ? おちょーしゃんはせきゃいいち、でも、あまあまとりゃにゃい……ゆぅ?」 「おとびちゃんにはまだむずかしかったね でも、かんたんなはなしだよ、さっきいったとおりにんげんがひとりじめしてるからだよ」 「ゆゆゆゆゆ!!!??!?」 子れいむは目を見開き、揉み上げを上下に激しく振る れいむの言葉を理解出来ないのだろう 「おとーさんがひっしにかりしてるのに、にんげんはかりもしないで、ゆっくりもしないで、あまあまやおいしいたべものを ふとうにどくっせんしてるんだよ」 まだ理解出来ていないのか、子れいむは目を回している れいむは遠い目をしながら、行きかう人々を見る 「かんがえてみてね、おとーさんくらいのかりうどなら、まいにち あまあまを たべきれないくらい とってこれるはずだよね?」 「ゆん! とうっぜんだよ!」 「でも、おとーさんはあまあまとってこれないよね、それはどうして?」 れいむは優しく、丁寧に論理を説く 子れいむも、そのミニマム餡子脳でやっと母の言いたいことを理解したのか、呆然とした顔で頷く 「にんげんが、ひちょりじめ、してるきゃら……」 れいむは、頷く 子れいむは自分の言葉を、れいむの言葉を何回も反芻する する度に身体を震えていく、そしてその震えが限界に達したのか、れいむに問い詰めるように振り向く 「にゃんで!? にゃんでにんげんはしょんなことするの!? じぇんじぇんゆっくちできにゃいよ!?」 「そうだね、あたりまえだね、おちびちゃんでもわかるよね」 「あちゃりまえだよ! ひとりじめにゃんてゆっくちでにゃいこちょ、にゃんでするの!?」 「おかーさんにもよくわからないけど、にんげんはゆっくりにしっとしてるんだよ」 「しっと?」 れいむの言葉に、子れいむはキョトンする そしてまたれいむは、行きかう人々を揉み上げで示す 「みて、おちびちゃん、にんげんはゆっくりしてる?」 「じぇんじぇんしてないよ」 「そうだね……じゃあ、れいむたちは?」 れいむは今度は自分、そして子れいむを揉み上げで指し示す 「ゆっくちしてるよ! ……ゆゆ! しょっか、しっと、しちぇる、んだにぇ」 「おちびちゃんはてんっさいだね! こんなにちいさいのに、もうりかいしちゃったんだ」 子れいむは今度は即座にれいむの言いたいことを理解したようだった その様子に、れいむは嬉しそうに笑う 「れいむたちが ゆっくりにうまれて、あまりにもゆっくりしてるから しっとしてるんだよ」 「ゆん……」 「にんげんは まりさみたいにかりもできないし、れいむみたいにこそだてもできない、ただゆっくりしないでウロウロするだけ、それしかできない、かわいそうないきもの、なんだよ」 「みててわきゃるよ……」 「だから、しっとして れいむたちのじゃまをしてるんだよ……ほんとうはれいむたちは、もっともっともぉっとゆっくりしたゆっくりプレイスにすめるんだよ!」 「ゆゆゆ!? ほんちょ!?」 れいむの言葉、ゆっくりプレイス ゆっくりが最高にゆっくり出来る場所、その言葉に子れいむは目を輝かせる 「もちろんだよ、でも、それもにんげんがじゃましてるんだよ」 「にゃんでぇぇぇえ!?」 「しっと、してるからだよ……」 れいむの思想、野良の中でもかなり偏った思想を子れいむは受け入れていく にんげんがゆっくりできない、かわいそうないきもの ゆっくりにしっとして、じゃまばかりする れいむは奥底のもう消えそうな記憶の中に残る、人間に対する怒り不信感をこのような考えにまとめていた まさにゆっくり至上主義の考え方だった れいむは、人間に対して憐憫の情さえ持っていた 「にんげんが、かわいそ 『おもしれーこと言ってんなぁ、おい』 ゆゆ?」 れいむは突然声をかけられ、慌てて振り向いた そこには、さっきぶつかった青年が立っていた 『聞いてりゃ随分笑える理論振りかざしてくれてんのな、お前』 「ゆ? なにが?」 『人間がゆっくり如きにしっとしてるとかほざいてたろ』 青年はしゃがんでれいむと子れいむを見下ろす 子れいむは初めて間近で見る人間に少し戸惑っているようだった 対照的にれいむは、挑むように凛々しい目つきで青年を見ていた 「そうだよ、れいむしってるよ、にんげんがゆっくにうまれることができなかったから ゆっくりにしっとしていじわるしてるって」 れいむは自身満々に告げる 青年は、笑いを堪えるように肩を揺らすと 『んなわけねぇだろバカ饅頭! ゆっくりに生まれる? そんなの世界一の負け組確定しちまうだろーが!』 心底バカにしたよう笑う、事実バカにしているのだろう 少々子供っぽい所作であるが、青年はれいむに舌を【べー】っと突き出してみせた 「なにってるの? バカなの? しねば? ゆっくりにうまれることもできくて くやしいのはわかるけど げんじつをみてね!」 青年の行動に戸惑い怒りながらも、自分の理論を突き通すれいむ 『だぁかぁらよぉ、なんでゆっくりに生まれないと悔しいんだよ、誰もお前らみたいな生ゴミ饅頭に生まれたくねーよ』 「なんでってきまってるでしょぉおお!? ゆっくりにうまれないと、ゆっくりできないんだよぉおお?!」 れいむは当然であると言う様に声を張り上げる 子れいむは母親のその仕草に、同調するように頬を膨らませていたが青年はまったく気にしていなかった 『アホか、ゆっくりに生まれたらゆっくりなんて出来る訳ねーだろ』 「ゆ? なにいってるの?」 青年の言葉にれいむは理解できないという顔をする それに青年は、少し考えるように頭を捻り、口を開く 『じゃあ、聞くがよ、お前らのゆっくりって、どんなだ? そこの膨れてる子饅頭答えてみろよ』 ぷくーしている子れいむは指差す 指されたれいむは、息を吐き出すと自身満々に答えた 「れいむはれいむだよ! ふかふかのベッドしゃんですーやすーやしゅるときだよ! れいみゅのおうちのベッドしゃんは、ふっかふかだよ!」 子れいむは自分が普段寝ている、ダンボールの床を思い出す れいむが枝を咥えて、それを突き刺したりして毛羽出させたそこは、確かに普通の段ボールよりはふかふかかも知れない 青年は頷くと、ポケットを漁り、タオルタイプのハンカチを取り出した 『おい、子饅頭、お前のベッドはこれよりふかふかか?』 「ゆゆ? ゆー……ゆゆゆゆ!??! にゃ、にゃにこりぇぇぇえええ!!? しゅっぎょくふかふかだよぉぉぉおおおおお!??」 差し出されたハンカチに頬ずりした子れいむは、涎を垂らしながら感動していた それもそうだろう、方や段ボール、方やハンカチ ふかふかのレベル違う 「おきゃーしゃん! れいみゅもあんなふかふかでねたいよ!」 「ゆ、ゆゆ?! お、おちついてね、おちびちゃん!」 「あんにゃふかふかでねたら、れいみゅずっとねちゃいそうだよ!」 『あー、おい勘違いするなよ』 「「ゆ?」」 子れいむに詰め寄られ、慌てるれいむ その二匹に、青年はニヤニヤ笑いながら声をかける 『これは俺にとってはあれだ、汚れを拭くだけの布、俺が寝てるのはこれの何倍もふかふかのベッドだからな』 「さっきにょ、なんびゃい、もふかふか?」 『おうそうだぞ、そこで眠れたらゆっくり出来るぞ、あ、でもお前にはふかふかのベッドあるんだっけ?』 青年は心底楽しそうに笑う 『で? 子饅頭ちゃんは俺のこの布以下のベッドで眠ってゆっくり出来るんだっけ? ん?』 「……ゆっくち、できにゃい、よ」 「お、おちびちゃん?!」 子れいむの悔しそうな言葉に、れいむは慌てる 『ぎゃはは! ふかふかのベッドで眠ること出来ないゆっくりがゆっくりしてるのかぁ、ゆっくりって随分レベル低いんだな!』 「ゆ、ゆぎぎ! ちょっとかったからってちょうしにのらないでね!」 『へぇ、じゃあ言ってみろよお前にとってのゆっくりってなんだ?』 青年は笑みを浮かべたままれいむに問う 「ゆっくりはね、ゆっくりってのはね……ゆゆ! かいてきなおうちにすめることだよ!」 れいむはこれはもう勝った、そう確信に満ちた笑みを浮かべた 悔しそうにしていた子れいむも、希望に満ちた笑みを浮かべた 「れいむのおうちはね! すっごくゆっくりしてるんだよ! あめさんがふってもへいきで、かぜさんもへいきで、すっごくひろいんだよ!」 「そうじゃよ! おうちしゃんはしゅごくゆっくちだよ!」 二匹は騒ぎ、自分たちのゆっくりっぷりをアピールする 『雨が降っても平気で、風が降っても平気ってそんなん家なら当たり前だろ』 「「ゆ?」」 『人間が住む家ってのはそんなもんじゃないんだよ、ほら、あれ見えるか? あの四角いの』 青年は、公園の外に立つビル型マンションを指差す 「あれがどうしたの?」 『あれが人間の家だよ』 「「ゆゆ?!」」 二匹は驚きの表情を浮かべた 本当は青年の示すビルは、とある会社のビルなのだがそこは気にしない 『広いとか言ってたけど、お前の家はあんなにでかいか? ん?』 「「…………」」 『雨が降っても平気とかいってたけどな、あの家の中に入れば雨が降ったなんて気付かないんだよ』 「「…………」」 『しかも、あの中はいつもあったかくて、さっきのフカフカが沢山あるんだけど……お前らの家ってどんな感じ?』 「「ゆぎぃ……」」 二匹は、言葉も見付けられず唸っていた どうしたら、どうしたらこの青年にゆっくりのゆっくりを認めさせられるか、れいむはそれを必死に考えていた 自分の少ない記憶、ゆっくりを思い出す、そして出てきたのが 「ゆっくりきいてね! れいむたちはね まいちにまいちにすっごくゆっくりしたごは 『これ食ってみろ』 ゆゆ?」 れいむの言葉を予想していたのか、青年はまたもやポケットから取り出した小さいドーナツのかけらを二匹の前に置いた 二匹は、その欠片から発せられる臭いに惹かれるように近づき、無言で口に入れた そして 「「じじ、じあばせぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇえぇっぇええええええ!!!?!!?!!?!」」 爆発するように叫んだ 子れいむは尿を撒き散らしながら、揉み上げを振り乱し れいむは涙を流して髪を逆立てていた 『どうだ? これが人間の食べ物だ、人間はなこれを毎日、好きなだけ食えるんだけど、お前ら何食ってるの?』 青年は悪意塗れの顔で質問する まだ幸せの余韻に浸っていた二匹は、お互いに顔を見合わせて 朝食べたものを思い出していた 干からびたウィンナー、虫、腐った野菜の皮 どれをとっても、さっき食べたドーナツには勝てない 二匹は項垂れて、悔しそうにしていたが、急に子れいむが顔をあげた 「しっちぇるよ! にんげんがじゃまをしてるからおちょーしゃんはさっきのあまあまとれにゃいって! じゃましなければれいみゅだって、まいにちたべられるよ!」 「ゆゆ! そうだよ!」 『あー、そういえばそんな超理論展開してたなぁ』 青年は急に活気を取り戻した二匹に呆れたように額を叩く 『じゃあよう、聞くけどさっきのお前ら食べたことある?』 「にゃいよ! もっとちょうだにぇ!」 『なんでないの?』 「にんげんがじゃまするからでしょぉおおお!」 『なんで?』 「しっとしてるからだってっちぇ、いっちぇるでしょ!」 『なんで?』 「なんかいもいってるでしょぉおおお!? ゆっくりにうまれることができなくて、しっとしてるんでしょぉおおお!?」 『いやいや、フカフカのベッドもなくて、快適な家もないお前らになんで人間が嫉妬するの?』 「「ゆ?」」 青年の言葉に、二匹は一気に動きを止める 『だって、さっき理解したろ? お前らのゆっくりは人間以下だって、なのに人間以下のお前らになんで俺らが嫉妬して邪魔するんだよ』 「しょれは、れ、れいみゅたちが、ゆっくち 『してないだろ?』 ゆぎっ」 子れいむは押し黙る 「に、にんげんは、ほんとはゆっくりにうまれ 『生まれたくねーよ、だって美味い飯もないんだろ?』 ゆぐっ」 青年の言葉に、二匹は必死に必死に考えていた 自分たちのゆっくりしているところを、必死に、必死に考えていた 人間よりゆっくりしてる、それの矜持を守る為に 「ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりしてるんだよ……ゆっくり」 「ゆっきゅり、しちぇる、よ……」 『…………』 うわ言のように繰り返す二匹に青年は興味を失ったのか、立ち上がった そしてポケットからドーナツを取り出して二匹の前に置いた、ハンカチも一緒に 「「ゆ?」」 『それやるよ、ゆっくり出来ないお前らに人間さまが恵んでやるよ、じゃな、人間に嫉妬しながらゆっくり出来るよう頑張れよ』 青年は、それだけ言うと振り返らずに公園から出ていった れいむと子れいむは、死んだような目でドーナツを貪り 青年が置いていってハンカチに擦り擦りして、その柔らかさを感じていた 「れいみゅ、あんにゃおうちにすみたいよ……」 子れいむは、遠くに見えるビルを眩しそうに見つめて呟いた れいむは、何も言わずに、ハンカチを頭に乗せると、子れいむのリボンを咥えて草むらの奥にある、ゆっくり出来る快適なお家に入っていった このれいむがどうなったかは知らない
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女性店員一押し オペラか…。たまにはいい音楽を聴きたいものだ。 →辛気臭い場所に住んでいるな。 →女をさらって逃げたか。行動したことだけは褒めてやるが、やり方が悪いな。 →大の男が顔をグシャグシャにして泣くのはみっともないな。 -- (名無しさん) 2013-05-17 07 15 14 ラブコメ 【先生】は、シンデレラにいつかなれるとでも思っていたりしないだろうな。 →イチゴが好きなわけではない…果物が嫌いなわけではないんだ。 →エスカルゴ…おいしいとは思えないが今度一緒に食べに行ってやってもいい。 →何を泣いているかと思えば、感動しているのか?無様だな。 -- (名無しさん) 2013-05-17 07 18 16 ミステリーホラー 今回の主人公はオンナか。 →この医者…何か秘密を握っていそうだな。 →やっと犯人を捕まえたか。遅すぎるな。 →あいつらはあの後…スッキリせんな。【先生】、どうしてくれる。 -- (名無しさん) 2013-05-17 07 45 05 アクション どのような戦闘が行われているのか楽しみだ。 →おい、敵が背後に迫っているぞ! →こんなところで死ぬような男だったとは…信じないぞ! →【先生】に何かあったら…まあ、俺が助けてやらんこともない。 -- (名無しさん) 2013-05-17 12 11 27 ↑間違えました アクション どのような戦闘が行われているのか楽しみだ。 →おい、敵が背後に迫っているぞ! →こんなところで死ぬような男だったとは…信じないぞ! →【先生】に何かあったら…まあ、【一人称】が助けてやらんこともない。 -- (名無しさん) 2013-05-17 12 12 20 男性店員一押し アクション?…人のアクションになど興味はない。 →……くだらん。【先生】!終わったら起こせ……何してるんだ?膝を貸せ。 →さっさと勝敗を見せろ。 →所詮まがい物だ。…………が、そこそこはやるな。 -- (名無しさん) 2013-05-17 12 15 21 ラブストーリー 最後まで【一人称】を飽きさせるなよ? →イライラする…この男は愚かすぎるな。 →もっと早くにくっつけただろうに…何?オトナの事情だと?どう言う意味だ。 →【先生】はあんな甘ったるい言葉を投げつけられたいか? -- (名無しさん) 2013-05-17 12 18 12 コメディ いいだろう。この【一人称】を思い切り笑わせてみせろ。 →体を張ってまで笑いを取る…いい根性だ。 →この男には才能が見えるな。 →ああいう映画はどのくらいニンゲンの世界にあるんだ?全部見せろ。 -- (名無しさん) 2013-05-17 12 45 52 コメディ 暗い映画よりは明るいものの方がいいに決まっているだろう。 →この男…【一人称】を笑わせるとはなかなかやるな。 →おい【先生】。笑って喉が渇いた。何か持ってこい。 →おい、今度から映画の真似で【一人称】を笑わせろ。 -- (名無しさん) 2013-05-17 12 46 35 ラブコメ 【先生】、お前はこんなものが好きなのか? →イチゴは好きだ。【先生】、イチゴを食べたい…。 →安心しろ、この女優には負けるが、【先生】にもこのドレスが似合わないわけではないだろう。 →【先生】、お前も花束を持ってきてほしいとか思っていないだろうな…。 -- (名無しさん) 2013-05-17 12 48 27 ラブストーリー ラブストーリーか…いいだろう、【先生】が見たいというなら付き合ってやろう。 →なんだこれは…はっきりしない男だな。 →ここまで来るのが長すぎる。もっと早く気持ちを伝えておけば良かったのだ。 →ふん、つまらん映画だったな。 -- (名無しさん) 2013-05-17 12 59 00 ファンタジーアクション 指輪をめぐる戦い…どういうことだ? →ずいぶん耳の長いニンゲンだな…ん?ニンゲンではないのか? →ついに目的地か。あとは指輪を捨てるだけだな。 →これからも冒険は続く…いいのではないか? -- (名無しさん) 2013-05-17 13 03 17 ファンタジー もしも魔法が使えたら?…そうだな、【一人称】に似合う城でも出してやろう。隅っこになら住まわせてやってもいいぞ。 →魔法使いも弟子入りせねばいかんのか。面倒くさいな。 →持て余すような力は暴走しやすいな。 →慢心はよくない。当然のことだ。 -- (名無しさん) 2013-05-17 13 10 16 ラブコメ そこまで一緒に見てほしいというのならば、見てやらないわけでもない… →あの長い車はなんだ…おい【先生】、あれに乗りたいから持ってこい。 →フレンチというのか…正装はしてやるから【一人称】を連れていけ。 →感動したくらいでそんなに泣くな…ドライブにでも行って気を紛らわせてこい。ついて行ってやろう。 -- (名無しさん) 2013-05-17 13 18 16 ホラー どれほど恐ろしいのか・・・楽しみだな。 →顔を隠してしか犯行ができないとは・・・卑怯者め。 →あんなに室内で武器を振り上げたら、壁や天井に当たって逆に不利なのではないか? →子供騙しのこれを恐怖というなら・・・ニンゲンはレベルが低いのだな。 -- (名無しさん) 2013-05-17 15 47 10 ファンタジー ファンタジー?子供向けではないか。こんなものを俺に見ろと言うのか? →この珍妙な生き物・・・もし本当にいたなら、言葉が通じるのだろうか・・・。 →サボるために魔法を使う?・・・ふん、アホのやることはやはりどこまで行ってもアホだな。 →やはりつまらない映画だったな。【先生】、後で覚えておけよ? -- (名無しさん) 2013-05-17 16 47 07 【訂正】↑のファンタジー台詞一行目、生徒の一人称をそのまま書いてしまいました、すみません。 正しくは「ファンタジー?子供向けではないか。こんなものを【一人称】に見ろと言うのか?」です。 -- (名無しさん) 2013-05-17 16 54 43 ミステリーホラー このオトコは有名な俳優なのか?…知らんな。 →七つの大罪…興味をそそる響きだ。 →ふん、えげつない描写だが所詮は作り物だろう。 →少し…俺でも引き込まれてしまうほどの演技だったな。 -- (名無しさん) 2013-05-17 21 38 14 ホラー ホラー映画?ふん、こんなものが怖いか! →おお、派手にやっているな。 →なんだつまらん、怪物なのにこの程度で…おっ、まだ立ち上がるのか!見上げた根性だな! →これが恐怖だと?くだらんな。 -- (名無しさん) 2013-05-17 21 51 04 アクション アクション映画?戦いの映画か…面白そうだ。 →人質の中に妻がいたのか。それは男として戦う理由には十分だな。 →そうだ!自分の女を傷つけるような相手は、己の拳で殴り飛ばせ! →やはり自分の女を遺して逝くわけには行かないからな。よくやった。 -- (名無しさん) 2013-05-17 22 08 15 <アクション> この冴えない老けたニンゲンが主役なのか?この歳で主役になるからには、かなりの人物なのだろうな。 →ほう、ただの地図ではなく通風孔の見取り図…考えたな。 →おい、早く逃げないとビルの倒壊に巻き込まれるぞ。 →気に入った。やはり男はああでなくてはな。 -- (名無しさん) 2013-05-21 21 00 25 ホラー どうせ子供騙しだろう。 →どうして犯人に立ち向かおうとしないのだ。 →おい、結局化物の正体はなんだったんだ? →もっといい娯楽を持ってこい。 -- (名無しさん) 2013-05-22 20 34 10 ★★↑更新↑★★ -- (名無しさん) 2013-05-22 21 03 00 ラブコメ 俺一緒にとラブコメを見たいというのか…ふん、まぁいい。 →リムジンというのか…あれであれば一緒にドライブしてやる。断らないだろうな… →甘すぎる料理には興味がないが、美しい料理は見ていて良い気分になるな…… →最終的にあのニンゲンは幸せになれたのか…俺といる方が幸せになれるぞ! -- (名無しさん) 2013-05-22 21 05 39
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「ふたば系ゆっくりいじめ 695 おうち宣言成立理由/コメントログ」 すごくゆっくりできたよ!!! -- 2010-06-16 09 29 34 本当に怖いのは、現実世界にはゆっくりなんていないのに、 餡子脳な人間はたくさん存在しているってことだよなぁ。 -- 2010-06-25 17 28 17 ↓二重の意味を持った深いコメントだな・・・ けど、良いお話だった、しかも人間が本能でゆっくりを駆除するって言う所が深い設定だなぁ、と感じたよ -- 2010-07-28 23 57 13 最初に入ってたゆっくりの口とあんよを焼いて透明な箱にぶち込んで置いといたらどうなるんだ? また新しいゆっくりが来てるのかね? -- 2010-09-15 21 58 12 透明な箱に入れられたゆっくりを馬鹿にしたりしながら、居座ってるだけじゃないかな あるいは同胞を救助しようとする個体もいるかもしれないけど、結局他人の家に侵入して自分のものにしようとする意思で動いてる以上、最終的には先客を排除する方向だろう もし透明な箱から救助、あるいは自力で脱出したならおそらくお互いが家の所有権を主張して殺し合いが始まる 大体よく使われる設定だとこういう感じになるんじゃね? -- 2010-09-30 06 31 36 ゆっくり達は、音波で人間達を餡子脳にしていってるのか…こわいいい!この設定怖すぎる(;; 人間が本能でゆっくりを虐待する、か。深い設定だと思ったよー -- 2010-10-26 21 38 13 お兄さんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー こっ怖いーーーーーーーーーーーーーーーーーーー -- 2012-07-24 18 10 13 設定がいい 俺は虐待をしたいなどをおよぼすゆっくりオーラに さからいたい -- 2012-07-24 22 17 04 やべぇ俺も餡子脳になりかけてんのかな…全く理論がわかんないようで理解できる -- 2012-10-30 08 57 31
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うどんげを怖い目に遭わせてみた(後) 46KB 虐待-普通 制裁 自業自得 同族殺し 駆除 ツガイ 飼いゆ 野良ゆ 赤子・子供 希少種 現代 無駄に長いし山、落ち、意味なし (ふたば系ゆっくりいじめ 707 うどんげを怖い目にあわせてみた(前)からの続き) 野良ゆっくりであるまりさ・れいむ達が、人家に侵入し好き放題出来たのは一体何故だろう。 れいむとまりさの体格? 一理ある。 二匹は野良ゆっくりとしては異様な巨体を誇る。 ゆっくりが相手ならば、早々負ける事は無い筈だ。 まりさの知能? それもあるだろう。 まりさが石を使う発想を見せなければ、きっと窓が割られる事は無かった。 ナイフという人間に対する武器さえ持っている。 それが通用するかどうかは置いといて。 お兄さんの不在? これも大きい。 彼が居れば、まりさ達はすぐさま家の中から叩き出されていただろう。 これは最大の幸運と言っても良い。 これらを総合した幸運の上で、今のまりさ達が存在している。 たった一つでも要素が欠ければ、こうはならなかった。 家の中に入る事すら出来ず、或いは途中で潰されていた。 結局まりさ達は、成功するべくして成功したといっても過言ではない。 タイミングとしては完璧。選んだ家もこの上なく都合が良かった。 体格、知能、運。 全てを兼ね備えたまりさ達は、当然のように"おうち"を手に入れることが出来たのだ。 そしてもう一つ、付け加えるなら。 今までうどんげを『怒らせなかった事』。 これに尽きる。 *** まりさはゆん生の絶頂に到達していた。 まりさは野良の親から生まれた、生粋の野良ゆっくりだった。 薄汚れた両親からすーりすーりされ、生まれてまだ清潔だった肌はたちまちシミだらけに汚れきり、 食事も不味い雑草ばかり食べ、雨や外敵に怯えながら少しずつ大きくなっていった。 何度も死にかけた事だってある。 食べ物が雑草すら見つからず飢え死にしかけた時、カラスに襲われた時、突然の豪雨に見舞われた時。 両親や姉妹がほんの傍で見るも無惨に死んでいく。 その度に自分だけは、なんとか頭を働かせて危機を凌いできた。 ある時、野良レイパーにレイプされかけていたまりさを助けてくれた胴付きゆっくり――おそらく飼いゆっくり――がいた。 慈悲のつもりか、あるいは気紛れか。 どちらにせよまりさにとって、名も告げずに去ったそのゆっくりは女神のように感じられた。 胴付きゆっくりに対する変態的な性的嗜好は、その時の名残だろう。 そうしてまりさは何処にでもいる、ごく普通の野良ゆっくりとして成長した。 ゴミ捨て場を漁り、路地裏の隅を住処として人々に嫌われる生活を送る。 ただ一つ違う点を挙げるとすれば、 たまたま落ちていた折り畳みナイフを手に入れたという事くらいだろう。 誰が捨てたかは分からない。 だがそんな事、まりさにはどうでも良かった。 これ一本で、カラスや野良猫を楽々と撃退できるようになったのだ。 ましてや同属のゆっくりなど、敵ではなかった。 まりさの生活は激変した。 他の野良ゆっくりの住居を襲い、食料を奪い取っていった。 抵抗されれば容赦なくナイフで切り刻む。時には殺したゆっくりを食べる事さえあった。 野良であるまりさに、同属殺し、同属喰いの禁忌は働かない。 追い剥ぎ、強盗は言うに及ばず、屍食を働くまりさは誰からも忌み嫌われていた。 れいむと番になったのも、単にれいむが同族喰いを躊躇わなかったから、その一事に尽きる。 結果、当然の如く子を作った。 ただの性欲処理の結果。まりさにとって、それ以上の意味は無い。 だが現実として、食い扶持は増えた。 まりさに残った最低限の良心は、結果として子供達を食い繋がせる事となる。 自然、『狩り』の頻度は増えた。 犠牲になるゆっくりの数も同様だ。 『人間の家を乗っ取る』というれいむの提案に頷いたのも、ある程度の打算があったからに過ぎない。 いざとなれば、れいむと子供を囮にして逃げるという手も考えていた。 図体ばかりで能の無い番をけしかければ、ほんの数秒でも時間は稼げる。 その数秒さえあればまりさは逃げ切れる自信があった。 良心などではなく、ただ単に利己的な目的があって子供を生かしていただけなのかもしれない。 そうして乗っ取りやすい家を物色している途中に、 まりさはうどんげ――が住む家――を発見したのだ。 手段と目的は完全に逆転した。 人間の家を乗っ取るためにその家に侵入するのではなく、 その家に入りたいが為に人間の家を乗っ取るというお題目を掲げることになった。 あるいは一目惚れ、と言って良いかもしれない。 歪んだ胴付きへの慕情をそう呼ぶに値するならば。 侵入自体は呆気ないほど簡単に済ますことが出来た。 なにせ自分は動かず、デクの棒にやらせたのだから怪我の一つも負わない。 かくしてまりさは目標を達成した。 胴付きゆっくりを手中に収めたのだ。 全てが全て、まりさの理想通り。 艶を放つ程に手入れされた髪は、芳しい香りがする。 すらりと伸びた手足は、芳醇な甘味をたっぷりと蓄えていた。 そしてなによりその表情。 涙を湛えるその儚さは、まりさの嗜虐心をそそって堪らない。 もう隣のれいむなど目に入らなかった。 塵ほどに在った子への愛情も、完全に霧散した。 自分は最高の愛玩具を手に入れたのだ。 これさえあれば、もう他に何も要らない。 人間よ、取り返しに来てみるが良い。 そのときはこのナイフで、お前を殺してやる。 まりさはこの弱弱しくも愛らしい玩具を一生愛し続けるのだ。 誰にも邪魔させてなるものか。 そうしてまりさは、笑った。 腹の底から大笑した。 有頂天のゆん生を祝い、そしてこれから続く花道を夢想して―――― ―――――夢想して、そこで止まった。 *** 赤い、 紅い、 朱い、 真紅に輝く双眸が、まりさを見ている。 「ゆ………ひ………?」 そして同時に、まりさは笑う事をやめていた。 理解し難かった。 目の前に居る、これはなんだ? まりさはあの可愛らしい奴隷を見ていた筈なのに。 目の前の玩具は、涙に濡れて震える事しか出来なかった筈なのに。 まるで違う。 まりさの奴隷は、愛したゆっくりは―――― 決してこんなものではない。 ―――『動くな』。 (これはなんなのぜ) そう言おうとして、まりさは気付いた。 体が動かない。 否、動けない。 体が鉛のように重くなっている。 力を入れてもビクともしない。 顔は自由に動くが、だたそれだけだ。 まるで体中を鎖でがんじがらめに縛られ、その上で泥の海に沈み込んだようだった。 「どぼじでがらだがうごがないのおおぉぉ!!?」 「ゆっ!?ゆううぅぅっ!!?」 「おきゃーしゃああん!!」 「どびょちてええぇぇ!?」 後ろから聞こえてくる声は、れいむ達のものだ。 言っている内容からして、まりさと同じく動けなくなっているのだろう。 まりさは振り向こうとするが、それすらも出来なかった。 「まりざああぁ!!ごれはいっだいなんなのおおぉぉ!!!?」 「お、おちつくんだぜ、れいむ。これは、これは……」 「まりしゃのあししゃんうごいちぇにぇええぇぇ!!?」 「どびょちてうぎょかにゃいのおおぉぉ!!?」 銅像よろしく動けないゆっくりが、八匹。 明らかに何者かの仕業だ。 先までの余裕はまりさ達には影すらも残っていない。 ただ現状に驚き、泣き喚きながらも何とか動こうと必死に身を捩ろうとするだけ――― そしてそんな中、まるで自分は関係ないとばかりに、ただひとりだけ、 うどんげが身を起こし、まりさ達を見つめていた。 「ゆっ、どれ、い……?」 気だるそうに、苛立たしげに開かれたその瞳は、まりさ達を捉えて放さない。 まるで蛙を睨む大蛇の目だ。 兎を狙う隼のそれだ。 哀れな罪人に斧を叩きつける、執行人のそれだ。 それよりももっと絶対的な、服従せねばならない予感を認めさせるものだった。 まりさは唐突に気付いた。 自分が何やら致命的な間違いをした事に。 そして今更気付いても、それが手遅れだったという事にも。 まりさの総身から冷や汗が噴き出す。 そんな事には構わないとばかりに、ナイフへと伸ばされる手。 「そ、そのないふさんはまりさの」 ひょいと、うどんげはナイフを取った。 まりさは抵抗しない。いや、出来ないと言う方が正しい。 未だ自由の効かぬ身体で、自身の切り札が奪われるのを見ていることしか出来なかった。 漫然とナイフを弄ぶうどんげ。 切っ先に指を触れ、鋭さを確かめる。 そうして再びまりさ達の方へと向き―――― ―――『こっちへ来い』。 「ゆっ!?まりしゃのあんよしゃんがかってにうごいてる!!?」 途端、一匹の子まりさが弾かれるように動き出した。 子まりさはぴょんぴょんと跳ね、まりさの丁度目の前で立ち止まった。 うどんげと対峙する形になる。 身長の関係上、子まりさはうどんげを見上げ、また逆に見下される格好となった。 「ゆっ!?くしょどりぇいのくちぇにまりしゃしゃまをみくだしゅんじゃないじぇ!!ぷきゅー!」 「おいくそどれい!!さっさとひざまづくんだよ!!れいむのめいれいだからね!!」 頭が高いのが気に入らないとばかりに膨れる子まりさ。 見下されるのが我慢ならないのだ。 後ろかられいむが跪くように命令する。 うどんげの反応は早かった。 即座に膝を折り、しゃがみ込んでから、 子まりさにナイフを突き刺した。 *** 「ゆぎゅぇっ?」 間抜けな声を出す子まりさの額に、深々と突き刺さったナイフ。 1秒、2秒と静観し…… たっぷり5秒。 それだけの時間を以って漸く、子まりさは自身を襲う痛覚に気が付いた。 「いっ……いじゃあああああああああああああああああああっ!!!?」 「おっ、おちびじゃああああああん!!!?」 「おにぇえちゃああああああん!!?」 「にゃにしちぇるのおおおお!!!」 子まりさの悲鳴。 れいむの叫びが響き渡る。 子供達もそれに続く。 その間も少しずつ、子まりさへと突き立ったナイフは沈みこんでいく。 「ぎいいいいぃ!!!いだいいいいいいい!!ごれぬいでええええっ!!?」 じたじたと、動かない身体を無理やりに動かそうとする子まりさ。 無論、逆効果だ。 僅かに身を捩る程度でも、それは傷口を広げるのに充分な働きを持つ。 その痛みでもってますます暴れようとする子まりさ。 悪循環である。 「おいぃぃ!!!どれいいいぃぃ!!なにやっでるんだあああああああああ!!! れいむのおちびじゃんになんでごどずるううう!!!」 れいむが凄まじい形相でうどんげを詰った。 対するうどんげは、何の痛痒も感じていない風である。 時折グリグリと手首を動かし、傷口を抉っている。 その度に子まりさは「ぎゅえっ!!」と喚いた。 「さっざとぞのないふざんをぬけえええええええええええ!! そしだらおぢびぢゃんにわびろおおおおおお!!じねええええええええええええ!!」 れいむの命令に――またしても粛々と従ううどんげ。 あっさりと子まりさからナイフを引き抜く。 「ぎっ……いだ………いだいよ゛ぅ………」 額に大きな風穴が開いているのだ。 餡子をそこから垂れ流し、ビクビクと痙攣する子まりさ。 だがまだ生きている。正気も保っていた。 うどんげはそんな子まりさの目を見ながら―――― ―――『ナイフに突き刺され』。 「ゆ゛っ!!!」 途端、前へと飛び跳ねる子まりさ。 もちろん前方には、引き抜かれた切っ先が待ち構えている。 当然の結果として、子まりさは再びナイフに突き刺さった。 今度は右目、そこに深々と凶器が沈んでいく。 「ゆ゛っ、ゆぎゃあああああああああああああああああああ!!」 「おぢびじゃあああああああああああん!!!?」 れいむが再び叫ぶが、もう遅い。 己の右目を失くした子まりさは暴れ狂った。 暴れて、ナイフから身体を引き抜き、そしてまた狂ったようにナイフへと突進した。 左頬に突き刺さる。 これで子まりさの身体には、合計三つの穴が開いた。 「ゆぎぃぃっっ!!いぢゃいっ!!いぢゃいいいいいいいいいいぃぃ!!」 「おぢびじゃあああああああん!!?どぼじでぞんなごどずるのおおおおお!!? ぞんなごどじでだらじんじゃうよおおおおおおおお!!!やべでねえええぇぇ!!?」 「おねぇちゃんやべでえええっ!!?」 「おねーぢゃんがおかしぐなっちゃっだあああああ!!!」 れいむ達は理解できないだろう。 何故子まりさは自分からナイフに向かって突っ込んでいるのか。 しかし理解できなくとも、止めるように叫び続けるしかない。 そうしている間にも、子まりさは自殺行為に余念が無かった。 「ゆぎっ!!いぢゃい!!やべでぇ!!」 まず顔面のありとあらゆる場所を串刺しにし。 「じぬっ!!じんぢゃうよぉ!!」 それが終われば側頭部を切っ先に叩きつけ。 「ぎゅぐえっ!!……ぎぃっ!!……ぎゃっっ!?」 後ろを向いてナイフに突っ込むなどという器用な芸を見せた。 あっという間に子まりさは、蜂の巣よろしく穴だらけになっていく。 「おぢびじゃんがああああああああああ!!」 「ゆわあああぁぁ!!ばげもにょおおお!!!」 「ごわいいいぃぃ!!!」 「ゆぎ……い……いっぎ………」 姉妹が恐れるように。 まりさは全身の風穴を僅かに震わせるだけの代物と成り果てた。 まさしく化け物というほか無い。 今も餡子はそこかしこから流れ出している。 どうやって今生きているのか不思議なほどだ。 「ぢ………ぬ……ゆ゛・……」 流石にこれ以上動けそうに無い。 ナイフのまん前で、べしゃりと潰れるように倒れる子まりさ、のはずの物体。 まさしく瀕死。 あと少しで、子まりさは死ぬ。 そんなものを、ひょいとうどんげは摘み上げた。 再び立ち上がる。 「ぐっ……ぐぞどれいいいいっ!!!ぎだないででおぢびじゃんにざわるなあああぁぁ!!! おちびじゃんがじんだらどおずるんだああああああ!!!」 激するれいむを他所に、まじまじと穴――もしくは子まりさ――を見るうどんげ。 そのままスタスタと歩き出し、まりさを通り抜け、れいむの真ん前へと立った。 やはり身長の問題で、れいむを見下す形になる。 いや、それよりも。れいむにとっては子まりさの方が心配であった。 「ゆっ………!!くそどれい!!よぐおちびぢゃんをつれできだね!!そごだけはほめてあげるよ!! つぎはなんとかしておちびじゃんをなおせ!!はやぐじろ!! ……ゆ゛!?どうじだの!!?でいぶのめいれいをはやぐぎげぇ!!どれいのくせにぐずぐずして」 うどんげは大きく開いたれいむの口の中に、そっと子まりさを入れた。 そのまま一歩下がる。 あとはどうぞ、と言わんばかりに。 「ゆっ!?おちびちゃん、おかあさんのおくちのなかにひなんしにきたんだね!! もうだいじょうぶだよ!!いたいいたいはれいむがペーろぺーろしてなおしてあげるから!! そしたらどれいをいじめてあそぼうね!!ついでににんげんも」 ―――『噛め』。 「ゆぎゅっ」 「…………ゆ?」 れいむは、子まりさを噛み潰した。 *** 「……………ゆ?ゆ? ゆ? ……………………ゆ゛あ゛ああ゛゛あ゛あ゛あ゛あああ゛あああ゛ぁぁ゛ぁ!!!?」 数瞬の間を置き、事態を理解するれいむ。 だが止まらない。 歯をガチガチと鳴らし、念入りに子まりさを咀嚼してしまっている。 「ゅ゛っ!!ゅ゛っ!!…………ゅ゛っ!!」 一度歯が鳴るごとに両断される子まりさの体。 二度目は四つに。 三度目は八つ。 四、五、六度と、徐々に子まりさを餡ペーストにしていくれいむの歯。 「あ゛あ゛あ゛あああ゛あああ゛ああ!!! でいぶのまっしろいはさん!!やべで!?やべでね!? おちびぢゃんがじんじゃう、じんじゃうがらあああああ゛あああ゛ああ゛あ!!!」 止まらない。 止まるわけが無い。 いくられいむが悲鳴を上げようが身体は言う事を聞かずに、子まりさだったものを磨り潰していく。 もう子まりさの声は聞こえてこなかった。 口の中一杯に、甘味が広がる。 「ゆぎゅっ!?むー、じゃっ!?むーしゃ!? じあっ、ち、ちがうよ!!しあわぜなんがじゃな、じあっ、わ、ちがううぅぅ!! ちがうのにいいい!!?じあ、わ、ぜえええぇぇぇ!!?」 思わずれいむはそう言ってしまった。 事もあろうに、我が子を食べて美味しいと言ってしまった。 涙が溢れる、が、それ以上に幸せそうにれいむは笑う。 本能なのだ。 例えどんなものでも、美味しいものは幸せに感じてしまう。 「お、おがーしゃんがおねーちゃんたべぢゃっだあああぁぁ!!!」 「ごわいいいいぃぃ!!!」 「れいみゅはたべないでえぇぇ!!」 「ゆあ゛あぁぁ!まりじゃはおいしぐないよぉ!ほがのごだべでぇ!!」 「どぼちてちょんにゃこというのおおお!!?」 恐慌に陥る周囲の子ゆっくり達。 当然だ。 目の前で姉妹が、よりにもよって親に食われたのだ。 単純に怯えるもの、懇願するもの、姉妹を売るもの、それに嘆くもの。 一匹として動くものは居ないが、それは体が動かないからだ。 もしそうでなかったらば、とっくにれいむから逃げ出しているだろう。 「むじゃっ、じあ、わっ、やべでっ、ごっくん! ………ゆあぁ………のみごんじゃっだよぉ………」 口の中の餡子を飲み込んだれいむ。 絶望と笑顔の入り混じった表情で、呆然と呟く。 そしてそのまま、 「ゆぐっ」 えづいて、餡子を吐き ―――『吐くな』。 「……………っげ、げぇっ………?」 ……出さない。 一般的なゆっくりが餡子を吐くポーズそのままで。 れいむは何度もえづき、しかしその口からは少しの餡子も出る事はない。 「どぼじでおちびぢゃんででこないのおぉぉ……?」 心底不思議そうに、れいむは呟いた。 ぼたぼたと零れる涙が床を濡らしていく。 そんなれいむを見下す、二つの眼。 何も云わず、ただ目の前の出来事を淡々と眺めていた者。 身動きの取れぬまりさは一言も喋ることなく、目の前の、そして自身の後方で起きた出来事を、 ただ見て、ただ聞いて、そしてある種の確信を得るに到った。 今まで自分が侮っていた相手は「奴隷」などではない。 もっと恐ろしく、もっと危険なものだったのだ、と。 *** ―――『付いて来い』。 まりさ達は一階へと降りていた。 正確に言うと、『降りさせられた』の方が良いかもしれない。 何故ならば、それはまりさ達の意思ではなかったからだ。 うどんげはれいむをじっと見て、見続け、それからやっと動き出した。 れいむの髪を掴み、強制的に上を向かせその顔を覗き込んだ。 それでお終い。れいむは未だ呆けており、何も反応を返す事はしなかった。 あとは順々に子ゆっくり達を掴み上げ、同じく顔を覗きこんでいった。 何をされた、というでもない。 ただ本当にそれだけ。 同じように、まりさもうどんげの赤い瞳を覗き込んだ。 紅く透き通った目は、それだけで本当に綺麗だった。 その時から、身体は勝手に動き始めうどんげの後を追い続けている。 まりさにも分かることがあった。 この異常な事態は、目の前のうどんげによって引き起こされている。 奴の目を見たときから体の自由は利かなくなったし、れいむ達が異様な行動を取った時、 必ずと言って良い程うどんげはその者を見据えていた。 結論として、まりさは一つの警戒を抱く。 うどんげの目を見てはならない。 この異常な事態は、奴の「術」――恐らくはそう呼べる――によって引き起こされている。 結果としてみれば、まりさの考えは当たっていた。 ゆっくりとしては中々に頭の良い証だと云えるだろう。 もっとも、それが事態の好転に繋がる事はなかった。 身体は相も変わらず自由に動かず。 それは即ち、反撃も逃走も許されていないという事。 今より早く気付ければ何かしらの好機はあったのかも知れないが、それは仮定の話だ。 まりさ達、少なくともまりさは、俎板の上の鯉だということに変わりは無い。 故に、まりさが現在出来得る事は。 俎板に乗りながらも、必死に頭を働かせて算段をつける以外にない、と言って良いだろう。 *** まりさ達は最初にリビングへと舞い戻った。 そこでうどんげが目をつけたのは、卓の上に置かれた皿、と大量のうんうん。 彼女が摂る筈だった昼食の成れの果てだ。 まりさを除くれいむ達全員がひり出したうんうんは、小山を作り出している。 「ゆぎゅ!?」 「ゆぐっぢ!?」 迷い無くうどんげは二匹の赤ゆっくり、赤れいむ、赤まりさを掴み上げた。 赤ゆっくり達に抵抗は出来ない。 もとより対格差は歴然であるし、何よりも体の自由が利かないのだ。 ピンポン玉程度の赤ゆっくりをそれぞれの手に持つ。 「にゃにしゅるにょ!?どりぇーのくしぇににゃまいきだよ!? れいみゅおきょったらきょわいんだきゃらにぇ!!ぷきゅーしゅるよ!ぷきゅううう!!」 「ゆゆっ!?おしょらをとんでりゅみちゃい!!」 身体は動かなくても口は利ける。 二匹はそれぞれ間抜けな感想と、もっと間抜けな威嚇を繰り返し、 そして無防備にうどんげを真正面から見据える形となった。 ―――『皿の上のものを全て食え』。 「ゆっ!?」 「ゆゆっ!?」 ぽとり、と二匹が落とされる。 着地した場所は、うんうんの小山。 「ゆぎゅっ!?くしゃあああああああああああいい!!!」 「きもぢわりゅいんだじぇえええええ!!?」 当然、泣き喚く二匹。 ゆっくりだけしか分からないが、仮にも排泄物の上に立つのだ。 人間で言えば肥溜めの中に突き落とされる心境だろう。 だが、 「れいみゅこんにゃときょろに………いや゛ああ゛ぁぁ゛!!!どぼぢでだべでるのおおおぉぉ!!?」 「まりじゃのおぐちざんっ!ゆっぐ、むーしゃ、う゛ぇ゛っ!とばっで!!どばっでええぇぇ!!」 二匹はその肥溜めに噛り付いた。 顔を底部の位置に換えて、地面――うんうんの――を掘り進もうとしている。 「うんう゛んなんがだべぢゃぐにゃいのにいいぃぃ!!ゅ゛えっ!!む゛ーしゃっ!!」 「どぼちでおぐちじゃんどばっで、むじゃっ!!ぐれないのおおおぉぉ!!!?」 えづきながらも食べる。 餡子は出ない。入っていくのみだ。 「だじゅげちぇええええ!!だりゃかきゃわ゛いいれい゛みゅを、むーじゃっ!!だずっ!むじゃっ!!」 「ごんにゃのだべぢゃくないいい!!どぼちでまりじゃがあああ!!!」 助けを乞いながらも食べる。 二匹を助けるべき姉妹、親たちは動けない。 それぞれ青褪めるか、「おぢびじゃんん!!?うんうんはぎだないよ!!やべでええ!!」と叫んだりするか、 あるいは妹たちの狂態――うんうんを食べているのだ――に怖気を抱くしかなかった。 「ん゛む゛うう゛うううう゛う!!む゛うう゛うぅ゛ぅ!!むしゃ、う゛ええ゛えぇ゛ぇぇ゛!!!」 「ぎぼぢわるいよ゛おおお゛ぉ゛ぉ!!ぉ゛っ…むーしゃ!ん゛むぇ゛え゛ええ゛ぇぇ゛ぇ!!」 食べ続ける。 それでもうんうんの山は無くならない。 赤れいむ、赤まりさは赤ゆっくりだ。 ピンポン玉程度の大きさしかない。 それに比べて、うんうんは親である――60センチ大の――れいむの総体積の一部なのだ。 プラス子ゆっくりのうんうんも含まれている。比喩抜きで小山である。 大きさだけでも赤ゆっくり二匹を足した上で、数倍。 体積は更にその数倍。 いかに貪欲、大食であるゆっくりと言えども、限界許容量を大きく逸脱している。 加えて、脆弱さに定評のある赤ゆっくりだ。 その薄皮が内圧に耐え切れなくなるのは、そう遠い話ではない。 「ぐるじいいい゛いいい゛ぃぃ!!ぽんぽんざんがやぶげりゅうう゛うう゛ぅぅ!!!」 「も゛うだべだぐない゛のにい゛いいいぃ゛ぃ!!どぼぢでとぼらな゛いにょお゛おおお゛おぉぉ!!?」 既に赤ゆっくり達の身体は、元の大きさの二倍にさしかかろうとしていた。 全身は張り詰め、心なしか目も張り出てきている。 今まで味わったことの無い内側からの苦しみに、二匹は揃って悶えていた。 のたうちながらも決して口は休まずに、悲鳴をあげ、そしてうんうんを食んでいる。 そこまでしても小山は無くなる気配を見せようとしない。 赤れいむと赤まりさは、やっと五分の一を食べきったというところだった。 うどんげはそんな二匹を、なんら気にする事無く移動する。 まりさ達も彼女に連れられ、赤ゆっくりの悲鳴は誰にも顧みられる事は無かった。 *** 「ぐぎゅええ゛えぇぇ゛ぇぇえ゛えええ゛え゛え!!!」 「いだいいいぃ!!おぐぢざんどまっでえ゛ええぇぇ゛ぇぁぁ゛ぁぁぁ゛あああ゛ああ!!!」 所変わって、和室。 ガラス片が散乱するその部屋を、跳ね回る二匹のゆっくりがいた。 子れいむと子まりさだ。 隣から僅かに聞こえる赤ゆっくり達の悲鳴も、それ以上の大声に打ち消されて聞こえない。 二匹はここで、ある一つの『仕事』を仰せつかっていた。 ―――『割れたガラスを見つけ出し、片づけろ』。 うどんげが二匹の頭を掴み、凝と見据えた時から、二匹の身体は自動的に動き続けている。 子れいむ達の意思は関係なかった。 嫌だ、逃げたい、と思っても、それは現実には成り得ない。 「い゛じゃいい゛いぃ゛ぃ!!あ゛んよざんいだいいい゛いいい゛ぃぃ!!!」 「も゛うぴょんぴょんずるの゛やだああ゛あ゛ぁぁ!!じんじゃううううぅぅ!!」 もう一度言う。 『ガラス片が錯乱した部屋』を、『跳ね回っている』のだ。 底部にガラスが突き刺さり、ぐずぐずに千切れていく。 それでも限界を超えたかのように二匹の身体は止まる事を知らない。 「ゆぎぃっ!!?もうがらすしゃんや゛だああ゛ああ゛あああ!!」 子れいむが一際大きいガラス片を見つけ、走り寄った。 そしてそのまま、咥える。 「ゆ゛ぎい゛い゛いぃっ!!ゆぎいい゛いいい゛いい゛いいいっ!!じぬっ!!じぬうう゛うぅぅ゛ぅ!!!」 一息に飲み込もうとする。 よりにもよって、ガラス片をだ。 当然、子れいむの口の中は切れ、さらに喉頭に突き刺さる。 だがその程度で止まる事はない。 「ん゛ぐうう゛うぅ゛ぅっっ!!?ぎゅぐうう゛う゛うううん゛!!!!!」 子れいむは既に、幾つものガラス片を同じように処理していた。 体内に貯まったガラス片がぶつかり合い、身体を抉り、傷つけていく。 子れいむの後頭部から、ガラスの一部がにょきりと生えた。 ガラス同士が押し合い、そのうちの一つが子れいむの身体を貫いたのだ。 「あがががががががががが!!!!!!あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!!」 傍らでは、子まりさが己の舌を、身体を使って、雑巾の代わりとしている。 細かいガラス片を拭き取っているのだ。 畳に入り込んだガラスを取ろうと、舌を擦り付ける。 結果として、子まりさの舌はボロボロ。 唾液などはとうに出なくなっており、まさしく襤褸雑巾といった風だ。 もっとも、その方が好都合ではあるのだが。 「ごろじでええ゛え゛ぇぇぇ!!!ゆ゛っぐりでぎないならいっぞごろじでええ゛えええ゛ぇぇ!!!!」 「ゆぎぎ……ぃぎっ!!ぎぃひっ!?ゆぐげぎゃがぎゃぎゃぎゃ!!!!!」 のたうちながらも丁寧に仕事をこなしていく子れいむ、子まりさ。 だがその悲鳴は、あるいは助けを呼ぶ声は、誰にも聞かれることが無い。 うどんげは既にこの場を去っていた。 それどころか、和室自体に入ろうとすらしなかった。 急拵えの針山地獄に悶える二匹をよそに、他の部屋を歩き回っている。 無論、まりさ達も同様だ。 子れいむと子まりさはその身を使ってゴミ取りローラーの真似事を続けるしかない。 実際、二匹の働きのお陰でガラス片は徐々に取り除かれつつある。 あるいは、生まれてこの方初めて他者の役に立った二匹であった。 「ぐぎゅ゛っ!!?」 「ぴぎぃ!!」 子れいむの右目からガラス片が飛び出し、子まりさの舌先が千切れた。 おおよそ問題は無い。 二匹はまだまだ元気に動き続けられるだろう。 *** そして、最後に残った子ゆっくり、子れいむであるが。 ―――『跳ねろ』。 「ゆぎゅひっ!?どぼちてぴょんぴょんしちぇるにょおおおおおぉぉ!!?」 家を隈なく回り、散乱したうんうんやしーしー、それに埃などを舐め取って、 それからリビングに戻りうどんげの『暇潰し』に付き合わされていた。 子れいむの体が勝手に跳ねだす。 垂直に、ぴょんぴょんと。 およそ3センチほどだろうか。 子れいむの意思を抜きにすれば、比較的よく見られる光景である。 ―――『三倍高く跳ねろ』。 「ゆひっ!?れいみゅ、どぼっ、どぼちてぇぇぇえええ!!!?」 「おぢびじゃあああん!!?」 グン、と子れいむの跳ねる高さが上がった。 相変わらずのれいむの悲鳴。 勿論それは何の意味も成さない。 身長とほぼ同じ高さまで飛び跳ねる子れいむ。 中々に珍しい光景と言えた。 身体能力に欠けるゆっくりが、ここまでの運動を見せる事は早々無い。 子れいむ自身も訳が分からないようだった。 「いぢゃっ!!いぢゃい!!れいみゅのあんよじゃん、どまっでえええええ!!!」 子れいむが苦痛を訴える。 タガが外れた運動能力に、子れいむ自身の体がついていかないのだ。 泣き喚きつつも、決して跳躍を止めようとはしない。 人間に例えるなら、子れいむは肉離れを起こしつつも運動を強制されている状態といえる。 内からの引き千切るような痛みなのだ。 子れいむに耐えられるようなものではない。 それにも関わらず、 ―――『更に三倍高く跳ねろ』。 「ゆぎひぃっ!!?」 子れいむは更なる跳躍を行う。 否、行わされている。 今や子れいむの最高到達点は己の身長の約三倍、30センチにも及ぼうとしている。 ここまでくると珍しいを通り越し、最早怪異である。 誰の目から見ても、子れいむの挙動は異常極まりなかった。 「ゆ゛ぁ゛っ!!あ゛んよざん!!ぢぎぃ!!ぢぎれ゛る゛!!ぢぎれぢゃう゛うう゛うぅ゛ぅ゛!!!」 ―――『更に三倍、かつ宙転』。 「ぎひい゛い゛いぃ゛ぃっ゛っ!!!?」 あっという間に、親たちの身長すら飛び越える程の跳躍を見せる子れいむ。 涙を振りまいて身体をぐねぐねと折り、そのまま顔面から着地を繰り返す。 体の至る場所が無理な運動により裂けかけ、中の餡子が透けて黒ずみ始めていた。 うどんげは子れいむの狂態を、ただ何をするでもなく見ていた。 椅子に座り足を組んで頬杖を突き、何の気無しといった風に見続けている。 そこに興奮や愉悦、嗜虐の色は見られない。 売れない大道芸でも見ているかのようだった。 ―――『宙転ののち横回転1回、ひねりを加えた後に後方宙転3回、さらに月面宙返り』…… 「ぎい゛い゛い゛ぃぃ゛ぃっぃぃ!!!?い゛ぎい゛いい゛いいいい゛い゛ぃぃ゛ぃっっ!!!!」 「おぢびじゃああんっ!!?もうやべでええええぇぇぇっっ!!!!」 ますます複雑怪奇になっていく子れいむの挙措。 制止の声も何処吹く風だ。 己の限界に挑戦せんとばかりに、子れいむは跳ね続ける。 少なくとも暫くの間は、子れいむはうどんげの暇潰しに付き合わされることになる。 それがいつ終わるのかと訊くのなら、 おそらくは、子れいむの体が限界を迎えるまでだろう。 *** かくして、結果は。 「ゆぎっ……ぃぎっ………っぐ………ぎゅぇ゛………」 「げぎっ………げぎぎ…げぎっ、げげげぎいぎぎ」 体中、あるいはその中までもガラス片に埋め尽くされた子れいむ、子まりさ。 子れいむはガラスのサボテンと化しており、子まりさも似たようなものだ。 僅かに動く度にガラスが擦れ、チャリチャリと音を鳴らす。 満身創痍をとうに越え、いつ死んでもおかしくない状態であった。 その代わりとでも言うべきか、和室は清められている。 「ぎゅぎっ!!!ぎゅぎょえ゛っ!!ぎょん゛っ!!!」 ビタビタと魚よろしく跳ね回っているのは、子れいむだ。 底部、顔面、頭部に関わらず床にぶつかり、またその部位を使って無理やり跳ね飛んでいる。 既に全身は膨れ上がり、蒼痣のようなものがそこかしこに浮かび上がっていた。 子れいむ自身も痛みによる気絶と覚醒を繰り返し、悲鳴を上げるだけの精神しか残っていない。 「ん゛お゛ぇ゛っ、むじゃっ、おげええぇぇっ!!むーじゃっ!!」 皿の上で嘔吐し、吐瀉物を食べる事を繰り返す赤まりさ、が一匹のみ。 それ以外には何も居ない。 『皿の上のものを全て食え』。 元よりそういうものだ。体が忠実に命令を守った結果である。 子まりさの身体は数倍に膨れ上がり、限界まで伸ばされた皮からは薄らと中身の餡子が透けて見えていた。 吐いて食べる、の繰り返しは不気味なポンプを連想させる。 今や満足に会話ができるものはまりさとれいむしか居ない。 子供達は駄目だ。 壊されてしまった。 目の前の、紅い瞳を持つものに。 そして、今もまた。 「ぎゅひっ!!」 「げひゅっ!!」 痙攣を繰り返すだけとなっていたガラス饅頭二匹が、ゴミ袋の中に入れられる。 それを待っていたかの如く、子れいむと子まりさはぼろぼろに千切れていき、やがて死んだ。 後に残るは餡子とガラスの混合物だけだ。 まさしくゴミを扱う手つきで、ゴミ箱の中に放り込められた。 「ぢぎいいぃぃっっ!!!?」 狂った顔で跳ねていた子れいむが、真っ二つに裂ける。 底部から口元は地に付き、それより上はまたも飛ぶ。 すべては近過去、紅い瞳を見た刹那。 ―――『這いずりながら跳べ』。 どうやっても矛盾するであろう難題を、子れいむは見事やり遂げた。 代償は、真っ二つになった体。 間抜けに悲鳴を発する下半分を尻目に、上半分は餡子を零しながら上昇する。 やがて到達点。 もみあげを羽のように振り回し、しかし何の意味も無く上半分は下半分の元に着地した。 「い、へ、ゆへへへへへへへへっへっへへっへへへへ………」 気が触れたかのように笑う下子れいむ。 上子れいむは未練がましく空を見上げ、もみあげをぱたぱたと泳がせている。 二つの間から餡子は流れない。 身命を削った反動は、子れいむの瑞々しかった餡子を干からびさせていた。 「ゆぶ、お゛っげ……ゅ゛っ!?ゆ、ぐぎっ」 今にも餡子を吐こうとしていた赤まりさが掴み上げられる。 かつてのピンポン玉は、今や子ゆっくり以上の巨体だ。 張り詰めた肌に指が食い込む。 赤まりさにとってそれは、吐き気を増進させる以外の何者でもない。 元から耐える気も無く、迸るままに餡子を―――― ―――『吐くな』。 「…………っっ!!ゆ゛、っっっっぃ!!!!!!」 吐けなかった。 何がどうなっているのか分からないが、とにかく餡子を戻せない。 親であるれいむと似た苦しみが子まりさを襲っていた。 いや、こちらの方が命に関わる点、れいむよりも重大である。 既に身体は限界許容量を越えた餡子――うんうんと、姉妹――で一杯である。 今までは騙し騙し、吐いて戻すを繰り返していたから耐えられたのだ。 こうなっては、皮がいつ内圧に耐え切れなくなっても不思議ではない。 ダムの堤防が決壊するようなものだ。 「~~~~~っっっ!!!!!っっっ~~~~~~っっ!!!」 思い切り目を閉じ、歯を噛み締める赤まりさ。 今にも行き場をなくした餡子は、他の場所から突き出ようとしている。 それを耐える。必死に耐える。 さながら時限爆弾のように。 そして、そんな爆弾は処理されるのが運命である。 「ゆっ、ちょっ、ちょっとまつんだ」 まりさは唐突に帽子を取られ、頭の上に赤まりさを乗せられた。 あとは再び帽子を被せ、赤まりさが外から隔てられる。 ごく一般的な、まりさ種が良くやる子供の運搬法。 まりさとて覚えがある。子ゆっくり達をこうして運んでやったこともあった。 しかし今は場合が違う。 まりさの脳裏を過ぎった想像は、 ぱん 僅か数秒という近未来において現実のものとなった。 まりさの全身から冷や汗が噴き出る。 頭の上が重い。 まるで『何か』が、頭に『満遍なく降りかかったよう』で。 それは、つまり。 赤まりさが、満遍なく。弾け…… そこまで想像して、まりさは考えを打ち切った。 悍まし過ぎて、とても考える気になどなれない。 なんてことを。 なんてことをするのだ、こいつは。 まりさは総毛立った。 こんな殺し方があるか? どうしたらこんな方法を考え付く!? 何で一体どうして、こうも酷い殺し方ばかりを――― ふと、目を逸らす。 「おぢびじゃんんんん!!!!!!」 ようやく自体を飲み込んだれいむがまた泣き喚く。が、まりさにはどうでも良かった。 そんな事より。 見てしまった。 真正面から見据えてしまった。 うどんげは嘲笑していた。 無表情のように見える、その唇をほんの少しだけ歪めて。 誰にも悟らせようとせずに、ただひっそりと目の前のまりさ達を見て、哂っていた。 どうしようもなく侮蔑し、嘲弄していた。 気付かない方が良かったのかもしれない。 だが、まりさは気付いてしまった。 直感してしまった。 目の前のこいつは、まりさ達が死ぬことを愉しんでいる、と。 *** 子を失ったれいむとまりさは、外へと連れて行かれた。 窓ガラスの向こう側、庭にぽつんと、二匹は立つ。 そして、それを見る赤い双眸は――― 「ぐぞどれえええええええええいいいぃ!!!おばえが!!おばえがあああぁぁ!!!」 れいむが叫んでいる。 怒りを込めて、憎しみを込めて。 愛する我が子を全て失った結果、やっとの事で全てを理解したらしい。 恨みを全てぶつけんと、動かぬ身体を必死に揺らしてれいむは叫び続ける。 「よぐも!!よぐもでいぶのおぢびじゃんだち…おちびじゃんたぢをおおおぉぉ!!!! ごろじでやる!!!おばえも、にんげんも゛…… ぜんぶごろじでやる゛うう゛うう゛ぅぅ゛ぅ!!!!!!」 ……それはもう叶わぬ夢だ。 まりさは理解している。 切り札であったナイフは、うどんげに取られてしまった。 虎の子があってこそ、人間に勝つ目があったのだ。れいむでは人間に勝てない。 ましてや、目の前のこいつには、特に。 「おぢびじゃんのがだぎはどっであげるがらね!! まずぐぞどれいのおめめをえぐって、そのぎたないかみをぬいて! ぞれがら、ぞれがら……どにがぐごろず!!ごろずう゛ううう゛うう゛う!!!」 無理だ、無茶だ、無謀だ、夢想だ。 憎しみを口に上らせるだけでは、何も起きはしない。 寧ろ煽ってどうするのだ。 殺してくれと言っているようなものではないか。 「ばりざもなんがいっでやっでね!! ごのぐぞどれいにかわいいおぢびじゃんをごろざれでるんだよ!? ぐやじぐないのおお゛おお゛お゛お゛お゛ぉぉっ!!!?」 「………………ぜ」 黙れ。 誰が言うか。 元々あんな餓鬼供、すっきりのついでに出来たおまけではないか。 それよりも……… まりさは往生際の悪いゆっくりであった。 いや、元々ゆっくりがそうなのかもしれないが、まりさはその中でも特に群を抜いていた。 そうでなければ野良を生き抜く事など出来なかったからだ。 まりさは性根、生い立ち共に、生き汚くなるように育っている。 故に、この袋小路とも言える局面においても何とかならないかと考えていた。 まりさは考える。 此処は土壇場。一歩間違えば首が飛ぶ。 最善の手を考えなければならない。 まりさは考えて。 逃げる事は出来ない。そもそも身体が碌に動かない。同じ理由で反撃も不可。 唯一自由に動くのは顔だけ。つまり言葉で何とかせねば。 まりさは考え抜いた。 考えろ考えろ考えろ。 どうにかして生き抜くのだ。 今この場で出来得る最良の手、それは――― 考え抜いて、まりさが出した結論は、 「……あ、あんなちびどもはしぬのがおにあいだったのぜ。ゆひぇっ」 「ばり゛ざああ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ!!!?」 単純にも、ただ媚びることであった。 やはりゆっくりである。 底が知れた。 *** 「そもそも、まりさははんたいだったのぜ。にんげ、にんげんさまのおうちをおそおうだなんて。 でもれいむにいわれてしかたなくやったのぜ?ほんとうなのぜ?」 「ばりざああああああああああ!!どぼじでぞんなごどいうのおおおおお!!!! おぢびじゃんだちのがだきをうつんでじょおおおおおおおおお!!!?」 「うるさいんだぜ!!このぶす!!おまえなんかとすっきりしたのがまちがいだったのぜ!! やっぱりれいむなんてただのまんじゅうべんきなのぜ!!!」 「ひどいよばりざああああああああぁぁぁ!!!」 必死に弁解するまりさ。 自分は悪くない、悪いのはれいむだ、と。 さりげなく――でもないが――れいむを罵倒することも忘れない。 板についた卑屈振りだった。 「れ、れいむはいくらくるしめてころしてもいいから、まりさだけはたすけてほしいのぜ? みかえりはあるのぜ!!まいにちおいしいあまあまをもってくるのぜ!! それにきれいなびゆっくりだってたくさんつれてくるのぜ!!それから―――」 「ばりざああぁぁ!!どぼじでぐぞどれいなんがにあまあまあげなぎゃいげないのおおおおぉぉ!!! それにびゆっくりってどういうごどおおおぉ!!!?まりざにはがわいいれいむが」 「うるさいってさっきもいったんだぜ、このまんじゅうべんき!!! おまえはそこらへんでいきずりののらゆっくりとでもすっきりしまくってればいいのぜ!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおぉぉぉ!!!?」 無論、大嘘だ。 あまあまが取れるならば最初から人家に入ってなどいない。 美ゆっくりなど、まりさは今まで数えるほどしか見たことが無かった。 つまりは絵に描いた餅。 死を恐れるあまりに、有り得ない約束まで取り付けようとしている。 「きっとにんげんさまもまりさたちをころすのをはんたいするとおもうのぜ!! よわいものいじめなんて、きっとにんげんさまがしったらかなしむのぜ!! ここはひとつやさしいところをみせて、まりさをみのがしてほしいのぜ!!」 「なにいっでるのおおおぉぉぉ!!!?にんげんもごろずんだよおおおお!!! かみついてのしかかってどれいにしてうんうんたべさせてそれから……」 「うるさいってのがわからないのかぜこのどぶす!!くず!!あかばえ!!さげまむ!! うんうんはだまってうんうんらしくそこにすわってるんだぜえええ!!!」 「ひ、ひどいいいいいい!!!ばりざのばがああああぁぁ!!!」 これは効果があった。 明らかに、相手は考え込むそぶりを見せたのだ。 しかしれいむの発言のせいでそれも霧散した。 まりさは焦る。 光明が閉じられようとしている。 「じつをいうとまりさはこのおうちのにんげんさんとしりあいなのぜ!! だからほんとうはただおうちにあそびにきただけなのぜ!! それをこのみしらぬどぶすれいむにつけまわされただけなのぜ!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおぉぉぉ!!!」 「いいかげんだまれっていってるんだぜ、くず!!ぶた!!うんうん!!のうなし!!なまごみ!! いっちょまえにくちだけきいて、そのきたないつらをみせるんじゃないぜこのでいぶ!!」 「でいぶはでいぶじゃないのに゛いい゛いい゛いい゛ぃ゛ぃ゛ぃ!!!」 嘘に嘘を重ねるまりさ。 もう整合性なんて知ったことではなかった。 元々それについては適当な所がある。 今はとにかく生き延びるのが肝心…… 「それに、それにまりさとはいちどあいしあったなかなのぜ!? あんなにあつくもとめあったのに!!ころすなんてどうかしてるのぜ!! まだまりさのことがすきなら、どうかまりさをみのがして――――」 ―――『黙れ』。 まりさは地雷を踏んだ。 哀れなり、まりさ。 *** 「………っ!!…っ……っっ!!!」 「~~~っっ!!?~~~~~!!!!」 身体が動かない。 加えて、口も動かなかった。 まりさ達の進退は、此処に窮まった。 目の前には紅い眼がある。 大きく見開かれ、爛々と光を放つ大きな瞳が。 そしてその瞳を貼り付けた顔は、 狂ったかのように、歪みきった笑いが浮かんでいる。 口の端は裂けんばかりに開かれていた。 重なり合った歯の間からは、軋むような音が漏れている。 瞳はそれぞれ、右目がまりさを、左目がれいむを捉えていた。 痙攣が起きたかのように身を震わせ、その度に喉の奥から詰まったような声が聞こえる。 最初とは、否、先程までとすらまるで違う。 これに比べるなら、まだ子ゆっくり達を殺していた時の方が理性がある。 獣の笑みだった。 狂人の笑みだった。 れいむ、まりさから、一切の反抗を奪い取るような貌であった。 同時に、れいむとまりさも狂った。 恐怖が心を押し潰した。 狂気が精神を蝕んだ。 紅い瞳が、その狂を写したのだ。 錯乱する餡子の脳は、もとより少ない策やら何やら――あるいは全てを吹き飛ばす。 ―――『裏返れ』。 「っっ!!?」 「~~~っ゛っ!!!?」 途端、まりさ達の口が開く。 上顎と下顎が同極の電磁石でも取り付けられたかのように、凄まじい勢いで離れていく。 もとより大きいゆっくりの口が、それだけでは満足できないとばかりに、大きく開いていく。 そんな二匹を見て、またも哂う者がひとり。 最早誰にも隠す必要はないとばかりに。 始めはゲラゲラと笑い出した。 すぐさまそれよりもけたたましく笑い出した。 そして次には、更に搾り出すかのように笑い出した。 まりさ達の口の端が裂けた。 それでも身体は、口を開くことをやめない。 既にれいむとまりさの体勢は、海老反りのようになってきている。 止まらない。 まさしくれいむとまりさは、『裏返ろう』としている。 腹を抱えて嘲笑する声が聞こえる。 指を指して嘲弄する声が聞こえる。 身を捩じらせて侮蔑する声が聞こえる。 身体を引き攣らせ、腹の奥から吐き出される怪笑が聞こえてくる。 「っ゛っ゛っ゛!!!!っっ゛っっっ゛!!!!」 「~~っっ゛っ゛っ!!!?っ゛っ゛っ゛っ~~~~!!!」 凄まじく耳障りだった。 気が狂いそうだった。 死にそうだった。 一刻も早く黙らせたかった。 殺してでも止めたかった。 でも、できない。 まりさ達はそれができない。 両顎の成す角度は180度を越えた。 口内が外に張り出し、まりさ達の皮が内側に納められようとしている。 声が響き渡っている。 誰かを嗤う、忌々しい声が響き渡っている。 心底可笑しそうに、心底馬鹿にした、悪意を結晶させた声。 滑稽な死に様を晒すまりさ達を嘲笑う、真っ黒い笑み。 口が開く、否、『閉じる』。 内を外とし、外を内としてまりさ達は閉じていく。 身体の内側を引っ張り出され、そして外側を折りたたまれていく苦痛はどれ程のものか。 内臓を引きずり出されるのに似ているのだろうか。 最後の瞬間に、まりさはふとそんな感慨を覚えた。 そしてやがて、口は閉じた。 其処にあるのは奇妙なオブジェ、が2つ。 一見するなら、60センチ大のおはぎ、といった所だろうか。 時折びくりと震えるのは、それが何の成れの果てかを物語っている。 放っといてもそのうち果てるだろう。 狂笑は続いていた。 ゲラゲラと、耳障りに。 誰であろうと不愉快にさせるその笑い声が。 まるで、早く死ね、とでも言うかの如く。 おはぎ二つの命が潰えると同時に、 その笑い声はぴたりと止んだ。 *** 時間は進み、夕刻。 うどんげはひとり、膝を抱えていた。 目の前には割れたガラス窓。 段ボールとガムテープで一応は塞いだものの、それでガラスが直る筈も無い。 お兄さんは言った。 「良い子で留守番しろ」と。 これの何処が良い子なのだ。 取り繕ったが、部屋にも荒らされた跡が残っている。 そもそも、家に入られる前に何とか出来れば良かったのに。 勝手に腰を抜かしていた結果がこれだ。 飼いゆっくりは家を守る役目も持ち合わせている。 今回の事は、それの最低基準にすら満たない。 番ゆっくりとしては失格としか言えなかった。 野良ゆっくりに、お兄さんの大切な家を荒らされたのだ。 自分なんかより何十倍も価値のある、この家を。 きっとものすごく怒られるだろう。 もしかしたら、愛想を尽かされてしまうかもしれない。 夕日が沈んでいく。 夜が降りてくる。 ネガティブな事ばかりを思い出し、それによって更に悲惨な想像を膨らませていく。 うどんげは、思考の悪循環に陥っていた。 ―――嫌。 怒られるのは、当然の事として受け止められる。 どんな罰でも受ける覚悟があった。 それでも、お兄さんに見捨てられるのだけは耐えられない。 それだけが怖くて、うどんげは一層膝を強く抱きしめる。 自然に涙が出てきた。 袖で拭うが、それでも出てくる。 目の周りをごしごしと擦った。 ぼんやりと熱い。 それでも涙は止まらない。 ―――ごめんなさい。 早く帰ってきて欲しい。 帰ってきて、それで泣いている自分を慰めて欲しい。 ―――ごめんなさい。 早く帰ってきて欲しい。 どんなに怒られても我慢できるから、自分を叱りにきて欲しい。 ―――ごめんなさい。 出来れば会いたくない。 捨てられてしまうかもしれない。 見捨てられてしまうかもしれない。 それがうどんげにとって、何よりも恐ろしいことだ。 ―――ごめんんさい、ごめんなさい、ごめんなさい。 今この場に居ないお兄さんに向けて、必死に謝罪を繰り返すうどんげ。 謝れば謝るだけ涙が溢れてくる。 寂しかった。 ひとりは嫌だった。 元々赤い眼を更に真っ赤にしながら、うどんげはお兄さんを待ちわびる。 段ボールの隙間から吹く風が冷たかった。 *** 「うどんげ、よくも俺の家をめちゃくちゃにしてくれたな。 お前はもう要らない。捨てる」 ―――嫌! 「離れろ、くっつくな、鬱陶しい。 邪魔なんだよ、捨てたのに付いてくるな」 ―――捨てないで! 「何だお前、その目は? 役立たずの分際で、一人前に俺に意見するだと? 調子に乗るのも大概にしろよ」 ―――ごめんなさい、謝りますから! 「もうお前は用済みなの、要らない子なの。 俺は代わりにこの※※※と暮らすから。それじゃ―――」 ―――嫌、嫌、嫌っ!!! と、いう夢を見て、うどんげは飛び起きた。 いつの間にか寝てしまってらしい。 うどんげは家を出た。 お兄さんを探しに行くのだ。 時間は既に夜で、辺りは暗いが関係ない。 とにかく寂しかった。何でも良いから、お兄さんと出会いたかった。 ひたすらに、暗い夜道を走る。 行き先は決まっていた。 お兄さんが毎日の通勤に使う駅、其処に行くのだ。 一刻も早く会いたかった。それ以外の事は考えていない。 ただ走った。 脇目も振らずに走った。 息が切れようがどうなろうがお構い無しだった。 そうして、 走って、 走って、 走って、 転んだ。 なんて事の無い石ころだった。 普段なら、絶対に躓いたりはしない。 それはつまり、うどんげが現在どれだけ取り乱しているかという事なのだが。 生憎ながらうどんげ自身はその事に気付かなかった。 冷たい地面に倒れこんでいる。 じんわりと冷気が、身体に染み込む。 何故かまたも涙が溢れてきた。 うどんげは、蹲りながら泣き始める。 ―――嫌だよ、寂しいよ。 先程の事は夢だと、うどんげも分かっている。 だからと言って不安を消せるかと言えば、そうではない。 むしろ逆だ。 夢という不確かなものでも、お兄さんからはっきり「要らない」と言われてしまったのだ。 それだけでうどんげの胸の奥がきりきりと痛む。 ―――会いたい、会いたいよ。 夜になってもお兄さんが帰ってきていないという事も、うどんげの不安を煽っていた。 いつもはもっと早く、お兄さんは帰ってきてくれた。 だというのに今日は妙に遅い。 うどんげにとって、それは見捨てられたのではないかという恐怖に直結していた。 ―――お兄さん、お兄さん、おにいさん!! いくら呼んでも彼は来ない。 そんな事はうどんげ自身が一番良く分かっている。 でもそうしなければ耐えられなかった。 ただ蹲って、ただ震えて、お兄さんを呼ぶ。 無知蒙昧というべきだろうか。 それとも真摯というべきだろうか。 どちらにしても、あまり賢い行動ではないと言える。 でも、だけど。 「…………うどんげ?何やってんの、そんな所で?」 この世にご都合主義というものは存在し。 それは今のような場面で使われるものなのだ。 *** 「うどん……ぐォッ!?ナイスタックルっ!?」 家路に就いている途中、驚くべき事があった。 いつもの見慣れた帰り道。 そこにうどんげが寝ていて、声をかけたら頭から突っ込んできたのだ。 何がなんだか分からない。 「……っ!!………!!!」 「お、おいィ?どうした?」 なにやら顔をうずめてわんわんと泣いているうどんげ。 寂しかったのだろうか? それにしても様子がちょっとおかしい。 一体何かあったのだろうか。 「………っ、………!!」 「……成る程、さっぱり分からん」 ゆっくりうどんげ種は、めーりん種と同様に人語が喋れないゆっくりだ。 つまり何を伝えたいのかチンプンカンプン。 いつもならある程度の機微は伝わるが、今のうどんげは錯乱気味でそれも無理だった。 とりあえず。 「落ち着け、れいせん」 「………!」 ぎゅっ、とうどんげ…もとい、れいせんを抱きしめる。 仄かな温かみが伝わってくる。 れいせんも、くたり、と身の力を抜いて俺に身体を預けてきた。 抱き締めたまま頭を撫でる。 相変わらずれいせんの髪の毛は、手触りが良い。 「………落ち着いたか、れいせん?」 「……っ」 こくん、と首を縦に振るれいせん。 そのままれいせんを抱き上げ、歩き始める。 れいせんの身体は、相変わらず軽かった。 とりあえず、何事かが起こっていたのは間違いなさそうだった。 臆病者のれいせんが、夜にこんな場所をうろつく事なんて普段は有り得ない。 あるいは家に泥棒でも入ったか。 そしてれいせんは助けを求めるべく、俺のもとまで走ってきた、なんてことも考え得る。 まぁ、なんにしても。 「とりあえず。 れいせん、ただいま」 「………っ!」 目の前のれいせんさえ無事ならば、御の字だ。 他の家具とかはまた買い戻せば良い。 だけどこいつは、一度失えば二度と戻る事はない。 そういう意味で、れいせんは唯一無二の存在だ。 他の何よりも大事な、俺の家族だ。 「ほらどうした、挨拶はしないのか?れいせん」 くりくりとれいせんの頬を突っつく。 嬉しそうに、くすぐったそうに身を捩るれいせん。 それから、俺の目をじっと見つめて。 ようやくれいせんは笑顔になってくれた。 やっぱりこいつには、笑う顔が良く似合うと思った。 「な………何じゃこりゃァッ!!?」 帰ってきてみたら家の中が微妙に荒らされ、そして和室の窓がぶち割れているのを発見。 うどんげがビャービャー泣きながら説明してくれた所、どうやら野良ゆっくりの襲撃があったらしい。 庭に転がってる二つの巨大泥饅頭とか、ゴミ箱の中に納まっている子ゆっくりっぽい何かがその証拠だった。 正直、猟奇的だった。 ちょっとうどんげと付き合い方を考えた方が良いかもしれない。 (おわり) * * * * * 疲れた。 正直30キロバイト以上のもの書くと構成とかオチとかグダグダになる。 おまけに話の骨子もよく考えんで前半上げちゃったから色々大変でした。主に前編の二倍近い文量とか。 前編の「多分あとで消す」ってのは単純に後編が書けなかったから。 皆様のコメントのお陰で書ききることが出来ました、ありがとうございます。 モチベーションって大切だね。 このお話は「こんくらいのサイコパスのほうが可愛いよね」をコンセプトにしています。 あと、前編中に一回でも「まりさ羨ましい」とか思った奴、屋上に来ようか。釣りだよ。すっきりとかさせる訳無いだろ。 byテンタクルあき 挿絵 byおまんじゅうあき おまけ 今回の話には出ていなかったが、俺は他のゆっくりとも住んでいる。 何?なんで今回は居なかったかって?こまけぇこたぁ(ry 家を二軒所有してて、片方にうどんげしか居なかった、とでも考えて下さい。 「おいィ?おにいさんのおうごんのてつのかたまりでできたおうちをきずつけるなんて、 いったいどういうつもりなんですわ?お? さっさとおにいさんにあやまったほうがほんのうてきにちょうじゅたいぷ、はやくあやまッテ!」 「えっとね、うつほもしってるよ! のらゆっくりにおうちをあらされるのはだめだって、おりんもいってた!」 「………(プルプル」 天地魔闘コンビ(てんこ、うつほ)がヒゲダンスしながらうどんげの周りをぐるぐる回っていた。 どうやらうどんげの警備に対して物申したいらしい。うつほは知らんが。 可哀想なことに、うどんげは顔まで真っ赤にして震えていた。 図星なだけに何も言い返せないようだ。 と、ここでうどんげの能力を紹介しておこう。 後になって判明したことだが、ゆっくりうどんげ種は一種の催眠術を扱えるらしい。 なんでも、狂気がどうとか、分かりやすく言えばギ○スだ。 ある程度抵抗できる者も居るが、それは大抵捕食者よりの上位種、との話。 ちなみに人間にもある程度使用可能。 一種の興奮状態にすることが可能だとか。 「…………(キッ!」 「ぐっ、ぐおおおぉぉ?て、てんこの、てんこのからだがかってにっ!? どうなってるのこれー!?あたまがおかしくなってしぬのー!?」 「うにゅー、あれ?からだがかってに……」 天地魔闘コンビはゲイナーダンスを踊り始めた。 今日も相変わらず平和である。 挿絵 byおまんじゅうあき テンタクルあきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 最後…w -- 2020-07-30 21 55 56 かわいい -- 2020-07-12 08 18 09 鈴仙-優曇華院-因幡。 やっぱカッコ可愛い -- 2020-03-10 20 45 13 うどんげ飼いたい -- 2017-09-20 18 19 28 UNオーエン -- 2016-07-21 13 22 09 もっと苦しめれば良いのに笑笑 裏返す前に非ゆっくりになるくらい( ・∇・)←リアル俺 -- 2016-03-01 14 37 41 てんことうつほとついでにお兄さんがクズすぎる 家よりもうどんげの心配をしろ -- 2015-12-18 18 43 36 可愛い。こんくらいのほうが…なんて。 最後で笑いました。 -- 2015-10-04 02 18 19 優曇華かわいいい!!! -- 2015-08-24 21 32 00 笑ったwwww -- 2015-08-19 16 41 31 フッwwザマァwwwwwwwwwwwwwwwwwうどんげに近づくから。うどんげよくやったよ。臆病者じゃない。裏返れとかかっけェ。 -- 2014-11-29 00 14 12 うどんげちゃん、かわええw -- 2014-05-11 17 17 35 れいせん/// かわええ(´∀`)оれーせん!れーせん! -- 2014-03-02 23 46 43 うどんげもといれいせんかわいい 野良ゆどもマジざまぁwww -- 2013-07-16 15 42 45 うどんげかわいいかっこいいっ! -- 2013-06-15 20 37 50 ↓×5「ざまぁ」だと・・・? -- 2013-05-12 22 11 35 裏返れ超かっけえ -- 2013-05-10 21 23 58 うどんげかわいい。 -- 2013-05-02 18 10 02 まりさーーーーーーーしねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇけぇぇ -- 2013-04-14 05 44 39 うどんげの能力見てたら少し怖いよ。ゆっくりに生まれず良かった。 -- 2012-12-08 15 56 40
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『ドスれいむを撃てPART1』 24KB 同族殺し 共食い 群れ ドスまりさ 自然界 現代 独自設定 とりあえず顔見せから ドスまりさはしばしば出現するが、ドスれいむは珍しい存在だった。 珍しいからといって必ずしも価値があるというわけではないのだが。 あるゆっくり里があった。その里はドスれいむによって治められていた。 いや、治められているというのは正しくない。ドスは群れ長らしいことを何もしなかったからだ。 ドスは下位のゆっくりたちに一方的に食料などを要求するだけだった。 野盗が居座ってるようなものだった。 いや、もっと酷いかもしれない。 このドスは嗜虐的な性向があり、頻繁に群れゆっくりたちを制裁という名目で虐待した。 またかんしゃく持ちなためか、些細なことでも侮辱と受け取り、八つ当たり的な苛烈な制裁を行った。 当然、ゆっくりたちも黙ってはいない。この暴君ドスをなんとか取り除こうと様々な反逆計画を企てた。 真っ向勝負では端から勝負にならないので、まず最初に考えられたのは毒殺であった。 ゆっくりは辛いものが苦手で、時には死に至ることもあり、それはドスにも当てはまった。 だがこのドスは毒について詳しいのか(あるいは側近が入れ知恵するのか)いかなる毒も見破ってしまった。 そのたびに苛烈な報復で応えられた。備蓄した食糧、財産の没収、飾りの剥奪、目の前で子供を処刑する、などなど。 自力でのドス排除は不可能と悟ったゆっくりたちは、他者の力に頼るしかなかった。 あるとき、たまたまドスまりさが里の側を通りがかったことがあった。 しかも、このドスまりさはまだ自分の群れを持っていない放浪のドスだった。 偶然このドスまりさと出会うことのできたゆっくりたちは自分たちの窮状を訴え、ゲスドスれいむを廃して、新しい群れ長になってほしいと頼み込んだ。 見事訴えを聞き入れてくれたドスまりさは、ドスれいむと対決してくれることになった。 二体のドス対決は長時間に及んだ。 とても長い話し合いをしたのだ。 ドスれいむは最初から戦う姿勢を見せなかった。それどころかドスまりさを熱烈に歓迎したのだ。 下にも置かない褒めちぎる態度に、ドスまりさはすっかり気をよくした。 それでも、群れゆっくりたちの訴えを忘れることはなく、ドスれいむを追求してはくれたが、 ドスれいむはなにも言い返さずに平謝りするばかりで、ドスまりさはすっかり毒気を抜かれてしまった。 その上に自分の里を差し出すとまで言い放った。なんなら自分は出て行ってもいいと。 群れゆっくりたちには(できれば報復の制裁も欲しかったが)望ましい展開であったが、今度はドスまりさの方が遠慮しだした。 自分にはまだ一体で群れを治めるほどの実力はないのでドスれいむに補佐してほしいと提案したのだ。 それでも、このドスまりさが里に居てくれるなら良かったのだが……。 二体のドスはすっかり打ち解け、盛大に飲み食いしながら懇々と話し合った。(もちろん食料は群れゆっくりもちである) そうして数日後に、ドスまりさは旅立った。自分の新たな群れを作り上げるために。 ドスれいむはこのドスまりさの属群れということになった。名目上は。 ドスれいむを従えたとすっかり信じ込んだドスまりさは、自分の力に自信を持ち、いくつもの里を連合させた大群れ長になるという野心を抱いたのだった。 群れゆっくりたちはドスまりさをなんとかして引きとめようと努力した。 だが、ドスまりさは自分の威容を信じきっており、ドスれいむはすっかり自分の忠実な部下になったと信じきっていた。 ゆっくりきっちり言い聞かせたからもう悪さはしない。なにかあったらドスが必ずゆっくり急いで駆けつける。 「あんなドススパークも吐けないドス、怖くもなんともないよ。全然大丈夫!」と言い残してゆっくりたちの必死の説得も虚しく去っていった。 ドスまりさはこの里に帰ってくることはなかった。 ゆっくりたちはドスれいむの卑屈さ、卑劣さ、狡猾さを大いに呪った。ドスまりさの単純さもついでに呪った。 無論のこと、ドスれいむの残虐な支配は終わらなかった。むしろますます酷くなっていった。 ドスれいむがあまりに暴食し、里ゆっくりたちの備蓄を食い尽くしてしまったため、ゆっくりたちは食料を集めに全精力を費やさなければならなかった。 そしてほどなく、通常は禁じられている手段を用いるしかなくなった。 つまり、人間の畑、である。 畑荒らしは見返りも大きいがそのリスクは多大なものだ。ゆえに普通の群れ長はゆっくりに畑荒らしを禁止させる。 だが、このドスは人間をまったく恐れていないようだった。人間の悪口を誰はばかることなく吐き出すこともあった。 ゆっくりを見下すプライドの高い人間が聞いたら脳の血管が破裂しそうな罵詈雑言もあった。 そのおかげで多くの群れゆっくりたちが捕まり、みせしめとして酷い拷問の果てに殺されていった。 だが、このことが後に反乱へのとっかかりともなった。 「ゆゆっ!そろそろゆっくりじゅんびがととのったとおもうよ!」 「ゆゆっ!きっとそうだね!」 「にんげんさんのところにいこう!」 「きっとなにかできることがあるはずだよ!」 五匹のゆっくりたちが里をこっそりと抜け出て、人間の下へと出発した。 五匹の内訳は、れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん……見飽きたほどの通常種たちだ。 これらのゆっくりたちは人間の畑で盗みを働いているところを捕まり、危うく殺されかけたのだが、たまたまその人間が話しを聞いてくれたのだ。 人間はドスれいむの話に興味を持ってくれた。 話ていく内に、最近増加した畑荒らしはこのドスが一因となっているのではないかと、人間は推測した。 また、このドスは協定を結んでいないようだった。人里の近くに群れを構えて協定を結ばないドスは珍しい。 珍しいといっても価値があるわけではない。むしろ確実にゲスとみなしてよかった。 ゲスドスの存在は人間にとっても脅威である。人間は、他の村人とも話し合って、ドスれいむ対策を講じてくれると約束してくれたのだ。 このゆっくりたちが人里へ出かけていったのは、道案内などを買って出るためだった。 また、人間側に自分たちの存在を示し、ゲスでないことをアピールしたほうが後で都合がいいと計算したのだ。ゆっくりとしてはがんばって。 「あのゲスドスをやつざきにしてほしいね!」 「うんうんをたべさせてほしいね!」 「フルボッコにしてほしいね!」 「はげまんじゅうにしてほしいね!」 「らくにはころさないで、ゆっくりくるしめてほしいね!」 「ゲスドスがしんだあとはたくさんのろってゆっくりじごくにおとそうね!」 五匹のゆっくりたちは迫りくる制裁を期待して自然と笑顔になり、明るい口調でドスれいむの来るべき苦痛を語り合った。 長いこと抑圧されていたゆっくりたちにようやく解放の時が訪れようとしていたのだ。 都合が良いことに畑では人間が働いていた。たぶん、話し合った人間だ。ゆっくりには区別がつかないけれども。 なにやら細長いものを上下に振り下ろしたり、持ち上げたりしている。人間さんのやることはゆっくりにはよくわからないが、きっとドスれいむ制裁に関係しているのだろう。 一心不乱に作業していてこちらに気がつかないようなので、ゆっくりたちから話しかけることにした。 「にんげんさん! ゆっくりたすけにきたよ!」 「いっしょにゲスドスをゆっくりせいさいしようね!」 「なんだおまえらは!」 人間は弾かれたように顔を上げ、鋭く問うた。あまり友好的な口調ではないが、きっと驚かせてしまったせいだろう。 「てめえら畑荒らしに来たのか!?あ、今はなにもないか……じゃあなんだ?」 人間は反乱画策ゆっくりたちを畑荒らしと間違えたようだった。 「ゆゆっ!にんげんさんれいむたちだよ!ゆっくりおもいだしてね!」 「どのれいむだよ。ゆっくりの顔なんざ区別つくかっつーの」 「ゲスドスをやっつけてってたのんだゆっくりだよ!ゆっくりわかるよ!」 「ゲスドス?」 人間は怪訝な顔をした。ドスれいむのことを忘れてしまったとでもいうのだろうか? そんなはずはない。脅威となるものを放置しておく愚かな人間ではないはずだ。 「ドスれいむだよ! ゆっくりおもいだしてね!」 「れいむにドスなんか……ああ、いたな。あれか……。でなんだって?」 「すごいゲスなドスなんだよ! ゆっくりせいさいしてね!」 「制裁……? ああ、そんな話もあったな……」 「どうしたのにんげんさん? にんげんさんたちとはなしあってきょうりょくして、ドスをやっつけるんでしょ! ゆっくりはやくいこうよ! れいむたちがみちあんないするよ!」 「はやくいこうぜ! むれでいちばんつよいまりさもきょうりょくするんだぜ!」 「ああ、まあな……そのうちな……」 意気の上がるゆっくりたちとは対象的に人間の方は気乗りしない様子だった。 「ゆゆっ! もうたくさんまってまちくたびれたよ!」 「もうごはんがほとんどないのよ。みんなうえじにしてしまうわ」 「とかいではなにごともゆっくりじんそくにするんでしょ? ありすしってるわ!」 「はやくドスをせいさいしてほしいんだぜ!」 「っるっせーなぁ!」 ゆんゆんわめくゆっくりたちに、人間の怒号が叩きつけられた。 黙り込むゆっくりたち。 「なんだてめえらは! ドスだかジャギィだが知らんがさっきから黙って聞いてりゃいい気になりやがって! おまえら俺に催促してんのか? ああん!? 人間であるこの俺にゆっくりごときがなに急かしくれてんだよ!」 「ゆゆっ……だ、だって……」 「ゲスなドスはにんげんさんにもきょーいなのぜろ? はやくやっつけたほうがいいんだぜ!」 「なんだそりゃ、ドスが脅威だと? つまり俺を脅してんのか? おまえらの言うこと聞かないときょわいきょわいどしゅが襲ってくるって言ってんのか?」 「そ、そんなこといってないよ! ただにんげんさんのためをおもって……」 「ゆっくりごときに気遣われてんのか俺は! あーあ! これを死んだ親父が知ったらなんていうか! ゆっくりも出世したもんだな!」 「ゆぅ……」 なぜだが人間は不機嫌なようだった。 この人間はそもそもゆっくりがかなり嫌いだった。だからこそ脈があったとも言えるのだが。 前に話したときにはドスれいむ退治にとても乗り気だったのだ。ゲスドスへの憤怒に煮えたぎり、明日にでも、できるなら即日殴りこみをかけんばかりの勢いだった。 だが、今日はドスれいむ征伐への意気込みはどこへやら、下位のゆっくりたちにストレスをぶちまけるだけだ。 「むきゅ、もしかしてにんげんさんたちのはなしあいがうまくいかなかったの?」 無能な通常種ゆっくりにしては知恵が回るぱちゅりーはふと思いついた疑念を口に出した。 「はっ? なにいってんだおまえは? 俺が会議で他の人間に凹まされたからイラがきてるんですかーとでも言いたいわけか? 今日のおゆっくりは随分とお知恵がお回りになりますこと! わざわざ収穫後の畑にまで人間をコケにしに来るとは俺は種のオデッセイを目の当たりにしてるのか!?」 「そんなこといってないってば! どうしてわかってくれないの!」 ぱちゅはぐずぐずと泣き始めた。 「ただぱちゅは……ただはなしあいがどうなったかききたかっただけなのに……」 だが聞き方が悪かったかもしれないね。 「あーもーうぜーなー。会議はした! スムーズに運んだ! ゆっくりごときが気を回すことはなにもない! 以上解散!」 会議がスムーズに運んだと聞いてゆっくりたちは喜び勇んだ。やっぱり人間さんは忘れていなかったんだ。人間さんは頼りになる。 「ドスれいむをたいじしてくれんだね! ゆっくりよかったよ!」 「いつたいじしてくるの! きょう? あした? あさって?」 「なるべくはやいほうがいいよ! ゆっくりはやくしていってね!」 「ああ、そのうちにな……」 人間は耕地作業に戻った。その所作はゆっくりたちの目から見てもゆっくりとしていて、今すぐドス退治に出かけるといった雰囲気はない。 「ねえいつ? いつなの? ゆっくりおしえてね!」 「みちあんないとかのじゅんびはいつでもできているんだぜ! ひにちをおしえてほしんだぜ!」 「うるせーな! だからそのうちだって言ってんだろが! 畑を耕し終わって、フレが三人集まってからだよ! ったくゆっくりどもは本当に人の話を聞かねーな!」 「そのうちっていつなの! ゆっくりわからないよ!」 「いじわるしないでおしえてね! ありすたちにもいろいろなじゅんびがあるのよ!」 「てめえらの事情なんざ知ったことか! 道案内もいらん! 決行日時は未定だ! わかったらとっとと失せろ! おまえらのツラを見ただけで吐き気が込み上げてくるんだよゲロ袋ども!」 まるで取り付く島がない。 未定という言葉はゆっくりたちの不安を誘った。それに、ゆっくりの協力はいらないという態度も不穏なものを感じる。 「むきゅ……もしかしてにんげんさんぱちゅたちもいっしょに……ドスといっしょにまとめてころすきなの?」 ぱちゅりーの口をついて出た疑惑にゆっくりたちが騒ぎ出す。具体的でなくともそれに近い不安は他のゆっくりにもあったのだ。 「ゆゆー! いやだよ! でいぶじにだぐないよー!」 「わ、わるいのはドスだけなんだぜ! まりさたちはにんげんさんにめいわくかけないんだぜ!」 「ねえおねがいきいて! わるいのはドスなの! ぜんぶドスのめいれいでやったことなの!」 「わからないよー! わからないよー! わからないよー! わからないよー! わからないよー!」 「いい加減にしろ! 俺の仕事を妨害するのがそんなに楽しいか!? おまえたちを殺そうが殺すまいが俺たちの自由だろうが! あまり調子に乗るなよゲスゆっくりども……」 「ゆゆっ! ゆゆっ!」 「なんでおこるんだぜ! まりさたちわるくないっていってるのに!」 「きのことかさんさいとかもってきてあげるわ! ゆっくりきげんをなおしてね!」 ゲス認定を撤回しようとゆっくりたちは大慌てだ。 「いいか? おまえら俺たち人間を動かして自分が強くなったような勘違いをしてるようだが、おまえらには何の決定権もねえんだよ。俺らを急かす権利があるとでも思ってんのか? 人間は人間の意志で動く! やるべきときにやる! やりたいときにやる! ゆっくりが人間に従うことはあっても、人間がゆっくりに従うことはない! 俺らが上! おまえらが下! これが絶対不変の真理だ! だいたいてめえらゆっくりのお里の事情なんざ知ったことかよ! ごはんがなんだのゆん閣諸島がどうだのゆーゆー低脳みてえに喚きやがって! ああもう、てめえら自然の失敗作と会話するだけ無駄だ! おまえたちをわからせるにはこれしかないのを忘れていた!」 そういって人間は細長いもの(人間の言葉でクワという)を、振り上げ、ちぇんの上に振り下ろした。 ちぇんが選ばれたのは「わからないよ!」の連呼が一際うるさく、一向にやめる気配がなかったからだろう。 ちぇん種はゆっくりの中では比較的素直なのだがその分頭が悪い。 ぶちゅりと音を立てて、ちぇんは内容物を四散させた。勢いがよかったので、他の四匹にそれが降りかかった。 「ゆっ、ゆあああああああああああああああああああああああ!!!!」 「ごろざれるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」 「むぎゅううううううううううううううううううううう!!!!!」 「どがいばあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 まだ生きている四匹は一斉に逃げ去った。 一心不乱で逃げ続け、森の中に駆け込んだ。 人間は追ってこないようだった。ただ追い払いたかっただけらしい。 それだけのためでもゆっくりを殺すことを厭いはしなかったが。 「にんげんはまりさたちまでころすつもりなのぜ?」 「そもそも、ドスをせいさいしてくれるきはあるのかしら?」 あの人間は明らかにドスれいむ制裁に乗り気ではなかった。 前はとても熱心にドスに怒っていたのに。 「ぜったいへんだよ。ぱちゅりー、どういうことかわからないの?」 「むきゅ……もしかするとドスは『ねまわし』したのかも……」 「ねまわしってなんなのぜ?」 ゆっくりたちの言う根回しとは、裏協定のようなものだった。 ドスが人間たちと何かを約束することは通常の協定と同じだったが、 群れゆっくりたちとは無関係にドスと人間だけで結ばれることが違った。(それも通常の協定と同じといえば同じなのだが) つまりは、群れゆっくりに不利な内容の協定をこっそり結ぶことだと思えばいい。 ありていにいえば、群れゆっくりを人間に売り渡すということだ。 「ゆゆっー! でいぶだぢうられじゃうのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「がごうじょばいやだぜええええええええええええええ!!!!」 「むきゅ、でもあのゲスなドスれいむにねまわしができるかしら……」 あのドスは人間が聞いたら卒倒しかねない罵倒文句を並べていた。人間を侮っているのは間違いない。 そもそも、このドスは間接的にだが人間に被害を与えている。人間はそれを許すだろうか? なにか貢物をしているのかもしれないが、そうだとしても畑荒らしをされたなら即裏協定も破棄するはずだ。 畑荒らしをしない、させないことが表裏問わずあらゆる協定の最低条件だからだ。 群れゆっくりを人間に売り渡すというのはあのドスれいむがやりそうなことではあるが、いろいろ考え合わせて見るとあまり現実的ではない。 ……このようなことをゆっくりたちは餡子脳でがんばって考えて話し合って結論付けた。 そうなると人間の態度がますます不可解になるのだが。 とにかく群れに戻るしかなかった。あまり長い間群れを離れているとドスれいむのきまぐれな制裁の理由になるかもしれない。 四匹のゆっくりたちはゆっくり急いで里への道をたどっていった。 「ゆっくりおかえりなさい! れいむのちびちゃんたち!」 里に帰ってきた四匹を歓迎してくれたのはドスれいむだった。側には四六時中くっついてまわっている、側近ぱちゅりーが控えている。 二匹して里の境界付近でわざわざ待ち構えていたのだった。 「ド、ドス……ゆ、ゆっくりしていってね!」 ゆっくりたちは平静を装ってゆっくりのあいさつをしたが、声がうわずっていた。 こんなところで出会うとは思わなかったからだ。 「ちょ、ちょっとたべものをあつめるためにとおくへいっていたんで、です」 聞かれてもいない遠出の理由を語り出す者もいた。 「で、でもなかなかいいものがみつからなくて……ああ! しかもとちゅうでれみりゃにおわれて……」 収穫をなにも持ってないことの理由も付け足す。 「そうなんだ! れみりゃに追われてゆっくり大変だったね!」 (よかった、ばれてない……) ゆっくりたちはほっと胸(ないけど)をなでおろした。 「ところで人間さんとのお話しは楽しかった?」 ゆっくりたちはフリーズした。 「ドドドドド、ドス! あの! その!」 しどろもどろで言い訳さえ満足に出来ないゆっくりたちにドスは畳み掛けた。 「八つ裂きだっけ? ハゲ饅頭だっけ? なんだか楽しそうなお話をしてたねー! うんうんをどうするんだっけ? ドスも参加したかったなー!」 どうやら監視下にあったらしい。 四匹のゆっくりたちは側近ぱちゅりーを睨みつけた。 この側近は無表情なぱちゅりー種にしてもとりわけ表情に乏しく、口数も少ない不気味なゆっくりだった。 だがその冷酷さはドス自身にも匹敵するほどで、様々な拷問制裁法はこのぱちゅりーが考案したものも多いのだという。 いかなる酸鼻絵図を目の当たりにしても眉一つ動かさないのだ。 里ゆっくりの怨嗟の的となっていたが、よくよく考えてみれば今回はこのぱちゅりーが告げ口したわけではないのだろう。 ちぇん種かみょん種の素早く隠れ身に長けた種のスパイに尾行されていたと考えるのが妥当だ。ぱちゅりー種には不向きな芸当だった。 すべてバレている。人間の対ドス計画も筒抜けだろうか? となるとやはり根回しをしたのだろうか? 単にゲスゆえに人間を侮っている可能性もあるが。ともかくこの四匹の命運は風前の灯と言えた。 「そうだ、いっぱい働いたがんばりやさんのちびちゃんたちに、ドスからプレゼントがあるよ!」 ドスが合図すると群れのゆっくりたちが森の中から現れ、粛々となにかを運んできた。 「さあ美味しいあまあまをゆっくりたくさんどうぞ!」 「ゆあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」 「でいぶのぢびぢゃんがあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」 運ばれてきたのは四匹のゆっくりの子供たちであった。いずれも凄惨な虐待の末に殺されている。 ドスへの反逆を企んだ時点で、家族が巻き添えになることを覚悟してはいたが、いざその惨死体を目にすれば正気ではいられなくなる。 「たべないの? じゃあドスがもらっちゃおうかな! むーしゃーむーしゃーしあわせー!」 ドスれいむは四匹の目の前で子ゆっくりを口に運び、これ見よがしにゆっくりと丹念に咀嚼した。 「ゆっくりなし! このゆっくりなし!」 「ゆっくりじごくにおちろぉ!」 声の続く限り怨嗟を吐き出す。 「にんげんさんがやっつけてくれる! おまえをかならずやっつけてくれる!」 「人間さん? なんでドスが人間さんにやっつけられちゃうの? わからないよー!」 ドスはちぇん種の口真似をしておどけて見せた。どうやら真正のゲスらしい。となれば、反乱側にも目がある。 一矢報いることはできるかもしれなかった。 「おばかなドスなんだぜ! にんげんさんはとてもおこってるんだぜ! おまえのようなゲスがだいきらいなんだぜ!」 「せいぎはさいごにかつんだよ! にんげんさんにせいさいされて、じごくでれいむたちにゆっくりあやまりつづけてね!」 「ドスのせいでにんげんさんのはたけがあらされてるんですよ! きっとにんげんはほうふくしにきます! ……なにかにんげんさんのいかりをさけるほうほうがあるんですか?」 「あるよ」 「ゆぇぇぇぇぇ!」 ドスの何気ない一言にゆっくりたちは驚愕した。なにか切り札を持っているとでもいうのだろうか? そんなものがあったら、反乱ゆっくりたちのわずかな希望は断たれてしまうかもしれない。 「そ、それはどんな……」 ぱちゅりーは怒りよりも好奇心が先立ち、思わず問いただした。 「そんなの決まってるよ! ドスはこんなにかわいいんだよ! 人間さんがかわいいドスをいじめるはずないじゃない! かわいすぎちゃってめんごめんごだよ!」 ゆっくりたちは再びフリーズした。 怒るよりも後の勝利を確信するよりも、ただ呆れた。呆れ果てた。 こんな馬鹿なゲスのために自分たちは振り回され、家族を皆殺しにされたのだ。弱い通常種ゆっくりの身の上を嘆くばかりだ。 「ド、ドス、あなたももうおわりよ。にんげんさんがほんきになったんだから! かいぎしたんだから! にんげんさんはあなたにおこっているのよ! ぱちゅたちとおなじぐらいおこっているのよ!」 気を取り直したぱちゅりーが強気な言葉を吐きかける。ぱちゅりーは勝利を確信していた。自分はここで死ぬだろうが、必ず報いられるはずだ、と。 「え、ぱちゅりーたち怒ってるの?」 「おこっているにきまってるでしょ! ばかなの!? しぬの!?」 このドスは底抜けの馬鹿なのか。これだけの仕打ちをして何を言ってるのだろうか。ぱちゅりーは困惑した。 「まりさも怒ってるの?」 「そうだぜ! まりさも……あれ?」 「まりさ……?」 急にまりさの様子がおかしくなった。 さっきまで憎悪に表情を捻じ曲げていたのに、唐突にきょとんとした表情になっている。 「……ドス、ごめんなのぜ!」 そして唐突にドスに対して謝罪した! 「まりさぁ! な、なにいってるのよ! あなたちびちゃんをころされたのよ! あやまるのはドスのほうでしょおおおおおおおおお!」 ありすが絶望の嘆きをまりさに投げつける。このまりさはこの期に及んで寝返ろうというのか? 雑。 他に評価のしようがない。 (ありす、いいからここはまりさにちょうしあわせとくんだぜ……) 「は?」 まりさはますます意味のわからなくなることを耳打ちした。調子を合わせる? まさか、ドスに服従するふりをして騙そうというのか? このドスはかなりの愚かもののようだが、この作戦はあまりに酷すぎる。 いや、作戦にしてもおかしい。謝罪が唐突すぎるし、そもそもその調子がなんだかとても……軽いのだ。 軽いとしか言いようがない。ちょっとぶつかったのを謝ったような口調だ。表情にも真剣みがない。 まるで……なんだか面倒なことになったみたいだからとりあえず謝っとく、とでもいうような……。 絶望と怒りで頭がおかしくなったのだろうか? 「まりさ、別に謝ることなんてないよ? ちびちゃんたちはオツムがちっちゃいからときどき錯乱して変なことを言うこともあるからね。 ドスはそんなこといちいち気にしないよ! ねぇ、ちっちゃいれいむ?」 「ゆっ? そうだね! なんだかれいむたちちょっとへんなことをいったみたいだけど、ゆっくりきにしないでねドス!」 れいむまで奇妙なことを言い出した。台詞を噛んでしまったのをごまかすかのような照れ笑いを浮かべている。あんなに可愛がっていた子供を殺されたというのに! 「れいむ! あなたたちいったい……」 ぱちゅりーは衝撃に打たれて呆然となった。 ドスに凄惨な拷問の果てに殺されることは恐ろしかった、家族が殺された怒りもある、人間の制裁への血を吐くような切望もある。 だが、このどうしようもない絶望はそれらを打ち消すにあまりあった。 信頼していた同志がこうもたやすく変節するとは! それとも元からスパイだったとか? いや、それだったら子供を殺されるのはおかしい。 間違いなくこちら側のゆっくり“だった”はずだ。 「あれ、ありすったらなんだかはしたないことをしたみたいね。これじゃちっともとかいはじゃないわぁ」 「ありす!」 ありすはこの場に調子を合わせることに決めたのだろうか? いや違う! そのことを表情がなによりも雄弁に物語っていた。 れいむのようなはにかみに、まりさのつき物が落ちたような間抜け面をミックスしたような……怒りも悲しみも微塵もない表情だった。 「ちょ、ちょっとあなたたち! ちびちゃんたちをころされたのよ! わかってるの!? おしばいはやめて! さいごぐらい……ゆっくりらしく……」 ぱちゅりーはゆんゆんと泣き出してしまった。子供を殺されて平気なゆっくりはゆっくりじゃない。 こんな間抜けな演技でこの場を切り抜けるくらいなら誇り高い死を選ぶ……みんなも同じ思いだとぱちゅりーは信じていたのだ。 怒りはなかった。ただ悲しかった。単に正義が実行されず悪がまかりとおるだけではない、この無関心さが。 「ゆううううううううううう!!!!ゆうううううううううう!!!!」 「ぱちゅりー何を泣いているの?」 ドスは子供をあやすような口調でいけしゃあしゃあと問いかけた。その悪逆ぶりにぱちゅりーの怒りが再びこみあげてきた。 「ぱちゅりーゆっくり泣きやんでね! 『泣くことなんて何もないじゃない』」 このゲスドスッ! 泣くことならいくら……でも……? 「ゆ?」 ぱちゅりーは困惑した。 ないのだ。どこを探してもないのだ。 怒りと悲しみと絶望が。 まるで心にぽっかりと穴が開いたようだった。 いつの間にか涙が止まっていた。 「むきゅきゅ? ぱちゅったらなんで泣いてたんだろう? 『泣くことなんて何もないのに』」 「さあさ、気をとりなしてドスの用意したあまあまをゆっくり食べていってね!」 「いただきまーす!」 「むーしゃーむーしゃーしあわせー!」 「うめぇ! これめっちゃうめぇ!」 四匹のゆっくりたちは自分たちが体を痛めて産んだ子供たちの惨死体を貪り始めた。 苦しめられて殺されたゆっくりたちだったのでとても甘く美味しかった。 こんな美味しいものを食べさせてくれるドスは思ったより優しいなと四匹のゆっくりたちは思った。 「あ、そうだドス。さっきもいったけど、にんげんたちがドスをやっつけるけいかくをねってるみたいですよ」 ぱちゅりーは、珍しい形の雲を見つけたことを話すような口調でドスに告げた。どうでもいいことだけど一応伝えておこうかといった具合に。 「それは問題ないよ。人間さんだって忙しいもの。ドスなんかに関わってる暇があったら畑仕事をするよ。 大丈夫大丈夫。人間さんはドスのことをそれほど嫌っていないよ?」 「それならいいんです」 どのみち人間のことなどどうでもいいことだった。遠い遠い世界の出来事のように思えた。……まるで前世のように。 「さあさあ、余計なことには気を回す、今日は疲れたでしょうからゆっくり休んでいってね!」 「ゆはーい!」 たくさん食べた四匹のゆっくりたちは巣への帰り道を急いだ。 そうだゆっくり休まなくては。 明日からまた働かなくてはならない。自分たちのため、群れのため、ドスのために。 たくさんの食べ物を集めなくては。 厄介な子供たちがいなくなったのは幸いだ。これで集めなくてはならない食料が大分減る。 もともと今年は厳しかったのだ。おそらく子供たちは冬を越せなかったのだろう。 やはりドスは頼りになる。 「ぱちゅりー、今月に入って何回目?」 ドスれいむは側近のぱちゅりーに問うた。 「三回目です。ドス」 側近ぱちゅりーは機械的に答えた。 「まだ三回目? 随分少ないね! この里のやつらはゆん骨精神が足りないんじゃないの? ゆっくりに骨はないけどね!」 「どうします? そろそろ破棄して次に移りますか?」 「そうだねぇ……、最後に人間のところへ一斉突撃でもさせて……その前にもう少し楽しもうかな! なにかいいアイディアない?」 「群れを二つにわけて争わせてみてはいかがでしょうか?」 飽くまでも側近ぱちゅりーは無感情に答える。 「なるほど。精鋭を厳選した方が突撃も見ものになるだろうしね。それで行こうかな」 「ルールは相手の子供を多く殺した方が勝ちということで」 「いいね! それを聞くとなんだかお腹がすいてきたよ!」 ドスれいむはとっておいた反乱ちぇんの子ゆっくりの死体をかじった。 続く
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『死を覚悟したにとり 下』 28KB 制裁 差別・格差 同族殺し 番い 群れ 希少種 現代 7. それから数日経った。 山小屋建築の件は滞りなく進む。上司に建築予定地についての報告をまとめ、了承を得た後、資材発注や委託業者の選定。 似たような作業は過去に何度もやって来た事だし、問題など起きない。 ただ、にとりとひなのことが気にかかった。 俺はゆっくり愛好家ではないから、にとりとひなの境遇にどうこうしてやる気はない。にとりとひなが殺されたとしても、 悲しむことはないだろう。だが、目前にある死の危険を、笑って受け入れる生き方に、納得の出来ないとっかかりを感じた。 なるべく考えないようにしたいと思っているが、そうはいかなかった。山小屋建設において、 ぱちゅりーの群れのゆっくりどもをどう諌めるかの問題に対して、未だ対抗策を決めていないからだ。 長のぱちゅりーの顔を思い出すと、どうもにとりとひなの事が気にかかり、鬱になってしまう。 ちなみに、一応最寄の加工所に連絡して、野生ゆっくりの大量引取りについて話をしてみた。すると、 場所と時間の指定があれば、即日で引き取りに来てくれるとのことだった。ただ、捕獲作業まで依頼するとなると、 安くない金額がかかる様なので、捕獲作業は事務所の職員が自ら行おうということになり、 近々に双葉山で山狩りを行うことになるかも知れないと、周りの職員に声掛けをしておいた。 『はあ・・・』 『なんですか、浮かない顔してますね』 『ああ、そんなことないよ。双葉山の山小屋建築の件も、一段落したしね』 『知ってますよ、そこに住み着いてるゆっくりたちの駆除もするんでしょ』 『いや、面倒だし、しないに越した事ないだけどね』 『なんだ、つまんない。是非やりましょうよ』 『あのなあ、下手すれば、双葉山全部のゆっくりを駆除することになるかもしれないだぞ。そしたらとんでもない労力になる』 『え、それは、やだなあ』 『ま、始めの内はお菓子をばら撒いてご機嫌取りをしつつ、それでも揉めるようだったら・・・』 後輩達は、ゆっくり狩りに積極的だった。用があって山に行けば、連中は邪魔はしないまでも罵声を浴びせてくるので、 ゆっくりに良い印象を持っているものはいない。ゆっくりの駆除に賛成なのも、当然な話だ。 俺だって、今後もぱちゅりーの群れのゆっくりどもの相手をしなくてはならないことを考えると、いっその事駆除してやりたい、 そう考えてしまうわけだが・・・。 そして、今日は金曜日。 山小屋建築の計画は実行段階まできた。来週末には業者の人間も双葉山に向かい、資材や重機も入ることになるだろう。 業務を終え、皆土日の休みに胸を躍らしながら、帰路についていく。 俺も、来週の作業予定を確認した後、事務所を出て、自宅に向かって車を走らせていた。 だが、俺の頭の中には、にとりとひなの事が巡っていた。 あいつら、まだ生きているかな・・・ ぱちゅりーの群れと、和解できていないかな・・・ 子ゆっくりたちは、どうしているかな・・・ 自宅に戻り、着替えた後でも、妻と向かい合って座り、夕食を摂っているときも、なかなか頭から離れなかった。 『ねえあなた・・・なんか元気がないわね。お仕事で何かありました?』 『ん・・・』 妻にその様子を感づかれたか。 まあ、仕事の話でも無いし、話してみるか。 『仕事とはちょっと違うけどね。双葉山に、珍しいゆっくりが住んでてね・・・』 俺は、にとりとひなの事、ぱちゅりーの群れとの確執の事を話した。 『え、それって・・・ひどいじゃない。群れに入るか出て行かないと、殺すって言ったの?』 『縄張りの中に住んでるからな』 『放って置けばいいじゃない。誘拐未遂だっけ、それだって放って置いてあげれば、起きなかったんでしょう』 『なんていうか・・・この家の使っていない部屋に、突然知らない人間が住み着いて生活を始めた・・・様なものだよ。 極端な言い方に聞こえるだろうけど、ゆっくりの縄張り意識って、そんなものだ』 知らないけど、多分。 でも確かに、ぱちゅりーが、にとりとひなを出て行かせようとした理由ははっきり分かっていないな。 縄張り意識が原因だったら、幹部のれいむが来た時点で、黙認されることもなかっただろう。いくら権限がないとは言え、 幹部の名において、立ち退きか群れの傘下に収まるかの宣告ぐらいはするはずだ。 正直俺も、長のぱちゅりーの立退き勧告、まりさの誘拐未遂の話を聞いたとき、展開の速さに驚いた。 群れに何があったのだろうか。 『ねえ、だったら、そのにとりちゃんとひなちゃん、うちで飼ってあげたら』 『え、飼う』 『希少種って言うんでしょう、にとりちゃんとひなちゃん。野生ゆっくりでも、ゲス化しにくくて飼いやすいって聞いたし』 そうか、逃げ場が無いなら、俺が保護してやればいい。 そういえば俺、飼いゆっくりにならないかって、声をかけたことあったな。にとりも、悪い返事はしなかった。 珍しいゆっくりを飼うのは、俺も悪い気はしないし。 『いいか?』 『ええ、もちろん』 『わかった』 俺は笑顔で返事をした。久しぶりに心から笑えた気がした。 明日、ゆっくりを迎えにいこう。休日に私服で山に行くのはあまり良くないんだが・・・まあいいだろう。 その夜は妻と、名前は何にしましょうか、いや名前は「にとり」と「ひな」だ、などとちょっとずれた会話をしながら、 寝についた。 そして次の日。 俺はインターネットでゆっくりの飼い方について検索し、該当ページをプリントアウトしておいた。 双葉山の途中にペットショップがあるから、必要なものもそこで買おうと思ったのだ。 午前中に家を出て、車に乗り込む。しかし、俺は、 『・・・』 変な焦燥感に襲われていた。 車の速度が普段より遅い気がして、何度も最高速度をオーバーしかけた。信号の停止時間が普段の3倍に感じた。 ペットショップに寄って、水槽とゆっくりフードを買おうとしたが、素通りしてしまった。 『帰りに買おう、帰りに・・・にとりとひなに選ばせて・・・』 そんなことを言い訳のように呟きつつ、自分自身が急いでいる理由を落ち着いて頭の中で反復した。 殺される。 にとりとひなが、ぱちゅりーどもに殺される。 そう、昨夜は、にとりとひなを救う手立てを見つけたことに舞い上がり、あいつらが今どういう状況にあるかを忘れていた。 ぱちゅりーの群れとの戦端が開かれてから、もう何日か過ぎている。 ひょっとしたら、あの家族は、もう潰されて居ないかもしれないのだ。 『くそっ・・・』 そして双葉山についた。 車を停車させるまでは意識して落ち着いていたが、車を降りてからは全力疾走だった。 双葉山への扉をくぐると、すぐに道をそれ、にとりとひなの住処に向かって駆ける。 大分踏み慣らされた草地を抜け、そこに辿り着いた。 そこは、にとりと、ひなが住処にしていた小川。 普段なら、にとりとひなの番とその子ゆっくりたちが、しあわせな生活を送っているはずなのに。 俺の目前に現れたのは、傷ついたにとり、気絶しているひな、潰されたまりさの死骸が4つ、そして潰されたにとりとひなの子ゆっくり。 「やあ、めいゆう・・・やられたよ」 8. ぱんぱんと、手についた土を払った。 俺の目の前にあるのは子にとりと子ひなの墓。 憔悴しているにとりとひなの替わりに、土に埋めてやった。 因みに、襲撃してきたまりさの死骸は、住処から少し離れた所に穴を掘り、無縁塚のように放り込んだ。 『おちびちゃんのお墓、出来たぞ』 「・・・ゆ・・・ありがとう、めいゆう」 悲しかった。 俺は間に合わなかった。 子ゆっくりを守れなかったし、にとりとひなも、飼いゆっくりになることを拒否した。 恐らく、ぱちゅりーの群れのゆっくりを、一匹でも多く殺し、死ぬつもりなのだろう。 俺の守ってやりたかったものは、全て俺の手から滑り落ちた。 「おちびちゃん・・・」 「くるくる・・・おちびちゃん・・・」 にとりとひなは、お墓の前にお菓子を置いた。俺が前回来た時に、にとりに渡したものだ。 お墓の前で両手、というか髪を両手のように合わせて、子の冥福を祈る親ゆっくり。俺も「ゆんごく」に行ける様に、一緒に祈った。 果たしてにとりとひなの心中はいかなるものだろう。 葬式が終わった後、俺は色々気まずく、帰ろうとするタイミングを図っていたのだが、それを察するようににとりは、 俺に世間話を投げかけて、俺を帰すまいとしていた。 その様子を見て俺は、にとりとひなは寂しがっている・・・そう思った。 子ゆっくりが死んだことで、にとりとひなを縛っていた枷は外れた。もうこの住処に留まる理由はない。 生き続けたいと思うなら、別の土地に逃避すればいい。 ぱちゅりー達に怒っているのならば、逃げたゆっくりを追って群れを襲い玉砕すればいい。 ここに留まり、座して死を待つのは、子ゆっくりに死なれた悲しみから、死に場所を探しているのだろう。 恐怖心も、怒りもない。あるのは悲しみ、そして死の甘受、だがその寂しさ。 『今まで、両親以外の、どんなゆっくりと付き合ってたことがある?』 「そうだね、いぜん、さなえがおさをつとめるむれがあってね・・・」 結局は、ゆっくりの社会にありふれた悲劇の1つに、俺は偶然関わったに過ぎない。 住処の問題の解決方法は「おうちせんげん」しかない。数多くのゆっくりに悲劇を生んだ、欠陥だらけの解決方法だ。 通常種と希少種の差別意識は、昔から有る問題で、その解決方法は人間にすら出せていない。 ぱちゅりーの群れも、にとりとひなも、お互いがお互いに、間違った事と間違っていない事をし、そして起きた結果なのだ。 まして俺は第三者、人間でありゆっくりですらない。ゆっくりの社会にありふれた悲劇の、起きた結果を見ることしか出来ない。 そして時は経ち、カラスの鳴き声が聞こえた。 空を見上げれば、日は傾き始めている。 俺もにとりもひなも、思わず長く空を見上げてしまった。 にとりが申し訳なさそうに、別れの時をつむぐ為に口火を切った。 「おそくなってしまったね、めいゆう。ちょっとはなしすぎちゃったよ」 『いや、いいよ。気にするなよ、話できてよかった。いや、おちびちゃんは本当に残念だったが・・・』 「くるくる・・・おそくまでわたしたちにつきあってくれて・・・ありがとうございます」 「めいゆうにつきあわせてしまって、わるかったよ」 『ん・・・』 いい加減しつこい自分に情けないと思ったが、最後のチャンスだ。 にとりとひなに、飼いゆっくりなってくれるよう、声をかける。 『なあ、思い直してくれないか。俺の所に来て飼いゆっくりになってくれ』 「うん、わるいけど・・・」 『このままぱちゅりーの群れに殺されても、死んだ子ゆっくりは決して喜ばない。悲しむだけだ。それに、』 お別れになればもう二度と、俺はにとりとひなに会うことはない。俺は禁断の言葉を口にする。 『おちびちゃんなら又作ればいい。行き続ければそれができる』 最後の賭けのつもりで言った言葉は、しかし、 「ありがとう。でもにとりにとってのおちびちゃんは、おはかのしたにいる、あのおちびちゃんだけだ」 眉一つ動かさず、笑顔で返された。 俺は、そうか、と一つ呟いて、立ち上がった。 『残念だな。俺は、お前さんと話していると、まるで人間と話をしているようだったよ』 「ははは、じゃあかいゆっくりにはにあわないよ。ぺっとって、かいぬしのまえで、ゆっくりだけをするものだろ?」 『そう、だな・・・それじゃな』 俺は片手を挙げて挨拶をすると、にとりとひなの住処を去った。 もはや、頭の中は真っ白だ。 はっ、と気がつくと車のドアに手をかけていた。にとりとひなの住処から、駐車場まで歩いた記憶がない。 いけない、こんな精神状態で車を走らせたら事故を起こす。 俺は深呼吸をして気分を落ち着け、普段に増して、安全運転をして家に帰った。 家に帰ると妻に、遅くなったことを詫び、にとりとひなの一件を話し、飼いゆっくりは拒まれた事を伝えた。 元々情に脆い妻は、話を聞いて泣いた。 (にとりよ、おまえの不幸を悲しむ人が、又一人いたぞ。) 俺は、明日も知れないにとりのことを思った。 9. 月曜日になった。 いい加減にとりとひなのことは吹っ切れたつもりだった。いや、今はもう、2匹は生きていないかもしれないが。 なるべく作業に没頭して、いやなことは思い出さないようにするに限る。 俺は、メールで送られてきた文章をプリントアウトし、課長のところに持っていく。 『課長、ちょっとよろしいでしょうか』 『おう、どうした』 『双葉山の山小屋の件の、業者の注文書です。後日、判を押されたものを頂いて来ます』 『うん、御苦労。ああ、後さ』 『はい』 『午後にでもゆっくりショップに行って、ゆっくりフードを買ってきてくれるか。ちょっと高級なやつを。 領収書切って。ぱちゅりーの懐柔用のやつさ』 『ああ・・・はい・・・』 『はは、なんだよ、嫌か?』 『いえ、失礼。そんなことはありませんが・・・』 ゆっくりの話になって、つい、にとりとひなを思い出してしまった。 でも、一応話しておくか、全くの無関係ではないし・・・ 『ええ、実は・・・』 俺は、土曜日あったことを、課長に話した。 『ま、そういうわけで・・・』 『そんなことがあったのか・・・でもお前、あんまり、休日に山行くなよ』 『あ、すみません』 『それはともかく、縄張り争いが戦争になったわけか。じゃあ、にとりとひなも、今頃は・・・』 『まあ、分からないですけど、生きていたとしても、近いうちに・・・』 『そうか』 『だからと言って、どうということはないですけどね』 席に戻り、ゆっくりショップの場所を検索する。 なんだ、近場に無いじゃないか。俺の家より遠くに一軒有るだけだ。片道1時間半もかかる。 面倒くさいな、電話で発注するか。 と思ったが、電話で発注するほど大量に買うわけじゃない。税金の無駄である。 仕方なく、午後一で事務所を出て、車でゆっくりショップに向かった。 あんまりのんびりするのも良くないが、初めての物珍しさから、店内を少し見て回る。 「ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!!」 「とかいはなおにいさん!ありすといっしょにゆっくりしましょう!」 「ゆっきゅりしちぇいっちぇくだしゃいね!」 「おお、ゆっくりゆっくり」 れいむ、まりさ、ありすなどといった基本種から、さなえ、らん、きめぇまるといった希少種もいる。 胴付きのゆっくりというのも驚かされた。人間と変わらない。頭と胴体の比率がおかしくて、まるで幼女のようだが。 金バッチのゆっくりともなると高いが、銅バッチなら安い、子供の小遣いでも買える。 にとり、ひなも売っていた。慰めに買ってみようか・・・とちょっと思ったが、まあ今は止めておこう・・・。 さて、時間潰しはもういい。上から数えたほうが早いぐらいの、ちょっとランクの高いゆっくりフードを多目に買うと、 再び車で事務所に戻った。 もう4時だ。 『ただいま戻りました』 『お、お帰り。ちょうどいいところに戻ってきた』 『?どういう意味です』 『双葉山のぱちゅりーの群れの件でな、別の対応策を考えたんだ』 『別の?ゆっくりフードで懐柔じゃなくて?どんなです?』 俺は荷物を置きながら、課長の話を聞く。その方法とは・・・ 『どうだ、単純だが、理に適ってるだろ』 『ええ、まあ・・・なるほど。ていうか、方針が180度変わりましたね』 『懐柔と比べるとな。それはともかく、確認のため、お前毎日、双葉山の確認に行ってくれ』 『ええ!マジですか?!必要なのはわかりますけど・・・』 『その代わり、今日からお前4時あがりでいいから』 『はあ、それなら。ゆっくりフード如何しましょう』 『棚に入れとけ。うまく行くとは限らないから、使うかもしれん』 『はい』 俺は手早く片づけを済ます。 『じゃあ、双葉山に行って、そのまま直帰します』 『わかった。確認取れたら、必ず俺に連絡を入れるんだぞ。あと工事は来週以降って業者に連絡入れておけ。明日でいい』 『はい』 俺は上司から言い渡された秘策を胸に、事務所を出た。 双葉山に向かう。おととい会った、にとりとひなを思い出す。 何も考えない。にとりとひなの姿を思い描くだけだ。もう、俺に出来ることなど何も無い。俺は傍観者なのだ。 双葉山に着く。車を止め降りる、山へ向かう扉をくぐる。 静かに歩く、歩く、歩く。にとりとひなの住処へ。 ここも歩きなれた、急げ、急ぐな、ゆっくり急げ。 俺は、ここを始めて歩いた時を思い出す。無理やり思い出す。 声が聞こえて、その声の主を気まぐれで追った、そして会った。 遠くに小川が見える。にとりとひなが住んでいた、あの小川。 俺はすぐ近くの大木に身を潜める。覗き見る。顔だけ出して、にとりの姿を探す、探す、遠すぎたか、見えない、 見えない、探す、探す、目を凝らす、凝らす。 にとりの帽子。 ひなの、リボン・・・。 潰れた、潰された、ゆっくり。青い青い、緑色の髪。 がさり。 足元で音がした。なんてこと無い。俺の足音。 前に進め、と、脳が指示を、出さ、なくても、俺は、前に、 にとりとひなの住処に、ここはにとりとひなの住処だ。間違いない、だってにとりが、ひなが、ここに、居て、 俺は、こんな結果を、こんなことになるのを望んでなかった、なのに、なんで、なんで、なんで、なんで、 あいつが、なにを、なんで、なんで、なんで 、なん、で にとりとひなは死んだ。ぱちゅりーの群れによって。 理由は、縄張り争い。 俺は、周りを見渡す。まりさが十数匹、ちぇんとみょんが4匹、れいむが2匹、ありすが1匹、死んでいた。 俺は、にとりとひなの亡骸を、両手ですくうように持ち上げ、子ゆっくりの墓の傍に持っていった。 墓は荒らされていなかったが、供えられていたはずのお菓子は、無くなっていた。 子ゆっくりの墓の隣に、また穴を掘り、にとりとひなの亡骸を、埋めた。 ただ、にとりの帽子と、ひなのリボンは、形見にもらった。 他のゆっくりの死骸は放置し、俺は双葉山を出て駐車場に戻る。携帯を取り出し、課長に連絡を取る。 にとりとひなの死を知らせる。 『・・・そうか、分かった。いきなりだったな』 『はい・・・じゃあ、明日?』 『おう、みんなに声掛けておく。お前も明日は、双葉山に直行しろ。7時な』 『分かりました。加工所の方も?』 『加工所も、俺が連絡しておく。お前は帰って休め。大丈夫か?』 『ああ、大丈夫です大丈夫です。じゃ、お先に失礼します・・・』 『おう、お疲れ』 俺は車に乗り込む。 にとりとひなに別れを言った前回とは違い、今度は頭がすっきりしていた。 明日は早い。気落ちしている余裕は、今の俺には無い。 10. 次の日の朝、双葉山につくと、事務所の人間が集まっていた。 特に若者が元気だ。こういう場合、早朝に慣れない若者は少し元気がない事が多いから、これは良いことだ。 『おはようございます!』 『『『おはようございます!』』』 『課長、おはようございます』 『おう、おはよう。昨日はごくろうさんな』 『いえ。』 俺は、課長から大きな袋と、軍手を受け取る。 若くて体格のいい連中は、緑色の大きな網が渡された。 そして、7時になった。事務所の人間は皆集合した。ざっと30人か。 『よし、いくぞ!』 『『『はい!』』』 一斉に双葉山に登っていく。向かうは勿論、ぱちゅりーの群れである。 ゆっくりどもは、双葉山を自分の領土として、人間達に主張してきた。 別に根拠は無いが、対応が面倒であるため、その主張を認めてやった。 だが、その主張とはまったく別の角度の、大義名分があれば、どうなるか。 「むむ、にんげんたちがきたみょん!」 「たくさんでおしかけて、ゆっくりしてないみょん、なんのようだみょん!」 ぱちゅりーの群れにたどり着く。入り口にみはりのみょんが4匹いる。 みょんの言うことは無視し、素早く4匹とも掴み、袋に放り込んだ。 「ゆゆ!おそら!!」 「な、なにするみょん!!」 そんな悲鳴にいちいち返事するはずが無い。皆一様に群れの中に入り込んでいく。 緑の網を持った連中だけが、網を広げて、入り口に陣取った。 群れが静かだと思って進んでみると、ゆっくり達は子ゆっくりも含めて、全員が長の家の前に並んでいた。 ぱちゅりーは演説台の切り株に立ち、何やら話している。 全体朝礼でもやっていたのだろうか。なかなか壮観だ。 ゆっくりどもは、突然の人間の襲来に驚き手間取っていた。 「にんげんだよ、にんげんがたくさんきたよ!」 「みょんが!みょんがつかまってるよ!!」 「なにしにきたのぉおおお!!」 長のぱちゅりーが眼を見開いて喰って掛かる。 「むきょぉおおおお!!なにをしているのにんげんたちぃいいいい!!みょんをはなしなさいいいいいい!!」 『はいはい、ゆっくりゆっくり』 「ゆっくりできるわけないでしょおおおおおおおお!!!どうしてこんなことをするのよおおおおおおお!!!」 そういうやりとりの間に、群れのゆっくりの周りに各自立ち、なるべく逃げられないようにする。 「なんとかいいなさいこのげすにんげんんんんん!!!こんなりふじんなぼうりょくはゆるされないわあああああ!!!」 「そうだそうだ!!!こんなくそにんげんどもなんかせいっさいしちゃえ!!!」 「いいきかいなんだぜえええええ、ちょうしにのりすぎのにんげんどもにめにものみせるのぜえええええ!!!」 『五月蝿いぞゆっくりども!お前ら川岸に住むにとりとひなを殺しただろ!!』 突然の人間の大声に、ゆっくりどもは驚いて静まり返った。 長のぱちゅりーだけが、今の言葉を理解し始めた。にとりとひなといえば、あの不法侵入したゲスゆっくりしかいない。 「むきゅう・・・あのげすなにとりとひなが、どうかしたの?」 ここで課長は、一旦呼吸を整える。周りのみんなも一斉に身構えた。 そして、高らかに宣言した。 『お前たちは人間と同盟関係にあったにとりとひなを殺した!その制裁としてお前らを全員加工所送りにする!』 そして、俺たちは一斉に捕獲作業を開始した。 目の前に居るゆっくりどもを、次々に掴んで袋に放り込む。 「ゆわあああああやめなさい!!!いなかものおおおおおおおおおおおおお!!!」 「やめてねえええええ!!!ゆっくりしてないよおおおおおおおおおお!!!」 「まりさああああああああああああ!!!おさあああああああああああ!!!たすけてええええええええええええええ!!!」 俺達の新たな対策とは。 ゆっくりが想像出来ない、全く別の大義名分を持って、群れを滅ぼすこと。 にとりとひなを、出汁に使ったのだ。 ぱちゅりーの群れは、狩りも、外敵からの防衛も、教育も福祉も一流だった。 だが、唯一つ、外交が弱かった。他の群れや人間とのコミュニケーションは、担当する幹部はおらず、長が兼任していた。 もしぱちゅりーが何か事情があって、別の群れに攻め込みたいと考えたら、その周りの群れに話しを持ち込むだろう。 周りの群れと同盟を結ぶか、最低でも不介入の約束を取り付けるはずだ。 更に、攻め込む群れと交易を行っている群れがあれば、その損害はどう補償するか、新たな境界はどうするか。 こういった問題を解決してから、戦いを挑むはずだ。 だが今回は、にとりとひなを、たかが一家族とみて舐めすぎ、滅ぼすことのリスクを軽視していた。 金網で遮られていたとはいえ、人間と隣接する場所に住んでいたのだ。人間との関わりを疑うべきだった。 「やめてちょうだい!!!しらなかったのよおおお!!!にとりとひなが・・・エレエレエレ・・・」 『知らなかったで済むか!このゲスが!』 捕獲の手はゆっくりどもの巣にも伸びる。巣の中を掻き回してみると、赤ゆっくりが居た。 「おちびちゃあああああん!!!にげてえええええええええ!!!」 「ゆゆ、にんげんしゃん、なにしちぇるの?」 「やめちぇにぇ、いちゃいことしないでにぇ・・・」 「ゆゆ、おちょらを!!」 巣から掻き出した赤ゆっくりは、透明の平べったいケースに並べて入れられた。 赤ゆっくりは多少丁寧に扱わないと、簡単に死んでしまうからだ。 「ゆんやああああああ!!だしちぇえええええええ!!」 「おとうしゃんんん!!おかあしゃんん!!」 などと言っているが、助けなんぞ来るはずがない。 「おちびちゃんんんんん!!!おちびちゃんはだしてあげてねええええええ!!!」 「やめるんだぜええええ!!!おちびをはなせえええええええ!!!」 『五月蝿いぞ、静かにしろ(ゲシ)』 「ゆぎゃ!!」 更に、長の家も調べられた。 『おーい、長の家にありすが隠れてたぞう!』 『長の家?』 俺と課長は顔を見合わせる。 『おお、本当だ』 「いやあああ、はなしなさい!!いなかものおおお!!」 『こいつ、部屋の隅っこで震えていやがったぜ、仲間を見捨てて生き延びるつもりだったのかなあ、ありすちゃん?』 「ありすは!ありすはちがうううううううう!!」 『待った!待った待った!』 俺は、ありすを袋詰めにしようとする職員をあわてて止める。課長も近づいてきた。 『ん、先輩。何ですか』 『いや、このありす・・・』 ぱちゅりーの群れの幹部にありすはいるがこんなに小さくは無い。幹部でもないゆっくりが、長の家に居るわけが無い。 逃げ惑って長の家に隠れたのなら、俺は気付いていたはずだ。 長の家で寝泊りし、長の演説にも参加しないゆっくり。こいつは・・・ 『お前さん、隣の、ありすの群れのゆっくりだな』 震えているありすが、ゆっくりと俺の方を見る。恐怖で怯えながらも、俺の問いに答え始めた。 「そ、そうよ・・・」 『ぱちゅりーの群れに何か用事があって来てたのか』 「べっどさんをうって・・・かわりにごはんさんをうけとる、はずだったのよ・・・」 『べっど・・・』 部屋の奥を見ると、干草を編んで作った、鳥の巣のようなゆっくり用ベッドが10個ぐらい置いてあった。 更に足元に、どこかのコンビニのビニール袋。恐らくこれに入れて運んでいたのだろう。 なるほど、ゆっくり用の家具は、別の群れから買っていたのか。 『じゃあ、ご飯を受け取れば、お前さんの用事は済むわけだな。どれどれ』 俺は部屋を出た。この部屋が何に使われているのか知らなかったが、他所の群れの外交官用の貴賓室だったのだ。 俺は食糧庫に入る。課長と、ありすを手に乗せた後輩も着いてきた。 俺はビニール袋にご飯を詰め込みだした。特に林檎や柿などのあまあまは余さず入れた。 「え、そんなに・・・」 『運べないか』 「はこべるけど、りょうきんにあわないし・・・」 『どうせこの群れは今日滅ぶ。ゆっくりのご飯は人間は食べられないから捨てるしかない。お前さんが持っていけ』 「ひっ・・・」 袋に詰め終わった。後輩はありすを地面に置いた。俺はビニールをありすに咥えさせる。 『ありす、群れに帰ったらこう伝えろ。ぱちゅりーの群れは、人間の同盟国だったにとりの群れを滅ぼしたため、 制裁した。以後、ぱちゅりーの縄張りは、人間が引き継ぐ、と。』 「わ、わかったわ。それじゃ!」 そういうとありすは、あんよで背中を蹴る勢いで、逃げるように去っていった。 『好都合ですね』 『ああ、群れを滅ぼした理由が、すぐ山中に広まる』 『あとは、連中がこのことをどう受け取るかだな』 さて、俺が群れの広間に視線を戻すと、ゆっくりの捕獲は完了していた。 「ゆうぅぅぅ・・・・・」 「たすけてえ・・・・」 「おちびだけは、おちびだけは・・・」 『済んだか』 『ええ、成体、子ゆっくり、赤ゆっくり合わせて90匹ってところですね』 ゆっくりがぎっしり詰められた袋、赤ゆっくりが敷き詰められたケースが並べられた。 長のぱちゅりーは、かなりの量のクリームを吐いて気絶している。死なれてもつまらないし、 オレンジジュースをぶっ掛けたうえで、他のゆっくりどもとは別の袋に入れておいた。 『これで・・・加工所の職員に引き渡して、終わりですかね・・・』 『集団誘拐みたいでぱっとしないなあ・・・何か制裁っぽい感じにしたいんだが・・・』 『そうですね、じゃあ・・・』 俺達は、ただ加工所に連れて行くだけではなく、制裁の儀式を行うことにした。それは・・・ 「あじじじじじじじじ!!!あじゅいあじゅいあじゅいやめてえええええええええええ!!!」 「みょーーーん!!!しぬみょん!!しぬみょん!!たすけてみょーーーーーーん!!!」 「おろじてえええええ!!!あづい!!!あづい!!!おさああああ!れいむううううう!たずけで!!!」 公開処刑を行うことにした。 処刑方法は、ゆっくりを木に吊るし、下で焚き火を行うことによる、火あぶりの刑。 処刑対象は、軍事関係を取り仕切っていた幹部まりさと、適当にまりさ2匹、みょん2匹。 あんよだけを焼くような生易しいものじゃなく、下半身を炭になるまで焼いて、絶命させる。 処刑した5匹のゆっくりは、吊るしたまま放置だ。他の群れのゆっくりどもが、後日様子を見に来る可能性があるから、 処刑が行われたことを見せ付けるためだ。 ちなみに処刑対象から外れたゆっくりは、半分は震え上がり、半分は恐怖の余り気絶していた。 自分が処刑対象にならなくて良かった、などと思っているのだろう。 加工所に送られたほうが、よっぽど酷い目に遭わされるんだけどね・・・どうでもいいけど。 そして午後に、加工所のトラックが双葉山にやってきた。 捕獲した残りのゆっくりを引き渡した。これですっかり終わりだ。 『あ、お疲れさまです』 『済んだな。これで工事は遅らせずに済みそうだな』 『ええ、事務所に戻りますか』 『そうだな・・・これで、他の群れのゆっくりどもも、大人しくしてくれればいいんだがな』 『駄目なら、ゆっくりフードでご機嫌とって。それでもがたがた言う様なら・・・』 『・・・そうだな・・・』 皆、車で事務所に向かっていく。 俺は、にとりとひなの住処があった方を一瞥し、車に乗り込んだ。 11. あれから二週間が経過した。 山小屋建設は本格的に始まった。頑丈な鉄製の柵、ゆっくり対策用の強化ガラスなど、予定通り、 ゆっくりの襲撃を考慮した作りとなった。 『ふう・・・』 俺は現場監督と会い、予定通り作業が進んでいることを確認し、挨拶して回った。 『結局あいつら、大人しくしてくれたなあ・・・』 俺達が一番恐れていた、ありすやまりさの群れからの襲撃は無かった。 人間が起こしたぱちゅりーの群れへの制裁を、他の群れは正当な行為として受け入れざるを得なかったのだ。 ありすの群れは、「とかいはなかぐ」の最大の輸出先を失い、食糧が不足傾向になっているようだ。 今は新たに交易品を増やそうと、すぃーの開発を行っているようだが、なかなか上手く行っていない様である。 まりさの群れは、元ぱちゅりーの群れとの街道を封鎖してしまった。このままでは人間には滅ぼされる判断したのだろう。 群れを拡大しようと、森の奥側に隣接するえいきの群れを攻め落とそうと企て始め、人間とは関係ないところで、 小競り合いを繰り返しているらしい。 結局ゆっくりは、人間の強引なやり方に対抗する気概は無く、人間に屈した、ということだった。 勿論油断は出来ない。あの餡子脳どもが、いつ再び人間に楯突いてくるか分からないが・・・ 当面は、人間とゆっくりの関係は、このままだろう。 『こんなの事なら、もっと早く強気に出てりゃあ、にとりとひなは・・・』 先日加工所に行き、実験という名の拷問を受けていた元長のぱちゅりーから、にとりとひな襲撃の理由を聞いた。 どうやら、にとりとひなが住んでいた、川辺の雑草が欲しかったらしい。 事の発端は、ありすの群れで作られている、干草を編んで作られたベッドだ。 流石ありすの群れで作られたベッドは品質が良く、ぱちゅりーの群れは大量にベッドを輸入した。 だが、ありすの群れへの支払いの為の食糧も膨大な量となり、ぱちゅりーは憂慮すべき事態と、 幹部ありすに命じ、独自にベッドの開発を行わせた。 すると最近になって、ベッドの原材料となる干草は、川辺の雑草を干したものが一番良い、と分かった。 そしてその川辺に、希少種ゆっくりが住み着いたという、れいむの報告を思い出し、眉をひそめる。 何だ、ありすの群れとの遅れを取り戻さねばならないこの大事なときに、訳の分からぬ希少種なんぞ・・・。 不愉快に思ったぱちゅりーは譲歩案など出さず、にとりとひなに高圧的に接して話をこじらせ、 挙句の果て群れのまりさが暴行を受けたと聞くと、碌に事件の調査もせずにとり討伐を強行した。 『ふう・・・』 俺は一旦駐車場に戻り、車から紙袋をおろした。 再び山に入り、今度は工事現場ではなく、かつて、にとりとひなの住処だった場所に向かう。 さらさらと小川の流れる音が心地良いそこにあるのは、にとりとひな、そしてその子供達の墓だけだ。 俺は、墓の前にかがみこみ、袋から板切れを取り出した。 板切れにはにとりとひなを模した、木製のアクセサリが括り付けられている。 俺が、ゆっくりショップのアクセサリ売り場で買ってきた物だ。 更に、板切れの開いた部分に、マジックで一文を書き入れた。 『我が盟友、にとりとひなに捧ぐ』 俺は、お手製の墓標を、墓の盛り土の前に置き、更に袋からお菓子を取り出し、墓標の前に備えた。 俺は立ち上がり、墓の前で黙祷する。 (・・・見殺しにしてすまない、にとり) 俺は、目を閉じたまま、にとりとひなの顔を思い浮かべた。 と・・・ (・・・ゆふふふふ・・・めいゆう・・・) (・・・え、何?!) 俺は、声が聞こえたような気がして、あたりを見た。いや、人など居ない、ゆっくりもいない。 誰も居ない。気配すらない。 (・・・みていたよめいゆう・・・ありがとう・・・かたきをうってくれてさ・・・) (何を言ってる。人間は、お前の死を利用して、漁夫の利を得ただけだぞ) (あははははは、めいゆうはばかだな!にとりは、じぶんでしぬときめたんだぞ?) (なにを言って・・・) (にとりのしを、にんげんがりようしてなにがわるい?) (お前はその結果に、満足できるのか・・・?) (けっかだけみたら、めいゆうが、にとりをころしたしかえしをしてくれた。まんぞくさ) そりゃ、ぱちゅりーの群れを駆除する建前が、そうだから・・・。 だけど。 (俺は、お前に生きていて欲しかったよ) (・・・) 何かが遠ざかる。 (めいゆうのかいゆっくりになれなくて、ざんねんだ。さようならめいゆう) (くるくる・・・さようなら) (さようなら、めいゆうさん) (くりゅくりゅ・・・さようにゃらあ・・・) そう、か・・・ 『幸せそうで良かった』 俺は、にとりたちがゆんごくで幸せに暮らせると、何故か確信して、その場を去った。
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ゆっくりいじめ系2100 メタな人たち 前編からの続き 「ゆっ?まりさのかわいいかわいいあかちゃん?」 辺りを見回しても、あの小さな饅頭の姿はもう無い。 ただ赤れいむがいたと思しき場所に、人間さんの大きな足が、柱のように突き立っているだけだった。 飛び散った餡子の温もりだけが、まりさの頬にびちゃりと貼りつき、次第に乾燥していった。 「はーい駆除――――」 「ゆ?ゆ・・・?まりさのあかちゃんは?まりさのとってもかわいいあかちゃんどうしたの? どうしたの!!どこにいったの!!こたえてね!!ゆっぐりごだえでね!!!」 「削除しました。だからお前らの考えるゆっくりなんて偽者なんだって、全部嘘っぱち! ゆっくり出来なくなるためのゆっくりなんて、ゆっくりじゃないだろ? 赤ゆはその最たるもの。 偽善と欺瞞の塊である赤ちゃんがいなくなってよかったね。これで少しはちゃんとしたゆっくりに近づけたかな」 そう吐き捨てるお兄さんの顔には、何の感慨も浮かんでいない。 ゆっくりを虐めて楽しむ子供、或いは大人のような、明るい笑顔すら無い。 虫を殺したような……というよりむしろ、困っているお年寄りを助けた後のような、当たり前の顔をしていた。 そんな彼の姿を見て、お姉さんの方は眉を顰め、明らかに引いていた。 「うわあ、きったない……よくそんなの踏めるね。赤ゆなんて虐厨のオナティッシュみたいなもんじゃん」 「おい、ちょっとは発言に品性というものをな」 そう言いながらもお兄さんは慌てて足を持ち上げ、足首をスナップさせて靴にこびりついた餡子を跳ね落としていく。 砂と混じったその一かけらが、ぴしりとまりさの目元に当たる。そして、まりさはキレた。 「ゆがああああああああああ!!よぐもばりざのがわいいあがぢゃんを!! ぜったいにゆるざないがらね!!あかちゃんごろじだにんげんざんはゆっぐりじねぇぇぇぇ!!!」 全てのゆっくりを奪われ、完膚なきまでに追い詰められたまりさの身体を動かしたのは、 今までに感じたこともないような憤怒の感情だった。 全身の皮や餡子をフル稼働させ、ただ目の前の人間への悪意を体現する為、激しい体当たりを繰り出す。 赤ちゃんれいむの命を奪った憎き人間の足に、ぽすんぽすんと衝突を繰り返す。 ぶつかるたびに、まりさの顔も痛かった。大きな石さんにぶつかったような痛みだった。 しかしやめる訳にはいかなかった。まりさの心はその何倍も痛かったし、 無残に殺され、死してなおその命を侮辱された赤ちゃんの痛みは、その遥か上を行くはずだからだ。 「うわ、ほんとに全然効かないんだ」 「弱体化されまくってるからなぁ。俺の知ってるゆっくりだったら、俺なんて数秒で消し炭にしちゃうんだけどねぇ~」 「っていうかこんな風に怒りまくってる時点で、みんなが知ってるゆっくりじゃないし(笑) まりさ、ゆっくりしていってね(笑)」 「うるざいよ゛!!かってにしゃべらないでだまっでね!!ばりざにゆっぐりじないでやられてしんでね!! ばかなにんげんさんたちはさっさとじね!!ばりざだぢをゆっぐりざぜないばかはじねえええぇぇぇ!!」 まりさがもう何度目になるか解らない体当たりをする瞬間、お兄さんは足をひょいと上げ、 突っ込んでくるまりさの身体をかわし、そのまま通り過ぎていくまりさの後頭部をちょんと爪先で突いた。 勢い余っていたまりさは、コロコロと前方に転がっていった。 「ほ~ら出た、暴言、ゲス口調。何でそんなに口汚いの? 相手にゆっくりして欲しいんじゃないの?」 「多分、虐厨以外の普通の人でもムカつくゆっくり、ってのを演出したかったんでしょ。 その結果ゆっくりでも何でも無い生物になってちゃ世話ないけどね(笑)」 「悪口を言うだけの機械だな……ただ生きてるだけでもうゆっくりしてないじゃん。 こんな意味不明なもの虐待して楽しいのかね、キチガイどもは」 「・・・・・ふざけないでね・・・・まりさはおこってるんだよ・・・・・!!」 無様な前転から何とか身を起こしたまりさは、静かに怒りを口にした。 相手に手玉に取られたことで少し頭を冷やしてもなお、煮えたぎる感情は収まる気配を見せなかった。 「あかちゃんは・・・・あかちゃんはすごくゆっくりしてたんだよ・・・みんなまりさのあかちゃんがだいすきだったんだよ・・・!! それにもうすぐ・・・・かわいいかわいいいもうとがうまれるって、わくわくしてたんだよ・・・・・ りっぱなおねえちゃんになるって・・・・まいにちまいにち、ゆっくりがんばってたんだよ・・・・!! れいむのおなかにいるあかちゃんも、おねえちゃんにあえるのをすごくたのしみにしてたんだよ・・・・・・!! それを・・・・それをにんげんさんたちはぜんぶこわしちゃったんだよ・・・!!ぜったいにゆるせないよ!!」 そこまで言い切り、まりさは顔を上げ、ギッと人間を睨み付けた。 先ほど威嚇でやったように、無理に怖い表情を作ったのではない。それよりも恐ろしい形相が、自然と顔に浮かんで来た。 暴力の手段をあまり持たないゆっくりにとって、口上が持つ意味は大きい。 これがゆっくり同士の争いであれば、まりさの喋りは怒りと気迫を相手に伝える、かなり上出来のものと言えただろう。 良心を持ったゆっくりが相手であれば、場合によっては泣いて謝ってきたかもしれない。 しかし相手は、尋常ならざる人間。 情に駆られるなどというわけもなく、その表情はますます苛立ちを増した。 「あ……? もう一匹赤ゆがいんのか?」 その返事を聞いて、今度こそまりさの頭は完全に冷え切った。 人間さんは、まりさの話なんて全く聞いていない。 それだけならまだいい、まりさに都合の悪い情報だけはしっかりと聞いている。 害虫の羽音を耳にして、その意味や内容を考える人間は普通いない。黙って殺虫剤を取り出すだけだ。 ゆっくりの赤ちゃんへの嫌悪という殺虫剤が家族に向けられようとしているのを、まりさは感じた。 そして同時に悔いた。自らもまた、人間さんが赤ちゃんを嫌いだと言っているのに耳を貸さずに喋っていたことを。 「ゆ・・・・い、いないよ・・・・あかちゃんはここにいたおねえちゃんだけだよ・・・・・」 「え~もういい加減スルー推奨なんですけど。キリないじゃん」 「いや、俺は目の前に害虫の巣があると解ってたら、無視は出来ないタチなんだ」 まりさが家族を守るために吐いた嘘も、むなしく掻き消されていく。 人間さん達が赤ちゃんを殺すの、殺さないのという話をしている間、まりさの冷めた餡子は冷静に思考していた。 それは極限状況でのみ実現する、日常のまりさではありえない量と速度の思考だった。 (このままにんげんさんにつかまったら、おうちのばしょをいわせられるかもしれないよ。 ぜったいにいわないっていっても、いっぱいこわいめにあわされて、むりやりしゃべらせるかもしれないよ) (それともまりさをつかまえて、もりのなかからまりさのおともだちのありすやぱちゅりーをみつけて、 このまりさのおうちはどこ?ってきくかもしれないよ。ゆっくりできるひとのふりをされたらおしまいだよ) (おねえちゃんのかたきはうちたいけど・・・しんじゃったおねえちゃんよりも、 いきてるれいむと、うまれてくるあかちゃんのほうがだいじだよ・・・ごめんね、おねえちゃん!!) 数秒間のゆっくりとした思考の後、まりさは道から飛び出し、草むらに飛び込んでいた。 人間達はまりさが自分からその場を放棄することなど想定していなかったのか、やや驚いてそちらを見た。 実際にはまりさは、草むらを二、三歩進んだだけだ。 しかし生い茂る草さんに身を隠せているので、既に逃げおおせた気持ちで、その後の人間さんの声を聞いた。 「あ~らら、逃げられちゃった(笑)」 「やれやれ、しょうがないな。じゃあ森中探し回って、それらしい赤ゆを見つけ次第駆除していくか。 今の奴の巣をピンポイントで狙えれば良かったんだけど、仕方ないね」 (ゆゆ!?) とんでもないことを言い出した。 このままではまりさのせいで、森中のゆっくりがみんなゆっくり出来なくなってしまう。 いっぱい赤ちゃんが殺されて、次世代を失った群れはなくなってしまう……。 まりさは激しく動揺したが、しかし一方で冷酷に割り切ってもいた。 人間さんは、とても強い。人間さんがやろうと思ったことを止めることなど、とてもじゃないが出来ない。 それは先程本気で戦ったことで、無意識レベルまで徹底的に刷り込まれた。 それにそうでなくても元々、まりさは一人の弱いゆっくりだ。出来ることといえば、自分の家族を守ることくらい。 だから、人間さんを止めるなんて大それたこと言わない…… 愛するれいむだけでも、人間さんに見つかる前に安全なところに移す。 そう最終決定を下したまりさの行動は、文字通り速かった。 すばやく草むらの中を駆け、迷い無く一直線に、我が家へと向っていく。 狩りでどんなに速い虫さんを追いかけた時でも、これほどのスピードは出していなかった。 まりさは今、森で一番速いのが自分であるかのように感じていた。しかしそれでも、焦りに応えるには全然速度が足りなかった。 (れいむ、まっててね!まりさがぜったいにたすけてあげるよ!ぜっっっったいだよ!!!) 隠れ場所は、どこにしよう……小さい頃にかくれんぼをした洞穴にしよう。 あまりにも上手に隠れすぎて、お母さんもお姉ちゃんもまりさを見つけられず、一晩孤独に泣き明かした思い出の洞穴。 あそこなら絶対に人間さんも見つけられないはず、そこでゆっくり赤ちゃんを産んでもらおう…… そんな風に思案しながら、ついにおうちある木の根元に辿り着いたまりさの視界に飛び込んで来たのは、 滅茶苦茶に壊されたおうちの入り口と、その両側に佇む、赤ちゃんを殺した人間さん達だった。 「ゆっ・・・・!?ど、どうして・・・・」 「あ、ようやく来た。マジで遅いんだね虐待用ゆっくりって。一応ゆっくりしてるってことかな? こんなところばっかり都合よくゆっくりさせて、ゆっくりらしさを確保したつもりなのかね(笑)」 「行き先見てから先行余裕でした。ちょっと煽っただけですぐに自分から急所晒すんだよね。 ちなみにこの荒らしテクニックは虐厨に結構効果的なので俺はよく使ってる」 草むらに飛び込んでからほとんど動かなかったまりさの位置と動きは、完全に把握されていた。 まりさは未知のスピードの世界を体験していたが、それは人間からすればジョギングで追い抜ける程度のものだった。 まりさの向かう方向でそれらしいものを探せば、おうちを特定することは簡単だったのだ。 しかしまりさにとって、そんなことは今は問題ではない。 「な、なんでにんげんさんたちがばりざのおうちに・・・・・・ れいむ・・・・れいぶはどうじだのおおぉぉぉ!!でいぶうぅぅぅぅぅぅ!!?」 人間には脇目も振らず、ただ愛する伴侶の安否を確認するため、おうちに飛び込んでいくまりさ。 家族を失ったことで少し広々として見えるおうちの真ん中には、両目から涙を流すれいむが鎮座していた。 その涙の理由を考えるよりも先に、まりさはれいむが生きていることを喜んだ。 「れいむうぅぅぅ!!ぶじだったんだね!!まりさとってもうれしいよおぉぉぉぉ!!」 「ぶじじゃないよ・・・まりさ・・・ぜんぜんぶじじゃないよぉぉ・・・」 「ゆ・・・?」 再会を喜ぶすりすりをしようとして、まりさは気付いた。 れいむから流れ出しているのは、二筋の涙だけではないことに。 お腹の真ん中から生まれたての赤ちゃん特有の、サラサラとした液状の餡子が漏れ出てきている。 その流出源、れいむの産道からは、おそらく素敵なお帽子になるはずだった黒い襤褸切れの破片が覗いている。 「ゆ?れ、れいむ・・・・あかちゃんは・・・・・」 「もういきてるわけないでしょ・・・・にんげんさんにおなかをけっとばされてしんじゃったよ・・・・・ たすけて、たすけてってずっといってたのに、まりさはたすけてくれなかったよ・・・・・ にんげんさんは、おなかのなかのあかちゃんをちょくせつけりとばしたんだよ・・・ だからまむまむもずたずたになっちゃったよ・・・・もう・・・もうごれじゃにどとあがぢゃんうめないよおぉぉぉぉぉ!!」 れいむの慟哭が最高潮に達した瞬間、その頭上、巣の外では二人の人間達がハイタッチをした。 「ふぅ~、また一つ悪の根源を絶てたな」 「つーかぺにまむ付きゆっくりとかマジキモイよね。交尾の形態まで人間に似せないと気が済まないのかっていう。 まさに人間さんの醜い自己の投影のキワミ(笑)この世から消滅して欲しいわ」 「やれやれ、ちょっと虐待用ゆっくりという汚物を見すぎて目が腐りそうだわ。 帰ってニコニコ見ようぜ」 「そだね。mugenトナメのゆっくり無双動画でも見て今日の汚れを落とそうか」 「中和、中和ー」 そうして人間さん達が和やかに談笑しながらその場を去り、どこへともなく姿を消していく間も、 まりさは泣きじゃくるれいむの前で、ただただ呆然と、呆然としていた。 支えを全て失い、まりさの心は立っていられなかった。立っている意味が無かった。 赤ちゃんはみんな死んでしまった。もう赤ちゃんは生まれない。だからもうゆっくり出来ない。 いや、最初からゆっくりなど無かったのだ。結局、全てはあの人間さん達が言った通りになってしまった。 しかし、自分達がゆっくり出来なくなるために生まれてきたのなら。自分はその本懐を今、果たした。 「・・・ゆっくりのあかちゃんはしぬためにうまれてくるんだよ」 「・・・・ゆ?まりさ?」 「あかちゃんはころされて、おかあさんをうんとかなしませて、なかせるんだよ。 うまれるまえにおやくめをはたしたまりさのあかちゃんは、やっぱりすごくゆっくりしてるよ」 「まりさ?なにいっでるの!?しっかりしでね!ゆっぐりしていってね!!!」 「れいむ、はいきんぐにいったあかちゃんもちゃんとしんじゃったよ。 すごくたくさんゆっくりして、それがまるごときれいにつぶされちゃったよ。 れいむもそのぶん、いっぱいなきさけんであげてね。そしたらみんなゆっくりできるんだよ。 れいむ、これからもいっしょにゆっくりしようね。いっぱいゆっくりできなくなろうね」 「ばりざがおがしくなっぢゃっだよぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 滅びを受け入れたものから消えていく。 この森に住むゆっくりの群れは、このまりさを中心にして徐々にゆっくり出来なくなり、滅亡の一途を辿った。 自然に発生したゆっくり達がそれに取って代わり、以前からの住人のような顔をして群れを形成する。 そして森中に、幻想郷中に、約束された悲鳴を響き渡らせ、心を絶望のために消費していく。 そうしてこの世界は回っている。 了 あとがき: オチに悩んだ。そして悩むことをやめた。